弁護士の仕事・その2「共感する力」

弁護士の仕事

弁護士の仕事・その2「共感する力」

弁護士は、相談者の話を聴き、その悩みやうまく進まない現実を教えてもらったら、それに「共感」します。
理屈からは入りません。共感から入ります。
同調はしません。共感します。
「それはつらいですよね。苦しいですよね」とか「それは相手がおかしいですよね。理不尽ですよね」と共感したとき、「何とかしなければ!」という直感が働きます。
これがその後の弁護活動の原動力になります。
熱くなったハートが、自分の脳をフル回転させます。
熱いハートが原動力になって、自分の脳が、法律や判例や理屈を総動員させ、ゴールにたどりつくまでの道筋を導き出します。
かといって、頭まで熱くなっては判断を誤ります。その意味で同調はしません。
ハートの部分で共感し、クールな頭で行動します。

共感は、無意識にできる場合と、意識することでできる場合とがあります。
それこそ、ハラスメントに苦しんでいる方や、事故で負傷した方に共感することはごく自然の感情です。この場合は、あえて意識しなくても、共感がパワーの源となって、弁護活動を始めます。
共感し、何とかしなければと直感し、理屈や論理を駆使して解決に至ったとき、最初の直感が正しかったことと、法律家としての論理構成が正しかったこととの二重の意味で、この上ない喜びを依頼者と共有できます。

それでは、明らかに無理難題を要求する方の場合はどうでしょう。例えば、タクシーに乗ったら、たばこの残り香がした。嫌な思いをしたのでタクシー会社を訴えて慰謝料100万円を請求したいという。
この場合、結論として、慰謝料請求は無理です。
でも、「快適な移動を期待してタクシーに乗ったのに、たばこの臭いがして嫌な気持ちになった」という部分を切り出せば、そこは共感できます。
その部分に共感して出来事を共有し、その後で慰謝料請求は無理だという結論を伝えます。
その方は「分かってくれればいいんだ」「日本の裁判はハードル高いね」と納得して、この相談を終えるでしょう。
もちろん、共感・共有のプロセスを飛ばして、文字通りのQ&Aとして、慰謝料請求は無理だという結論を伝えても、法律相談として間違いではありません。しかし、ご本人の納得度は違います。きっとその方は、「もういい!」といって席を立ち、また別の法律相談を受けに行くでしょう。その方にとっては解決できていません。

このように、どんな相談でも、必ず共感できる部分があります。
自然に共感できる場合はそのままに、意識する必要がある場合は共感力のアクセルを踏みます。
弁護士は、どんなご相談でも共感できる部分をつかみ、事態を共有したうえで、それを実現できる道筋があるのか、ないのかを依頼者に伝えることが必要になります。
その意味で、弁護士は(私は!)、依頼者に法律のアドバイスをするにあたり、依頼者の思いや悩みに共感する力を十分につけていなければならないと思っています。

こんなふうに、弁護士が「聴く」の次にする仕事は、「共感する」というお話でした。
つづく(^^)。

(Photo by (c)Tomo.Yun,http://www.yunphoto.net)
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私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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