こんなに使える!アドラー心理学  from『アドラー心理学入門』(良書から学ぶ経営のヒント)

経営者の方とお話ししていると「話題の本を読んでみたい」「インプットの時間を取りたい」と思いつつも、忙しくて時間が取れないのが現状という方が多くいらっしゃいます。
そこで、読書好きな波戸岡が経営者の方に向けて、経営に役立つエッセンスと視点をお伝えするのが、『良書から学ぶ、経営のヒント』です。(これまでのアーカイブは、ブログ下部においてあります)
第3回の今回ご紹介するのは『アドラー心理学入門』(岩井俊憲)です。

「アドラー心理学」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。心理学者のアルフレッド・アドラーは、フロイト、ユングと並び心理学の三大巨頭と言われ、心理学の発展に大きく寄与した人物です。日本では『嫌われる勇気』 (岸見 一郎・古賀 史健著)がヒットしたことを機に、心理学を学んでいる方以外にも広く認知されました。

アドラーが提唱する心理学は、私たちが強く結びついている社会という共同体の中で、「幸せに生きる」ためにはどうすべきかを明確に示しています。

幸せに生きるための心理学として、これまでにもアドラー心理学を解説した書籍は多く出版されてきました。アドラー心理学は実生活に即取り入れられる内容でありつつも、学術的で読み解きにくい部分があるという声もあり、それに応えるかたちで、アドラーの伝道師ともいえる著者がわかりやすくアドラー心理学をまとめたものが『アドラー心理学入門』です。

アドラー心理学5つの柱

アドラーが提唱する理論、核となる5つを見ていきましょう。

① 自己決定性
② 目的論
③ 全体論
④ 認知論
⑤ 対人関係論

① 自己決定性
遺伝や様々な環境の影響があるにせよ、人は自分の行動を自分で決め、運命を創造できる。決定する際に重要なのは、その決断が建設的であるかどうかという視点。

② 目的論
心配だから行きたくない、というとき「不安だから」という原因があって行かないのではなく、「外出しない」という目的が先にあり、外出しないために不安を作り出している。いつでも目的が先にあって、その目的に合わせて感情を作り出している。すなわち、我々は目的を作ることで、未来を主体的に創造することができるのである。

③ 全体論
理性と感情、意識と無意識、心と身体など、人はものごとを2極に分けたがる。しかし、それぞれは別物ではなく、互いに深くつながり補い合っている。

④ 認知論
人はものごとを客観的に見ることはできない。常に自分のメガネ(自分なりの意味や解釈)を通して、主観的に見てしまう。

⑤ 対人関係論
すべての悩みは人間関係の悩みである。すべての行動は相手がいてこそ成り立っており、互いに影響を与え合っているからこそ、悩みが生じる。

アドラーが提唱する心理学は、環境決定性(精神状態は環境によって決められる)、原因論(ものごとにはすべて原因がある)、分析論(ものごとは細分化して考えられる)、客観論、個人論(個を重視する)など、それまで考えられてきたものとは逆の方向性ともいえます。
私たちはつい、ひとつの主張に偏った考えをしがちですが、アドラー心理学には凝り固まった考えを揺り戻してくれるような魅力が詰まっています。

アドラーが最も大切にする2つのこと

アドラーは自分の学説の根底になっているともいえる2つのことを常に重視し、繰り返し主張しています。その2つとは「勇気」と「共同体意識」です。

【アドラー流「勇気」とは】
リスクを引き受ける力 … チャレンジする力は勇気。
困難(弱み)を克服する力 … 強みも大事だけど弱みを見つめて、克服しようとするのも勇気。
協力できる力 … 「私がしましょうか」と手を挙げて先陣を切るのもメンバーへの貢献となる勇気である。

部下や子どもに話すとき、つい「〇〇しないと、成績が下がるよ」「〇〇しないと、失敗するぞ」などと恐怖で動機付けをおこなったり、皮肉っぽく伝えてしまったり、細部にこだわりすぎて話してしまうことはないでしょうか。これらはアドラーが言う「勇気くじき」であり、人の勇気を失わせてしまう行為です。
人にとって行動の原動力となる勇気を高めるためには、大局を捉えて加点主義で相手をみつめ、プロセスを重視しよい点を伝える、聞き上手になるなど、「勇気づけ」の行動を意識して行うことが大切なのです。耳が痛い、即取り入れなければと思わされますね。

【アドラー流「共同体意識」とは】
人には居場所が必要である。自分が役に立てる場、人と信頼し合える場(=共同体)において、人は生きているという感覚を見出せる。過去、現在、未来、どこの地点においての共同体であっても、そのすべてが大事。

属する共同体の中で他者との関わりがあるゆえに、人は多くの悩みを抱えてしまうのですが、生きる意味を見出せるのもまた共同体にいるからこそ。共同体意識を持ち、勇気を持って人間関係や物事に向き合えば、望む未来を自分で作ることができる。そんな前向きになれる心意気をアドラー心理学は教えてくれている気がします。

今回ご紹介した5つの理論と2つの軸の他にも「ライススタイルの原型と成熟」「ライフタスク(人生の課題)」「承認欲求の否定」「課題の分離」など、アドラーは実生活に根差した心理学の理論を展開しています。アドラー心理学は、多くの人とかかわる経営者にとって、問題解決の視点が詰まった心理学と言えるでしょう。

【良書からこの視点】
恐怖からの動機付けは、勇気を奪いモチベーションは急降下する。「勇気くじき」をやめて「勇気づけ」を意識しよう。

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
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私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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