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カリサシ行くぞ。
取引先が代金を払わない。
内容証明郵便で督促しても無視された。
こういうタイミングで債権回収のご相談を頂くことがあります。
次の法的手段はなにか。
「カリサシ行くぞ」
この言葉がいつも頭に思い浮かびます。
これは私が弁護士になりたての頃に、ボス弁(事務所の代表弁護士)が私に指示した言葉です。
仮差押えとは
カリサシとは「仮差押え」のことで、裁判をする前にあらかじめ相手の財産を動かせないようにしておく措置のことです。
裁判はどうしても時間がかかるので、裁判をやっている間に相手が資産を隠したり、経営が悪化して資産がなくなってはいけないので、裁判が終わるまで、当面その財産を動かせなくする方法です。
これって「とりあえず」の措置ではありますが、相手にとっては、自分の財産が自由に使えなくなるからたまったものではありません。銀行預金であれば銀行からにらまれて信用問題になるし、クレジットカードであれば、顧客がカード決済できなくなってしまいます。
そういう相手の弱みをつく手段なので、カリサシに成功すれば、それまで無視していた相手も交渉に応じざるを得なくなるわけです。
そういう債権回収の最短ルートを進むために、ボス弁は、相手にめぼしい資産があれば、まずは「カリサシ行くぞ」と私に指示していたのです。
たとえばこんなケース。
ご相談者A社は、アパレルブランドの衣服を卸販売していました。
ところが販売先B社はその代金を支払わず、こちらの催促を無視し続けています。
その一方、B社のホームページを見ると顧客に向けて衣服の販売は続けています。
うむー。。。。
おや? B社の衣服を顧客が買うためにはカード決済できるようになっている。
よし、このカード代金をカリサシしよう。
カード決済では、顧客が衣服を購入すると、いったんは、カード会社が商品代金をB社に支払います(①)。
その後で、顧客はカード会社に分割又は一括で代金を支払う仕組みになっています(②)。
そこで、カード会社が商品代金をB社に支払う(①)前に、それをカリサシしてしまおうというわけです。
仮差押えの申立書を裁判所に提出し、裁判所がA社の債権を裏付ける資料を審理し、おおむね間違いないがないと判断すると、一定の担保金を納めることを条件として、仮差押命令が発令されます。
このケースでは、債権額全額には満たなかったものの、一定のカード決済代金(①)の支払いがペンディングとなり、B社のホームページ上でも「ただいま銀行振込のみのお取り扱いとなっています」という表示に変わっていました。
カード決済ができないB社は販売がしにくくなったのでしょう。
これから始まる裁判の前に、A社の代金の支払いを申し出てきて、結果、債権全額の回収に至りました。
もちろん債権回収において、いつもこのようにうまくいくわけではありません。
相手の資産といっても、どこに何があるか分からないケースも多いですし、いきなりカリサシという強烈な手段をとることが適切でないケースもあります。
ですので、私としても、いつも「カリサシ行くぞ!」とはなりませんが、
「カリサシ行けるか?」はいつも頭において、選択肢の一つとしてご用意しています。
こんなふうに、債権回収にはカリサシ(仮差押え)という手段がありますよ、というお話でした(^^)
※ケースは実際の事案をもとに、再構成しています。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
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弁護士 波戸岡光太
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