契約書リーガルチェックのいろはーやっててよかったリーガルチェック

今回は契約書リーガルチェックについてお話します。
契約書リーガルチェックとは、契約書に法的な問題点がないかとか、自社に不利益な定めが盛り込まれていないかなどを、契約締結前に弁護士がチェックすることです。
契約書を交わすたびに、弁護士にチェックを頼むのは、もしかしたら面倒な手間に聞こえるかもしれません。
しかし、リーガルチェックを行うことで、思わぬ落とし穴を回避し、将来のトラブルを予防できるので、ぜひ知っておいていただきたいです。

どうしてリーガルチェックが大事なの?

相手方との交渉が進み、いよいよ新しいビジネスが始まるぞ!ついに契約を結ぶぞ!となった場面では、前に進めたい気持ちが前面に出るので、「まさか契約書に問題があるはずはないだろう」という正常性バイアスが働きます。
正常性バイアスとは、自分に限っておかしなことは起きないはずだと、リスクを無視又は過小評価してしまう心理状態をいいます。

つまり、契約書の中に自社に不利な条項や不明確な条項があっても、ついつい気づかずに、あるいは自分勝手な判断で「問題なかろう」「大丈夫でしょ」と流してしまいがちなのです。

だからこそ、サインをする前に、第三者の目を通してリーガルチェックを行い、新しいビジネスへの高まる期待をいったんクールな目で確認しておくことが必要であり、それこそがリーガルチェックの役割だともいえます。

反対に、リーガルチェックを受けないで契約し、後になって問題が起きたケースで契約書を見せて頂くと、「なんでこんな契約書にサインをしたのですか?」とつい言いたくなってしまうことが多いです。
それは経営者ご本人の方も同じで、「こうなるんだったら、いちどリーガルチェックをお願いしておけばよかった」と嘆かれておられます。

リーガルチェックのご依頼ポイント

契約書の種類によってリーガルチェックのポイントは変わってきますが、ここでは代表的なチェックポイントをご紹介します。

1.提供するサービスの範囲が明確になっているか
提供するサービス内容が不明確だと、トラブルが起きた際にどこまでの責任を負うべきかが曖昧となり、不当に過大な要求を生みだす原因になってしまうので、それを防ぎます。

2.代金の定め方と支払方法は明確になっているか
代金の算出方法や支払方法・支払時期を明確に定めることで、金銭に関する言った言わないの事態が起きないようにします。

3.知的財産権は明確になっているか
知的財産権の範囲と帰属を明確にすることで、自社のアイディアやノウハウが不当に奪われたり流出することを防ぎます。

4.契約違反の場合の損害賠償の範囲が適切に定められているか
不当に高額な損害賠償が請求されたり、逆に請求が低すぎたりしないよう、相互に損害が適切に補填される状況を作ります。

5.契約期間や中途解約の定めがなされているか
突然契約を打ち切られたり、逆に契約に縛られたりしないようにコントロールできる状況を作ります。

6.商品やサービスに不具合があった場合の対応が明確になっているか
商品やサービスを提供する側と提供される側によっても変わりますが、不具合があった際にどれくらいの期間、どこまで対応するのか(してもらうのか)を明確にします。

7.契約を解除する場合の規定が定められているか
契約解除できる事由の設定と契約解除までの流れを事前に明確にしておく必要があります。

8.訴訟となった場合の裁判管轄を定めてあるか
契約相手と距離が離れている場合、自社に近い裁判管轄にしたり、相手方の住所地に近い裁判管轄にすることで公平な規定にしたりします。

9.連帯保証人をつけるのか明確になっているか
支払いに関する担保として代表者などの連帯保証人を求めたり、求められる場合に、責任が不当に重くなりすぎないかを検討します。

10.収入印紙はどうすればよいか
契約書の内容が固まった後、収入印紙をどうすべきなのかというご相談をよく受けます。
収入印紙を貼る必要がある契約書なのか、また貼るとしていくらの収入印紙が必要なのかのアドバイスをいたします。

例えばどんな契約書?

一番極端なケースでは、業務提携の際に自社株を安く渡してしまっているケースがありました。

契約当時は「相手はパートナーとしてそれだけ本気なのだな」と信じ込んでしまい、株を渡すことを疑問にすら思わなかったようです。

そこまで極端ではなくても、フランチャイズ契約で、途中解約する場合には高額な違約金を払うことになっていたケースもあります。
契約時は事業がスタートすることへの期待度が高く、まさか将来に中途解約する事態になることなど微塵も考えていなかったので、違約金条項の存在すら気づかずにサインしてしまったとのことです。

このように、リーガルチェックを入れないと、冷静な第三者の目が入らないために、アツい気持ちのまま進んでしまい、思わぬ落とし穴に気づかないことが起きてしまいます。

リーガルチェックを行うことで、相手の隠れた意図が明らかになり、契約見直しの必要に迫られることは数多くあります。
もちろん他方で、リーガチェックを行うことで、契約書に何ら問題なく、安心して取引を進められることがより明確になることも数多くあります。

このほかにも様々な契約書があり、契約書ごとのリーガルチェックポイントも解説していますので、ご参考にしてください。

◎契約書ごとのリーガルチェックポイント◎

業務委託契約書のリーガルチェックポイント

業務委託契約とは、「委託」とあるように、一定の仕事を他の業者や専門家に任せる契約です。
発注者は、お金を払って一定の仕事や業務をお願いし、受注者は、一定の仕事や業務を提供することで、対価としてのお金を受け取ります。
業務委託契約書で重要なチェックポイントは
・「どんな仕事」をお願いするのかと
・「どんな報酬」を払うのか、の2つを明確にしておくことです。

顧客紹介手数料契約書のリーガルチェックポイント

顧客紹介手数料契約は、自社の見込み客を紹介してくれたことに対して、紹介手数料を払う契約です。
「紹介してくれたら5%の紹介料を支払います」といったざっくりしたかたちで始まることも多いのですが、顧客紹介手数料契約書で詳細を明確にしておかないとトラブルにつながります。

コンサルティング契約書のリーガルチェックポイント

コンサルティング契約は、経営戦略の策定や人材育成のためにコンサルタントと結ぶ契約です。
コンサルティング業務の結果、期待通りに効果が現れたり、コンサルタントとより良い関係が結べたりしたら良いのですが、うまくいかず、ぎくしゃくしてしまうこともあります。そのため、コンサルティング契約でいくつかのポイントをはっきりさせておくことが重要です。

販売代理店契約書・特約店契約書のリーガルチェックポイント

自社製品や特定のブランドを、提携先やパートナー企業に販売してもらうときに結ぶ契約を販売代理店契約や特約店契約といいます。
供給側は販路を拡大でき、代理店(特約店)側は自社の魅力をあげられるというメリットがあります。ただし、互いの役割を明確にし、相互不信にならないようにすることが大切です。

著作物利用許諾契約書のリーガルチェックポイント

著作物利用許諾契約は、自社で作成した画像や映像、商材や絵画作品などを顧客やパートナー企業が利用できるように結ぶ契約です。
著作権を手放すわけではなく、あくまで一定範囲で著作物の利用を許可し、そのライセンスを与える契約です。目に見えない権利なので、互いに正しく理解して契約を結ぶことが大切です。

創業株主間契約書のリーガルチェックポイント

起業の際に複数の有志で資金を出し合って創業株主となり、共同で会社を運営することがあります。その際に、もし将来別の道を歩むことになったときに、「株主」をどうするのかを決めておくのが創業株主間契約書です。円満な別れにせよ、そうでないにせよ、最初に「株主」をどうするのか決めておくことは重要です。

秘密保持契約書(NDA)のリーガルチェックポイント

企業間取引の際に互いの企業秘密や機密事項を守り、その扱い方について定めるのが秘密保持契約書です。それだけで何ページにわたることもありますし、基本取引契約書のうちのひとつの条項としてさらっと定められる場合もあります。

人材紹介契約書のリーガルチェックポイント

企業が人材を採用するために人材派遣会社を利用する際に行うのが人材紹介契約です。
自ら人材を募集したり発掘したりする手間は省けますが、手数料がかかることもあり、金額や支払時期、また途中退職の場合の返金規定などいくつかのポイントをおさえておくことが重要です。

フランチャイズ契約書のリーガルチェックポイント

企業がサービスや商品を販売する際に、一定のブランドやノウハウを導入するためにフランチャイズ加盟店になることがあります。その際に結ぶのがフランチャイズ契約書です。
利益をあげるためのいくつかのポイントを吟味したり、中途解約や契約終了後の競業禁止規定などをチェックすることが必要です。

事業譲渡契約書のリーガルチェックポイント

会社の持つ事業を売却・買収する際に結ぶのが事業譲渡契約書です。
事業譲渡は会社にとってとても重要な出来事ですので、後悔の残る取引にならないようにしなければいけません。起こりえるリスクやトラブル、契約締結前に注意すべきことなどを把握しておくことが大切です。

M&A・基本合意書のリーガルチェックポイント

M&Aは、会社そのものを売却することです。流れとしては、秘密保持契約の次に基本合意書を結びます。基本合意書は、後に結ぶ最終契約書(株式譲渡契約書)とともにM&Aの重要な2つの柱になりますのでとても大切です。具体的な取引方式やこれからの日程、デューデリジェンスに向けた協力事項や費用負担等を定めます。

M&A・最終契約書(株式譲渡契約書)のリーガルチェックポイント

M&Aの流れの中で、決済の直前に行う最後の契約が最終契約書(株式譲渡契約書)です。
譲渡する株式の範囲と対価を明確にしたり、表明保証条項の内容を細かくチェックするなど、M&A後にトラブルにならないためのリーガルチェックはとても重要です。

システム開発契約書のリーガルチェックポイント

システムやソフトウェア、アプリの開発を委託する際に結ぶのがシステム開発契約です。
案件ごとにさほど変わらない部分に関してはひな型を参考にしても構いませんが、案件ごとに個性がある部分は工夫や配慮をしておく必要があります。特に開発対象や検収基準などがきちんと言語化されているかチェックしておくことが大切です。

SEOサービス契約書のリーガルチェックポイント

SEO対策を外注する契約のことを、SEOサービス契約と言います。
SEO対策とは、自社のホームページやウェブサイトの検索順位が上がるように対策することです。検索上位に表示させることは、売上や問合せ数に直結する重要な課題ですので、より効果を高めるために専門業者に委託することも多いです。

リーガルチェックの時間と費用はどれくらいかかるの?

私の場合、1日お時間を頂ければ、通常の契約書はチェック可能ですので、契約締結前は必ずリーガルチェックを入れることをおすすめします。

次に費用について、業界での相場は3〜5万円位かと思いますが、私はチェックの度合いにより、費用を分けています。
目を通したうえ、ほぼ手を入れなくとも問題がない契約書の場合は1万円
一定程度の手直しや修正作業が必要となる場合は3万円
修正作業や打ち合わせが多く、契約書作成に匹敵するような場合は5万円 をそれぞれ頂いています。

このような時間と費用でできるものなので、その後のリスクを考えると、コスト面からもリーガルチェックはおススメしたいと思っています。

弁護士によってリーガルチェック方法は違う?

方法論とは少し話がずれますが、
なかには「契約書リーガルチェックは単調でつまらない」という人もいます。
しかし、それは契約書をただの文言としてしか捉えていないからだろうと私は思います。

現場のビジネス、業種、会社規模、取り巻く環境によって、同じ表現を使っていてもOKとするかどうかは変わってきますので、リーガルチェックは奥が深いです。

つまり、契約書リーガルチェックは、ただの契約書の文言チェックではなく、これから始まるビジネスのリアルと、それをめぐる契約書との整合性を測るために行うものであり、ビジネスそのものへの確かな共感と理解が欠かせないのです。

以前、顧問契約を頂いて間もない会社の社員様から「販売委託の契約書を見てください」と連絡をいただきました。
そこで私が「どういう製品を、どういう方を通じて販売するのですか?」と質問すると、「前の弁護士さんはそんなこと聞かずにやってくれましたよ」と、少し不服そうに仰いました。
けれど、私が「大事なところなのでぜひ教えてほしい」とお願いしてお話を伺うと、今回の販売委託取引の特徴や委託先において起こりうるリスクが具体的にイメージできたので、そのことを明確に定めた契約書にしましょうと伝えました。
すると、その社員の方も「そう、そうなんですよ! 話をしておいてよかった」と安堵して頂けました。

どんな取引なのかをしっかりお伝えいただくのは、一見手間なようでいて、実はリーガルチェックのキモだといえます。
弁護士が質の高いリーガルチェックを行うためには、実際の取引とビジネスの内容をしっかり共有しておくことが不可欠です。
ですので、会社がリーガルチェックを依頼する際にも、熱心に自社のビジネスに関心をもってくれる弁護士に依頼することをおすすめします。

波戸岡流リーガルチェックとは

私は、お客様企業がどんなビジネスをしているのか、どんな取引をしているのかをしっかり伺い、理解するところから始めています。
なるべく詳しくお話を伺いたいので、メールで問い合わせを頂いた場合でも、最初のうちはできるだけお会い頂くようお願いしています。

先日、新しいWEBサービスを始めるにあたってのリーガルチェックを依頼されましたが、私としてはいまいちそのサービス内容をつかみきれませんでした。

契約書自体は一見問題ないように見えましたが、私はその会社を訪問して、その新規ビジネスの話を伺いました。
そうしましたら、新規ビジネスの内容と実現にむけた方向性をつかむことができ、最初の契約書を越えて、より一層そのビジネスにフィットした契約書に仕上げることができました。
やはり、契約書を見ただけでは判断できないものだと改めて実感しました。

リーガルチェックをご依頼いただいたお客様の声

リーガルチェックをご依頼いただいたお客様からのコメントをご紹介させていただきます。

プレミアムストレージサービス株式会社
代表取締役 佐野 竜太様

当社は、個人のお客様の荷物をお預かり事業を行なっております。
サービスを提供する上で、お客様とより良い関係を築くために、これまでの契約書を一緒に見直していただきました。とにかくレスポンスが早く、アドバイスが的確です。何よりクライアントのことを一番に考えてくれているなと感じるため本当に頼りにしています。

医療法人社団帆奈会 やまむら歯科医院
理事長 山村 加奈子様

過去に治療トラブルが長引き、その事がきっかけで思い切った治療ができなくなってしまったことがありました。波戸岡さんに顧問弁護士になっていただき治療に関わる契約書を見直していただきました。内容を変えたところもあれば、そのままで大丈夫なところもあり、改めてしっかりみてもらったことで安心して治療に取り組むことができるようになりました。

どんな契約書にもリーガルチェックは必要?

大型取引はもちろんのこと、些細なものと思える契約書でも、リーガルチェックをしておくことをおすすめします。
自社で契約書を作成するときはもちろん、他社で作成された契約書にサインをするときにも、合意内容が適切に契約書に反映されているか、リーガルチェックを依頼したほうがよいです。
思わぬ落とし穴を避け、将来のトラブルを予防し、安心して取引を進めていくために、ぜひ契約リーガルチェックの意義を検討して頂ければと思います。
契約書作成・リーガルチェック

リーガルチェックを最速で行える新プランを始めます。

新規の取引や業務提携など、契約書が登場するシーンは多いですが、
その際に必要なリーガルチェックにこのようなことを感じていませんか?

「忙しい中で、弁護士とのメールのやり取りが大変・・・」
「とにかく急いでいるから、早くチェックをお願いしたい」
「ちょっとしたことを確認したいだけだから、今解決したい」

特に中小企業では、忙しい経営者様自ら依頼されるケースも多いので、なるべく早く、そして手間をかけずに依頼できるリーガルチェックサービスを実現したい。

そんな想いから今回、最速でリーガルチェックを行うプランをご用意しました。
その名も「リアルタイムリーガルチェック」です。

◎新サービス『リアルタイムリーガルチェック』とは?

『リアルタイムリーガルチェック』はオンラインミーティングツールの「画面共有機能」を使って、その場で契約書を見ながら、お客様が感じていらっしゃる課題をヒアリングします。

これまでも顧問先のお客様のご要望に応じて、オンラインでのリーガルチェックを行なっておりました。
要所のみのチェックであればその場で修正作業を行い、完了することができます。
スピーディーかつ手間が掛からないととても喜んでいただけていることから、『リアルタイムリーガルチェック』として全てのお客様向けにサービス化いたしました。

本サービスのキモは、
出来るだけお客様の手間をかけず、スピーディーにお返しすることです。

もちろん、加筆修正箇所が多かったり、熟考が必要な場合は、ヒアリングした情報を元に一度持ち帰りますが、その場合でも迅速に仕上げてお戻しいたします。

◎本業に集中できるよう、餅は餅屋に。

忙しい経営者の皆様のよき伴走者でありたい。
膨大な連絡業務(電話やメールのやり取り)が事業の成長を妨げてしまうこともあります。
中小企業の経営者様が本来行うべき業務に集中できるよう生まれた本サービスを、ぜひご利用ください。

リアルタイムリーガルチェックをご希望の方は下記フォームよりお問い合わせの際に
「リアルタイムリーガルチェック希望」とご記載ください。

2023.2更新

リーガルチェック、契約書作成のご相談フォーム

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。

私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。

経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。

ご相談中の様子

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

経歴・実績 詳細はこちら
波戸岡への法律相談のご依頼はこちら

経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
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