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経営にウェルビーイングを! from『ウェルビーイング・マネジメント』(良書から学ぶ経営のヒント)
「話題の本を読んでみたい」「インプットの時間を取りたい」と思いつつも、忙しくて時間が取れない経営者の方に向けて、経営に役立つエッセンスと視点をお伝えする『良書から学ぶ、経営のヒント』第4回、ご紹介するのは『ウェルビーイング・マネジメント』(加藤守)です。
ウェルビーイングという言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。
「ウェルビーイング(well-being)」とは肉体的、精神的、そして社会的に満たされた状態を指す言葉であり、長く続く幸せを意味します。
ウェルビーイングの分野の研究は欧米が牽引してきましたが、2021年9月には「日経Well-beingシンポジウム」が開催され、政府や企業関係者、有識者等によって、ウェルビーイングの実現へ向けた議論が行わるなど、日本にとってウェルビーイング元年とも言われる年となりました。
2024年には世界初ウェルビーイング学部が武蔵野大学で開講されるなど、いまや日本でもウェルビーイングは広く認知されつつあります。
ウェルビーイングを経営に取り入れると、心身ともに健康で仕事に熱意を持つ社員が増加し、生産性向上、離職防止や経営コストの削減、企業価値の向上などに期待が持てるという研究結果から、日本でもトヨタ自動車、丸井グループ、積水ハウスなど大手企業が「ウェルビーイング経営 」を取り入れました。その効果についても注目が集まっており、今後経営にウェルビーイングを取り入れる動きはますます高まっていくと考えられています。
「人々の満足度(well-being)を見える化し、分野ごとのKPIに反映する」という方針が閣議決定でも示されていますが、ではウェルビーイングを実現する組織作りのために、経営者はどのような視点を持てばいいのでしょうか。ウェルビーイング・マネジメントを高い解像度で説明している本書から、いくつかのエッセンスをご紹介します。
目次
ウェルビーイング・マネジメント、4つの視点
組織においてウェルビーイングを高めるには、4つのエンゲージメントが満たされることが必要と著者は述べています。
1.Work:仕事そのものが楽しいか
2.People:素晴らしい人たちと働けているか
3.Community:組織に誇りを持てているか
4.Life:プライベートライフが充実しているか
1.Work:仕事そのものが楽しいか
仕事へのウェルビーイングが充足度をはかるには、さらに細かく4つの点から考えます。
1つ目は、仕事の成果が、誰かに対して確かな価値を提供しているという感覚があるか。仕事自体に幸福を感じられるかは、自分がしていることを喜んでくれる人がいるかどうかが深くかかわっているというのです。
本書から少し離れますが、このことを象徴しているイソップ寓話をひとつご紹介しましょう。「3人のレンガ職人」の話です。
レンガを積むことを仕事にしている3人のレンガ職人A、B、Cに、毎日どんな気持ちで仕事しているかと聞くと、三者三様の答えが返ってきました。
職人A「来る日も来る日もレンガを積んで、退屈な単純作業で退屈だよ。労働の毎日さ」
職人B「レンガを積んで、家族を養っている。家族のために仕事をしている。辛くてもやりがいがあるんだ」
職人C「俺は大聖堂を作っている。完成したら世界中の人がここにきて、神様への祈りをささげる。そういう世界を作っているのさ」
やっていることは同じでも、目的意識は全く異なることをよく表している話です。誰の答えが正しいということではありませんが、誰にどんな価値を提供しているかをどう捉えるかによって、働く人のモチベーションやウェルビーイングは大きく変わっていくことが分かります。
社員のモチベーションをいかに上げるかは経営者の悩みの種でもありますが、そんなときは、「誰にために、何のために仕事しているんだろう」と考える機会を与えることもひとつです。
誰かの役に立てているという感覚は、ウェルビーイングの向上に大いにプラスに働きます。
2つ目は、自分ならではの仕事をしているか。
「これは君にしかできない仕事なんだ」と任せられると、自分は必要とされていると感じられます。
3つ目は、自分の能力を生かせているか。
自分の能力を発揮できていると、人は楽しいという気持ちになります。仕事においても能力に応じた業種や部署に配置されることが、喜びや満足感につながります。
4つ目は、成長実感があるか。
人はコンフォートゾーンにいるよりも、適度な難易度があるストレッチゾーンにいる方が力を発揮することができ、挑戦と成長の機会にも恵まれます。「きみならできると思うよ」と言われて、「ちょっと難しそうだけど、できるかもしれない」とチャレンジしてみる。できたときには、自分の成長を感じる、そのサイクルを起こすことでウェルビーイングが高まるのです。
2.People:素晴らしい人たちと働けているか
互いに頼り合う信頼関係があるか。学び合い、成長することができるか。励まし合うなど、親和性があるか。経営者は「信頼」「成長」「親和」の3点が満たされた組織であるかを意識することが大切です。
3.Community:組織に誇りを持てているか
組織に所属する人が、企業の理念やビジョンに共感できているか、「自分はここにいてもいい」と組織に居場所を感じているか、さらに自分の大切な人に入社を勧められる組織であるか。「共感」「居場所感」「大切な人にすすめられる」の3点が、組織を誇れているかをはかる視点です。
4.Life:プライベートライフが充実しているか
家族や友人との交流があり、趣味や副業など打ち込めるもの、生きがいを感じるものを持っていることが、仕事への満足度を高めてくれます。
「仕事に不満はないけど、辞めさせてもらいます」という理由で退社する社員は意外にも多く、経営者は、不満がないのに辞めるというのはどういうことか、理由を推し量ることができずに頭を抱えます。
社員にとって、会社での仕事は自分の能力で負荷なくできるものあり、その点では不満はなかったのかもしれません。しかし、チャレンジする機会がなく、自分の成長を感じられなかったため、辞める決意をしたということは大いに考えられます。
今回の話で言えば、Workのなかの4つ目、「成長実感」が不足していたのかもしれません。
働く人のウェルビーイングが充足している組織であるか。経営者は日頃からウェルビーイング・マネジメントの視点を持って社員と対話しているか。ウェルビーイングの視点を経営に入れることは、円滑な経営の大きなヒントになってくれるのではないでしょうか。
【良書からこの視点】
「社員のウェルビーイングは満たされているか?」と問いかけて、組織マネジメントのあり方を考えてみよう。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
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また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
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