改正民法の時効期間を、東京都港区の弁護士が解説します

債権回収

東京都港区の弁護士・波戸岡光太です。
2017年6月、改正された民法(債権法)が公布されました。施行されるのは公布から3年以内と定められているので、2020年ころの施行になるでしょう。
債権法の改正された箇所で、とくに注目したいのが以下の4つです。

①債権の消滅時効期間
②法定利率
③保証債務
④定型約款

これら4つはどれも重要なので、経営者の方には、何となくでもいいので頭に入れておいて頂きたいと思っています。

特に①の債務の消滅時効期間は重要です。なぜなら、今後の債権回収のリスクが少なくなり、債権管理の扱い方も変わる可能性があるからです。

今回の改正で、これまでバラバラだった債権の消滅時効期間が統一されました。これにより債権管理の手間が大きく減ります。これまでだと債権管理が行き届かず、債権が消滅時効にかかり、債権回収が困難になってしまうことが多くありましたが、これを減らすことが可能になります。

そこで今回は、法律についてあまりご存知でないライターさんの質問に答える形で、改正された債権法の時効期間について解説したいと思います。

―私は個人事業主でライターをしているのですが、原稿料の回収ができなかったことを何度か経験しています。

原稿料は、仕事に対する報酬債権であり、債権法でいうところの債権です。つまり、「原稿料がもらえない」というトラブルももちろん債権回収問題です。

個人事業主や中小企業経営者の方は、なかなか債権管理に時間を当てられず、債権回収問題を抱えてしまうケースが多いと感じています。自分自身で解決しようとせず、日常から弁護士といっしょになって、債権回収問題に取り組むことも重要です。

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とはいえ、これからは少し債権回収問題の悩みも和らぐかもしれません。
というのも、2017年に改正された債権法の時効期間では、債権ごとにバラバラだった消滅時効期間が5年間又は10年間になったからです。

―期間が明確になったのは単純に嬉しいのですが、2通りもあるのは面倒です。

いえいえ、かなり簡単になりましたよ。

以前は、ひとくちに債権の消滅時効といっても、売買代金、工事代金、商事債権、損害賠償などなど、たくさんの項目にわたって、細かく時効期間が定められていました。これらが広く統一されたのです(不法行為債権は変わりません)。

時効期間が統一された一方で、債権の時効期間のカウント開始日(起算点)が2種類になりました。
これまでの「債権者が権利を行使できる時(客観的起算点)」に加えて、「債権者が権利を行使できると知った時(主観的起算点)」が導入されました。改正民法の施行後は、客観的起算点から10年と主観的起算点から5年のうち、どちらか早く到来した方で時効が完成します。

・客観的起算点:権利を行使できる時から10年間
・主観的起算点:権利を行使できることを知った時から5年間

のどちらか早く到来した方となっています。

―「知った時から」というのは、とても有難いです。その分、時効の起算点が遅くなりますよね。

あ、そこは必ずしもそうならないので、注意が必要ですね。
ライターさんの場合、仕事を終えて代金を請求できるようになったとしたら、「権利を行使できる時」と「権利を行使できることを知った時」とは一致しますよね。

多くの取引でも、「権利を行使できる時」が来たら、通常、債権者は権利を行使できることを知りますので、客観的起算点と主観的起算点とは、一致することが多いと思っておいた方がよいと考えます。
そうすると、多くの取引では、債権の消滅期間は5年になるケースが多くなると予想されます。

―今日は、いいことを知りました。5年という数字を覚えておくとよさそうですね。
ちょうど、まだお支払いを頂いていない原稿料があったので、急いで債権回収したいと思います。

そんなことがあったんですね。さぞかしお怒りでしょう。ただ、改正民法はまだ施行されていません。施行日前に発生した債権については、新しい時効期間は適用されません。

―なるほどそうなのですね。あと、そうすると気になるのが、もっと昔の債権です。時効期間を過ぎちゃったり、過ぎそうになった債権については、あきらめるしかないのでしょうか……。

権の時効期間が近づいたり、過ぎたとしても、まだ打つ手はあります。
時効の進行を止める「中断」(改正民法では「更新」)という措置をとったり、時効の権利を行使することを「援用」といいますが、「援用」を不可能にする方法があります。

・債権について支払う旨を一筆書いてもらう
・一部でも支払ってもらう

のいずれかを今すぐにでもすることをお勧めします。
興味があれば、こちらの記事もお読みください。

関連記事:債権を時効消滅させない方法

―ありがとうございます!きっちりカタをつけて、今まで払ってくれなかった不埒な出版社を懲らしめたいと思います!

ちょ、ちょっとお待ちください。
債権回収において、「懲らしめてやる」という感覚は、実はあまりいい結果をもたらしません。

そもそも単純に相手が支払うのを忘れていただけかもしれません。穏便に手紙を書けば、素直に支払ってくれるかもしれません。いたずらに事を荒立ててこじらせても損ですしね。

―確かに、それはそうですね。ついつい感情的になってしまいます。

法律という客観的なよりどころがある弁護士に債権回収の相談をしてみるのは、冷静になるという意味でも大切だと思っています。もし、お手紙などの法的なところにお困りでしたら、また私にご相談ください。カッとなって過激になると、場合によっては恐喝罪などになってしまうおそれもありますからね。

―なるほど、そのあたりのお話もぜひ今度聞かせてください。

もちろん、喜んでお答えします(^^)

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。

私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。

経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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