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交渉現場の心理学-斜め上から眺める、エキスプレッシブライティング、スルーするスキル

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
中小企業をもりたてるパートナーとして、企業理念や経営者の想い、事業を理解した上で法的アドバイス、対外交渉、リーガルチェックを行うことをポリシーとしております。これまでの法律相談は1000件以上。ビジネスコーチングスキルを取り入れ、顧問先企業の経営課題・悩みをヒアリングし解消するトリガーミーティングも毎月行っています。
◎斜め上から眺める
自分が当事者になりきってしまうと、かえって視野が狭くなり、全体像を見失うことがあります。
岡目八目(囲碁をわきで見ている人の方が、当事者より良い手がみつかること)とはよく言ったもので、
「今、この交渉状況を天井から見下ろしたらどんな光景なんだろう」と、視点を上げてみると、視界が広がり、新たな気付きを得られることが多くあります。
このことを「バルコニーから眺めてみる」とか「幽体離脱してみる」などと例えることもあります。
ちょっと煮詰まったかもというとき、お勧めです。
◎いちど、全部書き出す(エキスプレッシブ・ライティング)
決めなきゃいけないこと、この先起きるかもしれないこと、相手への感情、、、、
いろいろあるけれど、気づいたら同じことをグルグルと考えて続けていて、ずっとモヤモヤから抜けられないことって、ないですか。
そんなとき、頭にあることを全部書き出してみます。
出来事、やるべきこと、感情、人に言えないようなネガティブなことも、恥ずかしいくらいのポジティブなことも、あるがままにそのまま一気に書いてみます。
そうすると、「これで全部か。なるほどね」と不思議とすっきりします。
それが解決できているかどうかは関係ないです。
気になっていることが目に見える状態でだされることが大切で、そうすると頭も心もすっきりします。
脳はそういう構造みたいです(^^)
◎ホワイトボードを使う
「相手の目を見て話しなさい」とはよく言いますが、視線は温かくもなれば攻撃的にもなったりします。
特に交渉の場で相手と向き合ったりすると、ネガティブな気持ちが視線にこめられ、関係が悪化してしまうリスクがあります。
そもそも交渉は相手をやっつけるためではなく、両者の間にある問題や課題を解決するためにあります。
そのためには、自分も相手も共に合意をめざす協力者にならねばなりません。これ、分かっちゃいるけど難しいです。
そこで、そのためのツールとして「ホワイトボード」や「ディスプレイ画面」を活用することをお勧めします。
これを使うと、そこに全員の視線が向くようになるので、自然と全員が解決のための当事者になることができます。
社内会議では普段から使っているでしょうけれど、交渉での場面でも、共に解決を目指すための場づくりに役立ちます。
◎スルーするスキルをつける
相手から聞かれたり返事を求められた場合、反射的に「何と答えたらよいか」と思考してしまいます。
肯定すべきか、否定すべきか、反論すべきか、主張すべきか、、、
けれど、そういうキャッチボールなりラリーを繰り返していると、気づくと相手の投げたボールを打ち返すのに必死になっていて、相手のペースとなり、相手の得意な領域に持ち込まれてしまいます。
どう返事するかはこちらの自由ですが、そもそも返事するかしないかも、実はこちらの自由なはずです。
そう、いわゆる既読スルーは、交渉では「あり」ということです。
社会人としてのマナーやスキルとして既読スルーは不謹慎とも言えますが、こと交渉の場では返事をしない、聞こえない態度をとることはありうる態度です。
◎あなたにとっての定義を聞く
交渉の場で、相手が当然のように業界用語やマーケティング用語を駆使すると、ついていくのに精一杯だったりします。
「破壊的イノベーションが求められるVUCAの時代にはインサイトへの洞察が欠かせないですよね」
とか言われたら、あ、、なんか、まぁ、はい、、とかになって気後れしてしまいそうです。
けれど、そういう言語を多用するのは、単に心理的に優位に立とうする姿勢の表れであって、動じることはありません。
「あなたのおっしゃるインサイトとはどういうものですか?」とか「VUCAというものを、あなたはどうとらえていらっしゃるのですか?」と、“あなたにとっての定義”を聞いてみて、もう一歩踏み込んでしゃべらせてみるんです。
相手が知らないでその言葉を使っていたら相手はとまどうでしょうし、しっかりと答えたら、こちらはその説明でしっかりと理解を深め、対等に会話を進めることができるようになります。
(つづく)
経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
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