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タイプの違う人材に事業承継を上手く行うための心構え

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
中小企業をもりたてるパートナーとして、企業理念や経営者の想い、事業を理解した上で法的アドバイス、対外交渉、リーガルチェックを行うことをポリシーとしております。これまでの法律相談は1000件以上。ビジネスコーチングスキルを取り入れ、顧問先企業の経営課題・悩みをヒアリングし解消するトリガーミーティングも毎月行っています。
こんにちは。
今回は、最近いたる所で耳にする経営課題のひとつ「事業承継」について考えてみたいと思います。
さて、この記事を読んでいただいている経営者の皆さまは、自分の会社を承継してもらう人について考えたことはありますか?
もしかしたら、承継したい人材がパッと思いつかない経営者の方が、意外に多いのではないでしょうか。
あるいは、人材が思いついても、いまいちピンとこないとか、継がせても大丈夫なのか不安になったりしていないでしょうか。
でもそれは実のところ、後継者の問題ではなく、経営者の皆さまのこれまでの「生き方」が邪魔をしているのかもしれません。
というのも、会社の創業者というのは、人に対してオープンな方や、あらゆることを経営のエネルギーに変えられる人が多いです。
私が関わっている経営者の方々も「自分の力でなんとかする!」という覚悟が人並み以上の方々が多いです。私も経営者のそういうところを尊敬し、支えたくて日々活動しています。
そんな経営者の皆さまが考える「社長の在り方」は、実はご自身の生き方そのものなのかもしれません。
つまり、
社長像=自分。
これまでの自分と会社の歴史に裏付けられた“強い想い”こそが会社の成長の原動力となってきた一方で、こと事業承継の場面では、かえってそれが障壁になっている可能性があるのです。
なぜなら、創業社長と同じリーダータイプの人材は、一つの組織に2人といないからです。
事業承継について考えた時、NO.2の社員の顔が思い浮かぶことが多いと思います。
でも、No.2の役割は社長をサポートすることだったり、社長が見えないことやできないことをやってもらう役割。
だから、社長とは全くタイプが違うことがほとんどです。
社長の社長像=自分であるので、自分とはタイプの違うNo.2が経営者になる状況が想像しにくい、あるいは、もしかしたら想像できないのです。
これが経営者が事業承継に踏み切れない大きな理由の一つです。
一歩踏み出すということ
では、創業者が事業を承継するにはどうすればいいのでしょうか。
創業者自身が考え方を変える、あるいは考え方を一歩進める必要があります。
それはすなわち「自分と同じ人間はいない」ということを認めることです。
そして「今まで自分の会社を作って来たのは“自分のやり方”だが、そのやり方だけがこの会社を経営するための唯一の方法ではない」と多面的な見方を取り入れることが必要です。
事業を後継者に託すということは、
「自分のやり方をもっと手放していくこと」に他なりません。
とかく行動的なタイプが多い社長は、ついつい自分で全てをやってしまいがちです。
ですが「私がやらないとダメだ」と考えることは、じつは周りを信用できていないことの裏返しでもあります。これは事業承継だけに関わることではありません。
会社を成長させるという意味でも、社長が今やっていることを、自分の後に会社を担う後継者に任せてみる。
そこから、その意識を持つところから事業承継は始まります。
任せてみて、業績が落ちた、もしくは何か失敗したら?
ではもし後継者に事業を任せてみて、上手くいかなかった場合はどうなるのでしょう。
この時にやってはいけないことは、心配したそぶりで「わかった、俺がやる」とせっかく任せた仕事を部下から引き取ってしまうことです。
以前、実際にあったケースをご紹介します。
その社長は、一度事業承継するためにNo.2に業務を任せ始めたものの、やがて我慢できなくなって、彼から仕事を取り上げてしまいました。
結果として、後継者と考えていたNo.2の方は自信をなくしてしまい、他の社員からの視線にも耐えられず、事業承継をするどころか会社をやめてしまいました。
(後日談ですが、今は別の会社を経営されているそうです。つまり経営する能力は十分にあったのです。)
その創業社長は、かなりカリスマ性のある方で、周りの社員の方も「ああいう風にはなれない…」と思っている方でした。
社長は社長で、「俺がやらないとこの会社はまだまだダメだ」と思っています。
これでは育つはずの後継者も育ちません。
社長の想い描いていたリーダーシップと行動力が、後継者候補から「自分だったらどうやるだろう」という経営者脳を奪ってしまうことがあるのです。
事業承継をスムーズに行うためには、後継者候補に対して、カリスマ創業者のサポート役として働くだけでなく、自分が会社を動かすような思考を早くから身につけてもらう必要があります。
信頼しきる。
今度は、事業承継することに成功した会社をご紹介します。
その会社の創業者の方は
「これからはお前の好きにやれ」
といって本当に何も言いませんでした。
内心は気になっていたのかもしれませんが、何も言いませんでした。
任せられた方は「社長と同じようにはできないけど、自分だったらどうするだろう」と任される前から考えるくせがついていた、と後日会社を継いだ後にお話しされました。
経営者脳を育めるかどうかは、もちろんその人の素養もありますが、
社長のスタンスが大きく関わっているんだなと改めて感じさせられた一件です。
私は、ビジネスコーチングのノウハウを活かして、トラブル対応だけでなく、事業承継に関する相談もお聞きしています。
事業承継の実行フェーズに入る前の、経営者の方の想いの棚卸しから関わらせていただいています。
会社を見つめ直し、次の世代につないでいく。
そんなお手伝いをぜひさせてください。
経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
東京都港区赤坂3-9-18赤坂見附KITAYAMAビル3階
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