M&Aはゴールじゃない。「PMI」という次のステージ

 

M&A後に必要な“本当の仕事”

企業同士のM&A。買収が成立すれば、ひとまず一区切り…そう思いがちですが、実はそこがスタートラインです。

買収した企業とどう付き合い、どう活かしていくか。そこに本当に経営者の腕が問われる「PMI(Post Merger Integration)」というフェーズがあります。

このPMIがうまくいけば、シナジーが生まれ、組織が前に進みます。ですが、逆にこれを怠れば、社内に不安が広がり、せっかくのM&Aが失敗に終わってしまうことも。

PMIとは、“買収後の統合作業”

PMIとは、「Post Merger Integration」、つまりM&A後の統合プロセスのこと。譲り受けた企業を自社の中にどう取り込むか、どう共存しながら成果を出していくか、という一連の活動を指します。

大企業ではすでに常識となっているPMIですが、中小企業では「買って終わり」になってしまうケースが少なくありません。

こうしたPMIには、法務・労務・契約関係など幅広い専門知識が求められるため、顧問弁護士と連携しながら進めることが望ましい場面も多くあります。適切なアドバイスを受けることで、リスクの芽を早めに摘むことができます。また、トラブルが起きた際にも迅速な対応が可能になるため、PMI全体の安心感を高める存在としても重要です。

PMIを怠ると、どうなるのか?

中小企業庁の調査によれば、M&Aの満足度が「期待を下回った」と答えた企業の多くが、その理由に「シナジーが出なかった」「従業員の不満が出た」「組織がうまく融合しなかった」など、統合プロセスでの課題を挙げています。

つまり、PMIがうまく機能しなかったことで、

  • 従業員が離職してしまう
  • 取引先との関係が悪化する
  • 組織がまとまらず、意思決定が遅れる

といった深刻な問題が起きているのです。

PMIの3つの柱:「経営統合」「信頼関係」「業務統合」

中小PMIガイドラインでは、PMIの取組を3つの柱に整理しています。

1.経営統合

「このM&Aで何を実現したいのか?」「3年後、どんな姿になっていたいか?」という方向性を定め、それを組織全体に示す工程です。これを怠ると、社員の中に“迷い”が生まれ、組織がバラバラになってしまいます。

2.信頼関係の構築

これは単なる技術的な話ではなく、人間関係の話です。譲渡側の経営者や従業員、取引先と、しっかり信頼を築いていくこと。ときに「相手のやり方を尊重する姿勢」が大切になります。

3.業務統合

業務の引継ぎやシステムの統一、属人化された作業の見直しなど、地道ながら重要なプロセス。PMIでは「見えないリスク」を可視化していく必要があります。契約や許認可の確認など、専門的なチェックが求められる部分もあり、ここでも顧問弁護士の関与がPMI全体の質を高めます。

PMIはいつから始めればいいのか?

「M&Aが成立してからでいいのでは?」と思うかもしれません。でも、本当に成功するM&Aでは、交渉段階からPMIを意識して動いていることが多いのです。

これを「プレPMI」と呼びます。たとえば、買収先の社員と面談したり、経営方針を少しずつ共有しておいたり。こうした準備が、PMI本番をスムーズにします。

この段階でも、労働条件の変更や役員構成の変更といったデリケートな論点が含まれる場合が多く、顧問弁護士などから法的観点からのアドバイスを得ておくと非常に有効です。

最初の100日がカギ

PMIで最も重要なのが、M&A成立から最初の100日間。この間に、方向性の共有、信頼関係の構築、業務の可視化を丁寧に進めていく必要があります。

具体的には、

  • 全社員に向けた説明会の開催
  • 経営者同士、キーパーソンとの個別面談
  • 主要な取引先への挨拶や今後の方針説明

など、コミュニケーションを軸にした取り組みが求められます。

PMIは“人と心”をつなぐ経営戦略

PMIとは、「経営資源の整理」だけでなく、「人の気持ちを整える」取り組みです。M&Aで買った“会社”を、本当に自社の一部にできるかは、PMIにかかっています。

数字だけでなく、人の心に目を向ける。それが、経営者に求められる新しいリーダーシップです。

 

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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