契約書を交わしていない!業務委託でよくあるトラブルと対処法(フリーランスの方向け)

フリーランスでお仕事をされている方から、業務委託のご相談を頂くことが多くなりました。
よく頂く相談として、「契約書を交わさずに業務委託を受けたが、その後トラブルになっている」というものがあります。

契約書がない場合にどのようなトラブルが発生してしまうのか、どのように対処すればいいのか、契約書を作る場合どのような内容を盛り込むべきなのか……これらは個人事業主(フリーランス)で働く方が増えている時代に、押さえておきたいテーマです。

これに関し、フリーランスと企業間のトラブルが絶えないことから、「フリーランス新法」が制定公布され、2024年秋頃に施行されることが決まりました。

フリーランス新法とは、フリーランスの取引を安全にし、トラブルを無くすために発注事業者に業務委託の際の厳守事項などを定める法律です。
この法律で対象とされるフリーランスとは「特定委託事業者」と定義されるものです。物品の製造や、情報成果物の作成、役務の提供などの「業務委託」をされる側のことで、従業員を雇わない事業者のことを指します。

※フリーランス新法については、こちらの記事で解説しています。

契約書を交わしていないことで起きる業務委託契約のトラブル

1.業務内容や範囲がはっきりしていないパターン

サービスのつもりでやっていたことがいつの間にか当然となってしまい、どこかのタイミングで追加料金を請求すると、「それは聞いていない」と拒否されてしまうパターンです。
好意ではじめたことが当たり前のこととして認識されるようになり、いわゆる「なあなあ」で業務が続いてしまうことによって無理が生じると、やがて疲弊してしまいます。

対策としては、受託する業務について、「業務範囲」「業務頻度」「業務時間」を契約書ではっきりとさせておくことが大切です。
例えば、レポートであれば何通まで、訪問であれば何回まで、業務が多岐に渡る場合は1か月あたりの想定稼働時間などを数値とともに決めておきます。
そうすると、先方にとっても、多く頼んでいるのかどうかがはっきりするので、トラブルが起こりづらくなります。

2.突然契約を打ち切られるパターン

プロジェクトが1年がかりと聞かされて他の仕事も断っていたのに、突然契約解除を言われてしまうなどのトラブルもよくあります。

対策としては、契約書で業務委託期間を定めておくことが大切です。そして、契約書において中途解約をできなくするか、あるいは中途解約する場合は残りの期間相当の報酬を払ってもらうなどの取り決めを交わすことで、中途解約されるリスクを回避します。

3.報酬が支払われないパターン

フリーランスの方によくあるトラブルが、報酬が支払われないというトラブルです。依頼された業務を行い成果物を納品したにも関わらず、報酬がすぐに支払われなかった経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。

例えば、単純に支払いを忘れられてしまっていたり、連絡したにもかかわらず報酬を支払ってくれなかったりするかもしれません。

前者の場合は、まずは臆せず催促の連絡を送るといいでしょう。しかし、後者の場合、何かと理由をつけて支払いをしてくれなかったり、連絡が途絶えてしまったりすることもあるので要注意です。

4.クライアントが音信不通になるパターン

契約を行う前や、報酬が支払われた後ならまだよいのですが、納品後や業務を始めてしまったあとに音信不通になる場合はとても困りますよね。先述の報酬が支払われないトラブルにも繋がる事態です。

このような状態にならないためにも、契約する前にしっかりと相手の信用性を見極めることが大切です。

5.クライアントに振り回されるパターン

フリーランスはクライアントに依存しがちな構造になっています。
急に案件が延期や保留になったり、業務量を勝手に増やされたりとして嫌な思いをしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

会社員なら、万が一案件が延期になったり保留されたりしても給料が支払われますが、フリーランスはそういうわけにはいきません。

6.損害賠償で訴えられるパターン

フリーランスのトラブルとして、損害賠償で訴えられるというケースがあります。具体的には、情報漏洩、納品物の欠陥、納期の遅延、著作権侵害などの場合です。

本当に自分が悪いことをしたのであればしょうがないですが、クライアントから一方的に罪を押し付けられたり、必要以上に罪に問われたりした場合は、専門家に相談することが大切です。

受託者の立場は弱い?

フリーランスの立場として業務委託契約をする際には、先方に対してなかなか強気に出ることはできないという方も多くいらっしゃるでしょう。それでも、最初のうちにリスクにそなえた契約書を交わしておくことは大切です。

また、契約書を交わしたいと提案すること自体に抵抗感がある方もいらっしゃるかもしれませんが、むしろリーガル面でしっかりしている事業者だとポジティブな印象を相手に与えるメリットもあります。契約書を示すだけで反感を持たれることはまずないでしょう。相手が反感を示すような会社でしたら、逆に付き合わない方がいいかもしれません。

それでも、どうしても言いづらいようでしたら、「顧問の先生に契約書は必ずかわしなさいと言われているので……」という言い方なら伝えやすいかと思います。実際に私の顧問先の事業主の方にはそのように伝えている方もいらっしゃいます。

過去トラブル事例の紹介

業務委託契約で契約書を結ばなかったことによるトラブル事例をご紹介します。

CASE1.イベント関係のコンサルタント
通年イベントの仕事を業務委託で依頼されたコンサルタントがいました。
業務開始にあたり契約書を途中までは作っていたものの、 仕事の範囲など定めきる前にプロジェクトが始まってしまったため、捺印しないままプロジェクトが進行してしまいました。しかし、ある時突然契約が打ち切られてしまいました。
1年がかりの大きなプロジェクトだったため、そのコンサルタントは他の仕事も断って臨んでいたため困り果ててしまいました。その後、 交渉を続けたものの決裂してしまい、裁判を起こしましたが、芳しい結果にはつながりませんでした。

CASE2. 動画編集の業務委託
フリーランスの動画編集者がYouTubeの動画編集の仕事を受けた際に、先方に予算がないとのことだったので、とりあえずは動画を制作し、後に広告収入が入るようになったら報酬をもらえるという口約束を交わしました。
そして、実際に動画が上手く回りはじめたのですが、広告収入による報酬の話はいつまでたっても一向にされませんでした。そこで先方に口約束を交わした件を伝えたところ、払うつもりはないと一蹴されてしまいました。
このご相談をいただいて、メールや面談時の要求の伝え方を具体的にアドバイスいたしました。その後、アドバイスの甲斐もあり、成果報酬の割合を取り決める話し合いが実現し、書面を交わし、報酬を受け取ることができるようになりました。

業務委託契約書を結ぶ上で気を付けるポイント

1.業務の範囲を明確にする
「どの範囲」「どの頻度」「どれくらいの時間」をできるだけ具体的な数値で定めます。

2.契約期間と中途解約条項の有無を明確にする
急に解約されないように、契約期間や中途解約の際の保障などについても契約で取り決めておくことが大事です。

3,知的財産権、ノウハウの権利者を明確にする
デザインやコンサルティングレポートなど、業務結果として目に見える成果物ができる場合は、著作権などの知的財産権の所在を明らかにしておかないと、後からトラブルになる可能性があります。

企業とトラブルにならないために気をつけるべきこと

フリーランスは企業との契約をきちんと行っていないとトラブルに発展しやすいです。トラブルにならないようにするためには、まず契約書をきちんと締結することが大切です。どんなに親しい関係のクライアントでも必ず契約書を作りましょう。最低限の内容として、業務内容、納期、報酬、秘密保持等に関することは記載しておきます。

また、仕事の基本ではありますが、「報告・連絡・相談」の報連相を徹底することも必要です。丁寧な対応はクライアントとの信頼関係のためにも大切ですね。

信頼関係のためには、情報漏洩に気を付けたり、納期や法律を守ることも大切です。電車やバスにパソコンやスマートフォンを忘れて紛失してしまったり、業務に関する重要な書類を無くしてしまったり、外出先で仕事の電話を他人に聞かれてしまったりの、どれもが情報漏洩に該当します。
万が一トラブルに巻き込まれてしまったら、早めに専門家に相談することも大切です。

まとめ

近年はジョブ型雇用の広がりやフリーランスの増加によって、業務委託で働く方が増えています。業務委託は社員と違い、自分のことは自分で守らないといけないというリスクがあります。
業務委託で働いている方の中には、先方が言ってこない限り契約書を交わしていないという方も多いですが、安心して仕事を続けるためにも、リスクヘッジはしておきましょう。

私は、契約書のリーガルチェックのサービスも積極的に展開しています。また、業務委託に関してトラブルに巻き込まれた際にも、先方とのやり取りをアドバイスし解決までサポートするサービスも行っております。定額サービスもご用意しており、この場合は着手金や成果報酬等は頂かないので安心してご相談いただけます。業務委託のこと、お気軽にご相談ください。

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私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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