安易にオトシドコロを探さない

債権回収

「波戸岡さん、裁判官にとびかかるんじゃないかと、ひやひやしましたよ~(笑)」
「そ、そうでしたか。お恥ずかしい…」
「私は嬉しかったですけどね」

弁論準備室という裁判所の会議室から出てきたとき、同席していた依頼者から言われた言葉です。
自分は努めて冷静なつもりだったのですが、あいかわらずポーカーフェイスができてないらしい。。。(汗)。

さて、私は「安易な落としどころ探し」に賛同しません。
最初から落としどころありきならば、最初に提示した金額は何だったのか。
あるいは「足して割って真ん中でどうでしょう」なんて、思考の放棄とさえ思ってしまいます。

代金請求にせよ損害賠償請求にせよ、債権回収で請求する金額には「根拠」があるはずです。
その根拠に客観的な裏付けと揺らぎない自信があるのならば、本気でその金額をとりにいかなければなりません。
そのうえで、相手にも言い分があったり、合意できるラインが見えた時、「時間を買う」又は「確実な債権回収を図る」ために自ら階段を降りて、減額して和解することは必要な判断だと思います。

この時の事案は、調印後に契約破棄をしてきた業者に対して、損害賠償を請求するというケースでした。
依頼者は、損害が一部補てんされるだけでは、次のビジネスが始められない状況だったため、何とか全額に近い賠償金を債権回収する必要がありました。

私は、どういう損害が発生したのか、それを金額にするといくらになるのか、建築関係の事案であったため資材費や人件費等をリサーチして、立証活動に努めました。

ところが、どうにもそれが裁判官には伝わらない。
もちろん裁判官の理屈も理解できる。自分の立証もどこかまだ足りてないのだろう。
ではどうすればよいか。この裁判官は何を求めているのか。
そもそも依頼者に起きている損害を、この裁判官は本当に分かっているのか、
というより自分はきちんと伝えられているのだろうか。
いったいどう伝えればいいのだろうか。

そんなタイミングで、「ここは譲り合って」「和解だから早期解決で」とか言われると、それはちがうんじゃないかと思ってしまう。
それじゃ、依頼者にとっては解決にならんのです。
でも、怒っても仕方がない。「単に怒っている人」に見られるだけです。
だから、腹では熱くなりつつ、頭では冷静に理論を構築する。
それを裁判官に訴えかける。。。

熱い心で、冷静な頭で訴えかけていたつもりだったのですが、、、

「波戸岡さん、裁判官にとびかかるんじゃないかと、ひやひやしましたよ~(笑)」
「そ、そうでしたか。お恥ずかしい…」

はたからはそう見えてたみたいです(汗)

その後、相手方代理人弁護士も巻き込んで再度の交渉を図り、
何とか裁判所の提示額よりも多い金額で和解でき、債権回収を完了できました。
理屈と証拠と感情に根差した、根拠ある解決でした。

このように、債権回収はじめおよそ交渉ごとでは、下向き思考での安易な「落としどころ探し」ではなく、上向き思考での根拠に裏付けられた「意義ある解決」を目指したいものです。

※上記のケースは、実際の事案をもとに再構成しています。

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
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私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

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私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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弁護士 波戸岡光太
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