現場で活かす!交渉学・心理学(もう惑わされない編)

交渉事では、相手の方もいろいろな戦術を仕掛けてくることがあります。
こちらとしても、それへの対処を知らないと、いちいち動揺してしまいます。
けれども相手の戦術パターンを知っておけば、「あ、それって◎◎ですよね」と対処できるので、もう惑わされることはありません。

◎「回答期限は明日ですので」

→それ、タイムプレッシャー戦術ですね。

「明日が回答期限ですので、それまでにご検討ください」と言われると、焦るものです。
今決めなければならないんだ。。。これを逃したらもう取り返せないんじゃないか。。。
でも、そもそも回答期限って相手が一方的に決めたものであることが多いですし、それに拘束されるいわれはないわけです。
なのに、「閉店セール」とか「本日限り」と言われると、今日買ってしまわなきゃと思う気持ちになるのと同じで、人は期限を設定されると自動的にプレッシャーを感じてしまう性質があります。
ですので、焦る前に、「あ、相手はタイムプレッシャーかけてきたな」と気づいてみましょう。
それだけで心のゆとりがだいぶ違います。

 

◎「みなさん、そうしてますんで」

→それ、集団同調性バイアスですね。

「みなさん、この内容で同意してくれてますよ」とか、「そんなこと仰る方、聞いたことがないです」と言われると、え、、そうなんだ、自分だけか。。。そういうものなんですね、と思ってしまうものです。
たしかに「みんなどうしているんだろう」というのは気になるものですし、自信がないときほど、そういうものを頼りにしたくなります(集団同調性バイアス)。
けれど、そもそも「みんな」って誰だ?ほんとに「みんな」そうしているの?「みんな」と同じでなければならないの?と、ワンクッション立ち止まってみる必要があります。
ひとつひとつの交渉や場面はさまざまであるはずで、「みんな同じ」というケースというのは実はかなり少ないはずです。

◎「半額にしてもらえたら買いますよ」

→それ、アンカリングですね。

相手から数字や金額を示されると、「そ、そうなんだ。さて、その数字をどうしたものか」と考え始めてしまいます。「半額は難しいですけど、4割引きぐらいでどうでしょう。。」とか。
でも、相手の数字に乗っかる前に、「なんで提示が半額なんだ?」「その数字に根拠はあるか?」という段階でいったん踏みとどまる必要があります。
人は、(根拠があろうとなかろうと)一定の数字や条件を示されると、それを前提として「ではどうすればその数字や条件を動かせるか」という思考を始めてしまう癖があります。
まるで船が降ろした錨(アンカー)に行動範囲を決められてしまう状態です。
けれど、相手の示した条件は、しょせん相手が出してきた案に過ぎません。
スルーしたうえで、こちらはこちらがよいと考える提案をしてしまいましょう。
そうすると、案外相手の方が、あなたの降ろしたアンカーに縛られてくれるかもしれません。

◎「買うのか買わないのか、どちらなんですか」

→それ、二分法の罠ですね。

「黒か白か、どっちなんだ」「うそかほんとか、どっちなんだ」と言われると、「えと、、どっちだ?」という思考になってしまいがちです。
なんだか世の中、答えは二つに一つしかない錯覚に陥るんですね。
でも、待ってください。黒でも白でもない色はたくさんあります。うそかほんとかだけでなく、忘れている場合だってあります。
Yes or No というのはシンプルな質問ですし、○×クイズなどで私たちは二択問題になじみがあるので、かえってそれゆえに、こうした二分法の罠には陥りやすいものです。
そんなに世の中、単純に“二つに一つ”なんてことはそうそうありません。
「どっちなんだ?」と聞かれたら、「どっちかなんでしたっけ?」と聞き返してもいいかもしれません。

◎「せっかくここまでやってきたんですから」

→それ、サンクコストですね。

「ここまでやってきたのに、また一からっていうのは勘弁してほしい。」
「いままでの労力を考えると、何とか合意してしまいたい。。。」
この心情は至極もっともです。ゴールが見えていればなおさらです。
だけど、そこに付け込まれて後悔するような合意をしてしまえば、その後ずっとモヤモヤが残ってしまうのも事実です。「あのとき無理してサインしたからな~」という具合です。
これまでにかけた労力や費用のことをサンクコスト(埋没費用)といい、これはどちらにしろ戻ってこない費用なので、先に進むかどうかの判断をするにあたっては「サンクコストは無視するのが鉄則」と言われています。
「元を取ってやるぞ」という発想ではなく、「はじめからなかったものと考える」という考えにシフトする方が賢明のようです。

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弁護士 波戸岡光太
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