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人間関係を壊さずに債権を回収する方法~心構え編~
東京都港区の弁護士・波戸岡です。
経営者の方で、売掛金が回収できないとか、貸したお金が返ってこないという経験のある方はかなり多いのではないでしょうか。
支払われるべきお金が支払われないのは、金額的な損失はもちろんのこと、精神的にもすごく負担がかかりますよね。
「なんとか債権をきっちりと回収したい!」
これは債権を抱えるすべての方の思いだと思います。
ただ一方で、「債権を回収するためなら、相手との人間関係がどうなってもいい」とは言い切れないこともあります。
債権回収トラブルを抱えながらも、取引が続いている場合もあるでしょうし、長年の付き合いもあり人間関係を壊したくないこともあるでしょう。
そうなのです。”穏便に債権を回収したい”というケースは少なくないのです。
目次
弁護士に相談するときは人間関係が壊れてもいいとき?
私の元には、顧問先の経営者の方や初めていらっしゃる方など、様々な債権回収トラブルのご相談が寄せられますが、その多くはすでに人間関係がこじれてしまっています。
先ほどの話でいうと、「人間関係がどうなってもいいから債権を回収したい」ケースです。
やはり世間一般的に“債権問題に弁護士を介入させることは最終手段である”というイメージが強いのかもしれません。
確かに相手からすると、いきなり弁護士から連絡が来て、「これからは当職が一切の窓口となります、悪しからず」というような通達が来れば警戒するでしょうし、敵対心を持たれても仕方ありません。
ですが、債権トラブルにおける弁護士の役割は、“矢面に立って直接解決すること”だけではありません。
経営者の方の一歩後ろに立ってサポートすることで債権回収トラブルを解決することも十分可能です。むしろ、早めに弁護士に相談することで、人間関係を壊さず穏便に済ませることもできるのです。
そこで今日は、弁護士を活用して債権回収トラブルを穏便に解決する方法をお伝えしたいと思います。
STEP1 抱えている問題を客観視する
「こっちはちゃんとやったんだからお金を払いなさい!」
言い方は別として、これが債権側の経営者の方の率直な思いですよね。実際、お話をお聞きする際かなり熱くなっている方も少なくありません。
もっとも、一方的にこちらの主張を押し付けるだけでは、相手も身構えてしまいますし、感情的な対立を生み出すおそれもあります。解決を遠のかせることになっては逆効果です。
債権回収トラブルを解決するための一番の基本は、“ヒトではなくコト”にフォーカスすることです。
今回のトラブルが起こった本質的な原因に目を向けるのです。
「相手がお金を払わない理由はどこにあるか」
「どういう状況であればお金を支払うのか」
について考える必要があります。
相手の言いなりになるわけではありません。
相手の状況を理解しておくことで、交渉を有利に進めることができるのです。
私の場合、取引状況や契約書の内容、相手とのメールなどを見せて頂き、状況を整理していきます。
そして、相手との交渉をいかに進めるかの作戦会議に移ります。
STEP2 交渉の進め方を綿密に想定する
相手との交渉の場に、策なしに臨んでしまうと、感情のぶつけ合いになってしまいがちです。
目的はあくまで“スムーズに債権を回収する段取りをつける”ことですから、事態を予測しながら進めていきます。
1 交渉の場はこちらの会社で行うべき?
交渉学の見地からいうと、一般的には自分のフィールド、つまり自分の会社で行うことで心理的に優位に立てます。
ただ、相手の警戒心を強めることになる場合もあるので、どちらの会社でもないホテルのラウンジなどもおすすめできます。人目がつく場所であれば声を荒げたりしにくくなるし、お互いに理性を保ちつつ話し合いを進められるメリットがあります。
2 交渉には毅然とした態度で臨むべき?
結論から言うと、自然体で臨むことをおすすめします。
あえていつもと違った強い口調や険しい表情で臨んだとしても、相手は普段のあなたを知っている訳ですからその意図は見透かされてしまいますし、相手を萎縮させてもあまりメリットはありません。
それに、いつも通りのあなたで臨むほうが、一番頭も働きます。
体を力ませずに、リラックスして臨みましょう。
3 まず自分の考えを伝えるべき?
債権回収の交渉では、まずは相手に「今日の場はどういう目的で会ったのか」を認識させる必要があります。
仮に、いきなりこちらから「ちょっとひどいじゃないですか!」と相手を責め立てたとします。
すると相手は「自分を責めたてたいのか。じゃあこっちも対抗しよう。」という戦闘モードに入ってしまいます。これでは話は平行線となり、解決に向けた話し合いは進まないでしょう。
ですから、私は経営者の方には、最初に相手の話を聞くことをお勧めしています。
人は自分の話を聞いてほしいという欲求があるし、聞いてもらえることで「相手の話も聞こう」という気持ちになります。
納得いかない話もあるでしょうが、「いや、それは違う」と割って入らないよう心がけます。
話を最後まで聞いてから、「あなたの言いたいことは理解しました。ではこちらもお話ししてもいいですか?」と質問します。相手の同意を取ってから話し始めると、相手は聞かざるを得なくなります。
相手がもし話を遮ってきたとしても「まずは、私の話を最後まで聞いてください。」と言うと、“話を聞いてもらった相手”は同意せざるを得ません。
皆さんは気づいていますでしょうか?
この交渉の進行が自然とこちら側になっていることを。
「あなたが思っていることを聞かせてください。」
「私の話を聞いてくれますか?」
「最後まで聞いてください。」
などと、最初に相手に話を譲ることで、その場をコントロールする権利が得やすくなります。
さて、交渉の場が“闘う場”ではなく、“創る場”になったところで、いよいよ本題に入ります。
穏便に債権を回収するには、どのような切り出し方をすればいいのか。
こちらは次回にお伝えいたします。
債権回収トラブルが世の中からなくなることは難しいかもしれませんが、
もし直面してしまった場合は、できるだけ事態が大きくなる前に解決できる術をお伝えしていきたく思います。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。
私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。
経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。
波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
2024年12月、本を出版いたしました。
新作著書『弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル』を出版いたしました。
経営者が自分の判断に自信をもち、納得して前に進んでいくためには、
経営者に伴走する弁護士が、本音で対話できるパートナーであってほしいです。
本書では、経営者に寄り添う弁護士が身につけるべきコミュニケーションのヒントを数多く解説しています。
経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
東京都港区赤坂3-9-18赤坂見附KITAYAMAビル3階
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