サブリースの家賃減額通知って受け入れるべき? サブリースの解約は可能?

安定的な不動産収益モデルとうたわれている「サブリース」は、昨今広く普及しています。
サブリースとは、オーナーが建てた物件を、サブリース会社が一括で借り上げて、貸出しと管理を行う不動産投資のビジネスモデルです。
契約時に賃料を取り決めたら、現実の入居率にかかわらずサブリース会社が賃料を支払い続けるタイプが多く、管理の手間も省けることがメリットとして挙げられます。

ところが、昨今の経済状況下で、サブリースに関するトラブルが多発しています。
とくに「新型コロナウイルスの影響で運営が厳しくなったサブリース会社から減額交渉をされて困っている」という相談が増えてきました。
今回は、オーナー様がサブリースでのトラブルにどのような対処すればいいかをお伝えします。

1.サブリースの形態や契約内容は多種多様

まず前提として、サブリースの契約内容は会社によってさまざまです。
現実の入居状況に関わらず一定額を賃料して支払うという契約もあれば、「入居している世帯の家賃合計の何パーセント」という成果報酬的な契約の場合もあります。

また、家賃保証の割合や、家賃保証の見直しが何年ごとに行われるか、サブリース会社の経済的信用性やサブリース実績などを事前に確認しておく必要があります。

2.サブリースの減額や解約に関するトラブルが増加

ここ最近のトピックとして、オーナー様から、サブリース会社との契約について相談をいただくケースが増えています。
特に多いのが「サブリース会社から賃料減額を要請されているがどうしたらいいか」「サブリース会社を信用できないので解約したい」といった減額や解約に関するご相談。このような問題にはどのように対応したらよいのでしょうか。順に解説をしていきます。

3.サブリース会社から家賃の減額請求には応じなければいけないのか?

結論から先にいうと、賃料は当初契約時に合意によって決まった約束事項なので、一方的な減額要請には必ずしも応じる義務はありません。
減額する場合も、賃料の変更合意として、オーナー様とサブリース会社、双方の合意が必要となるのです。

その一方で、サブリース会社からは、減額通知の書面で、わざわざ借地借家法32条1項を示してくる場合もあります。その条文は、このような条文です。

【借地借家法32条1項】
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる

これだけを読むと、オーナー様は減額に応じなくてはいけないような気がしてきます。
法律に明るくない人にとっては、法律を持ち出されるだけで焦ってしまう場合もあります。
しかし、この続きの32条3項を見てみると、あわてて減額交渉に応じなくていいことがわかります。

【借地借家法32条3項】
建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

つまり、サブリース会社が一方的に通知すれば減額できるというわけではなく、双方の合意が取れない場合、裁判が確定するまでは当然には減額に応じる必要がないということが分かります。

建物の立地や状態、契約内容など、サブリース会社が減額交渉をしてきた理由もさまざまです。どのような理由で減額交渉をしてきているのかを見極めて、ケースごとに対応をしていきましょう。
多くの場合は、サブリース会社の経済状況が思わしくないために賃料減額を申し入れてきていますので、その場合は、ある程度の配慮をしてあげて話し合いに応じるのか、なし崩し的な減額交渉に巻き込まれないよう拒否を貫くか、見極めていく必要があります。
そのためには、これまでの関係性や今後の運営方針といったメリット・デメリットを総合的に考慮して判断していくこととなりますので、弁護士や不動産業者などの専門的アドバイスも積極的に活用することをお勧めします。

◎ サブリース会社から家賃の減額を求められた事例

アパートのオーナーであるお客様のところに、サブリース会社より、【借地借家法32条1項】 を記載する形で家賃減額の通知書面が送られてきました。書面によると、1部屋あたり十数万円の家賃から数万円ほど減額を要求するものでした。
お客様のオーナー仲間の中には、驚いてすぐに要求に応じた方もいたようでしたが、私が顧問をしていたためご相談を受けることになりました。

私からは、【借地借家法32条3項】では、「減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。」という条項があるので、対等に交渉できる立場にある旨を伝えました。

オーナー様は、相手の要求をそのまま飲むことはしませんでしたが、サブリース会社の経営状況が芳しくない点と、長期的には良い関係を築きたいという思いがあったため、交渉の中で1部屋あたり数千円ほどの減額には応じることにしました。
もちろん、サブリース会社とオーナー様は対等な立場であるため、裁判まで持ち込むことも可能です。そこはオーナー様のスタンスにもよるところですので、私にご相談いただいた場合は、今後の互いの関係性をどうするかも含めてお話を伺います。

4.サブリース会社との契約は解約できるのか?

オーナー様からは、サブリース会社が営業努力をしてくれず空室が目立ち、「当初想定していた収益を大きく下回っているので解約したい」といった相談ケースもあります。

もっとも、一般的には、オーナー様からの解約希望は容易には実現しないことが多いです。
なぜなら、サブリース会社であっても、借地借家法によって借主としての権利が守られているからです。「正当な事由」が認められない限り、契約は更新するのが原則とされています。

しかしながら、「期間内解約」を定める条項が契約書にあれば、解約することは可能です。
例えば、サブリース会社と交わした契約書に「契約期間内であっても、6か月前に解約の通知をすることにより、本契約を解約することができる」といった条項がないかを確認してみましょう。

ただし、解約できるとしても、契約によっては、すでに支払った修繕積立金などが返却されない場合もあります。
解約にあたっては「支払った積立金が返却されるか」「解約後も安定した賃貸経営ができるか」など、メリットとデメリットを総合的に判断しながら進めましょう。

◎ サブリース会社との契約を解約した事例

ご相談頂いたオーナー様は、所有する物件に入るテナントの質が良くないことが気になっており、管理会社を変えたいという思いで解約を伝えました。ところが、その時に初めて、実はサブリース契約になっていることを認識されたそうです。

サブリース会社側は「借地借家法が適用されます」の一点張りで、解約を受け入れてもらえずに困ったということで、オーナー様からご相談をいただきました。私が契約書を確認したところ6ヶ月間の期間内解約の記載がありました。

担当者は把握した上で突っぱねているのか、契約内容を把握していないのかは分かりませんが、私が代理人として期間内契約について指摘をしたところ、すんなりと解約が受理されました。
このように、サブリース会社の担当者は不動産のプロとはいえ、常に法律の知識や契約内容を正しく把握しているという訳ではないので、サブリース会社が言っていることが正しいのかも含め、一度専門家に相談することをお勧めします。

5. サブリース契約を解約した後の管理はどうする?

サブリース契約を解約する場合には、解約後も安定した賃貸経営が可能なのかを事前に試算しておくことが重要になります。
物件のあるエリアの周辺賃料相場と、サブリース会社から提示された支払賃料とをしっかり比較しましょう。
そして、「減額交渉に応じた場合のキャッシュフロー(資金繰り)」と「一般管理に移行した場合のキャッシュフロー(資金繰り)」を比べて、サブリース会社を外しても円滑に賃貸経営をしていくことができるのかをシミュレーションしておく必要があります。

さいごに

以上のとおり、サブリース会社からの賃料減額通知と、オーナー様からの解約について説明してきました。
それでも、いざ家賃減額の連絡がきたり、解約を考えるとなると、オーナー様自身で賃料減額後のキャッシュフローを試算したり、複雑な契約条文を読み解いたりするのはなかなか難しいと思います。
私にご相談いただけましたら、将来的にどのように運用していきたいのか、どれだけ手間をかけられるのかをヒアリングした上でサブリース会社との交渉についてアドバイスさせていただきます。
また、サブリース会社からの一般管理への切り替えをサポートしているパートナーの不動産会社をご紹介することも可能ですので、ひとりで悩まれている方はぜひご相談ください。
                                            2022.5.27更新
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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