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才能より「決断」。諭吉の言葉が現代人に響く理由-『座右の諭吉』から学ぶ実践知-
「自分には才能がない」と、あきらめていませんか?
結果を出せるのは、特別な人だけ。
人を動かすような発言は、頭のいい人にしかできない。
そう思って、踏み出す前からあきらめてはいないでしょうか。
そんな思い込みに、静かに、しかし力強く異議を唱えるのが、福澤諭吉の言葉です。
『座右の諭吉-才能より決断-』(齋藤孝)は、明治の思想家・福澤諭吉の言葉を、現代に活かすヒントとして読み解いた一冊です。
教科書に載る定番の人ながら、「実は何をした人かよく知らない」「名言しか知らない」という人も多いかもしれません。
しかし本書を読むと、その一言一言の背後にある人生観、仕事観、そして人間関係の築き方が、とてもリアルに伝わってきます。
知識や才能よりも、自分で考え、行動することの大切さ。その思想は、時代を超えて私たちの背中を押してくれます。
目次 [非表示]
学歴よりも「学び方」を問う人
「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」。
あまりにも有名なこの言葉は、単なる平等主義のスローガンではありません。福澤諭吉はこう続けます――
「しかし、学問によって地位や実力の差は生まれる」。
つまり、「差が存在するのは、学び方と生き方の結果だ」と言っているのです。
この視点は、現代にもそのまま通用します。与えられた肩書きや環境ではなく、何をどう学び、どんな行動をとったかがその人の価値を決める。その徹底した「実学主義」は、今なお重みを持ち続けています。
余計な湿り気は捨ててしまえ
福澤諭吉の言葉には、時に驚くほどドライで潔い面があります。
「幼少の時から、神様が怖いだの仏様が有難いだのということはちょいともない。子供ながらも精神は誠にカラリとしたものでした」
ここには、悲劇性や湿った感傷を美徳としない諭吉のスタンスがよく表れています。悩みを引きずらない。メランコリーに浸らない。整理して、前へ進む。
現代の忙しい日常にこそ、この「潔さ」は貴重なヒントになります。“深刻さ”に酔っているヒマがあれば、次の一手を考えるべき――そう教えてくれているようです。
他人に振り回されない「省エネ交際」
諭吉の“社交性”は人との独特な距離感を感じさせます。
「血に交わりて赤くならぬとは私のことでしょう」
これは、つるまないけれど孤立しないという、絶妙な人付き合いのかたちです。仲間とは適度な距離を保ちつつ、和気あいあいと話せる。そこにあるのは、迎合せず、しかし敵もつくらないという“省エネ型の対人センス”です。
過剰に気を使いすぎたり、無理に飲み会に参加したりする現代人にとっては、「力を抜く勇気」ともいえるでしょう。
勝ち負けより、価値を立てる
議論好きだった諭吉ですが、無益な争いは決して好みませんでした。
「相手が躍起になって来れば、こちらはスラリと流してしまう」
これは、論破よりも“引き受けない力”を選ぶ姿勢です。
わざわざ机上の空論に時間を割かず、エネルギーを「意味のあるところ」に注ぐ。SNSや会議での小競り合いに巻き込まれがちな私たちは、しばしばこの「スルーの力」を忘れがちです。
無理に勝とうとしないことで、かえって信頼や余裕を感じさせる。“エネルギーを漏電させない”知恵は、諭吉流の知的スタイルなのです。
失敗を恐れず、自分を複線化する
福澤諭吉は、翻訳・出版・学校経営・新聞発行など多彩な活動を展開しました。そこには、「一か八か」の勝負ではなく、失敗を前提にした複線思考があったといえます。
「たとい失敗しても苦しからず」「一身の独立を重んじ、停滞せぬように心の養生をして参れば、世を渡るにさまでの困難もなく」
一点突破ではなく、自分の軸を複数もつことで、身軽に、柔らかく、しなやかに生きていく。現代のキャリア論にも通じる大切な示唆です。
わからないままにしない。「意味」に到達せよ
諭吉は、知識を詰め込むことよりも、「意味をつかむこと」こそが重要だと説きました。
「半時間ばかり考えたところでチャント分かった。一体これはこういう意味であるがどうだ」
ここには、“分かってしまえば簡単だ”という学びの本質があります。
ビジネス書や情報ばかり消費していて、「意味」や「腹落ち」が追いついていない感覚を持つ人も多いのではないでしょうか。必要なのは、多読よりも咀嚼(そしゃく)です。
人望はスキルではなく、人柄からにじむ
最後に、諭吉が重んじたのは「人望」でした。
流暢にはきはきと人に伝えよ。表情や見た目を快活にせよ。仲良く素直に付き合おう。友人知人は多い方がいい。
これは単なる処世術ではありません。人を引きつける力は、才能よりも“誠実なふるまい”から生まれるという考えです。
福澤諭吉が生きた時代は、明治維新という大きな変革のさなかでした。そして、現代もまた、目まぐるしく変化する環境の中にあります。
そうした中で、「カラッとした心」「決断する力」「省エネな社交」「意味を問う姿勢」「失敗を恐れぬ複線化」「人望を築く誠実さ」。
そのどれもが、現代をしなやかに生き抜く力として、今なお輝きを放っています。
才能よりも、決断。
そして、決断よりも、意味と人望。
諭吉の言葉は、今を生きる私たちにこそ効く処方箋なのかもしれません。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
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弁護士 波戸岡光太
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