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企業間取引での「競業避止義務」にどう対処する?
企業間取引における「競業避止義務」とは?
企業同士の契約書で定められることのある「競業避止義務」は、企業間の取引において、一方の企業が相手企業の競合となるような事業を新たに始めないよう制限をかける契約条項です。競業避止義務は、従業員や取締役などの個人に適用される場合と同様に、企業同士でも非常に重要な意味を持っています。
競業避止義務が求められるのは、例えば、企業のM&A(合併や買収)の際です。M&Aが成立した後、売り手側の企業が再び同じ業種の事業を立ち上げると、買い手企業の事業に対する脅威となる可能性があります。そこで、一定期間は同様の事業を行わないという制限を設けることで、買い手企業のリスクを軽減し、投資の価値を守るのです。これは、退職後の従業員が同業他社で働くことを禁止される「競業避止義務」と非常によく似た概念です。
競業避止義務は、一方当事者にあまりにも有利すぎる内容の場合は、独占禁止法違反や公序良俗違反となることもあります。けれども、基本的には、契約自由の原則のもと、競業業避止義務の内容や範囲、期間について、契約により柔軟に設定することができます。
企業間で合意が成立すれば、義務の範囲を特定の地域や一定の期間に限定することも可能です。そのため、競業避止義務を契約で明確に定義し、違反が発生した際の対処法を事前に規定しておくことが、リスク管理の一環として非常に重要とされています。
競業避止義務の活用例
企業間での競業避止義務は、様々なビジネスシーンで利用されます。その代表的な例をいくつか挙げてみます。
1.業務委託契約
製造業や小売業などで、ある企業が他の企業に業務を委託する場合、競業避止義務を設定して、同業他社との取引を一定期間禁止することがあります。これにより、委託元企業の市場シェアや競争優位性を守ることが可能になります。
2.フランチャイズ契約
フランチャイズチェーンに参加する際、競業避止義務が求められることが一般的です。フランチャイズ契約では、契約終了後も一定期間、フランチャイザー(本部)と競合する事業を行わないことが義務付けられる場合があります。これにより、フランチャイズシステム全体の安定性と成長を支えています。
3.業務提携契約
複数の企業が特定のプロジェクトで協力する際、競業避止義務を設けることで、相手企業が同様の業務を他の企業と行わないようにします。これにより、提携企業間での信頼関係を維持し、プロジェクトの成功に集中できる環境を作り出すことができます。
競業避止義務違反の影響と企業のリスク対策
企業間で競業避止義務が設定されているにもかかわらず、その義務に違反した場合、相手企業から損害賠償を請求されるリスクが発生します。具体的には、競業行為によって生じた損失の賠償を求められ、そのほかにも違約金を求められるたり、差止めや仮処分に発展する場合もあります。
また、競業避止義務に違反すると、企業の評判にも悪影響を及ぼす可能性があります。他の取引先や潜在的なビジネスパートナーから信頼を失い、将来的な取引機会を失うリスクも考えられます。そのため、競業避止義務を軽視することは、長期的なビジネス関係に影響を与える可能性もあるといえるのです。
契約書の文言はどう修正すればよい?
競業避止義務の条項は、「同一又は類似」とか「同一又は同種」の事業を行わないと定められることが多いです。このような契約書の文言は、具体的にどのように修正すれば、法的リスクを最小限に抑えることができるのでしょうか。ここでは、3つの実践的なアプローチを紹介します。
1.将来の事業展開の可能性を想定する
そもそも自社が今後一切その分野の事業は行わないことが確定しているのであれば、競業避止義務について、「同一又は同種」と定められても、さほど気にしなくてもよいでしょう。
もっとも、同じ製品やサービスは扱わないにしても、同じジャンルあるいは近い業種で引き続き事業を行うのであれば、また将来にその可能性があるのであれば、この文言の定め方については慎重になりたいところです。
まずは自社の今後の事業展開の可能性次第で、この契約書の文言とどう向き合うかが変わってくることになります。
2.事業範囲を明確化する
同じジャンルあるいは近い業種で引き続き事業を行うのであれば、競業避止義務の範囲を明確化することが必要になります。「同一又は類似」といったところで、その対象範囲はあいまいですから、読む人次第で解釈の余地が生まれ、法的な争いの火種となってしまいます。
ですので、例えば、特定の商品やサービスを列挙し、その範囲内でのみ競業避止義務を適用するという定め方をすることで、曖昧さを排除することが可能になります。
3.期間を限定する
次に、一定の期間に限定して競業避止義務を設けることで、時間的な制約を明確にする方法があります。これにより、双方が過度な制約を感じることなく、事業活動を続けることができます。
まとめ
このように、競業避止義務に関する条項は、企業の事業戦略に深く関わるため、適切なヒアリングとそれに応じた修正対応が必要です。
私は、クライアント企業からリーガルチェックを求められたときは、契約書の文言だけではなく、その企業がどのような事業展開をしているのかをしっかりヒアリングしたうえで、現場にフィットした法的アドバイスを差し上げています。
企業の目的や戦略に合わせた適切なアプローチを取ることで、法的リスクを最小限に抑えながら、ビジネスの成長をサポートしていければと思っています。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
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弁護士 波戸岡光太
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