未来を創造したイノベーションたち from『イノベーション全史』(良書から学ぶ経営のヒント)

「話題の本を読んでみたい」「インプットの時間を取りたい」と思いつつも、忙しくて時間が取れない経営者の方に向けて、経営に役立つエッセンスと視点をお伝えする『良書から学ぶ、経営のヒント』第5回、ご紹介するのは『イノベーション全史』(木谷哲夫)です。

イノベーションというと何を思い浮かべるでしょうか。スマートフォン、iPad、chatGPT、IAなど、次々と開発される機能やそれらを搭載した製品は現代のイノベーションです。認知されるスピードも速く、私たちの生活にもたらす変革の大きさは計り知れません。

『イノベーション全史』ではイノベーションの度合い(イノベーション度)は、「新しさ」と世の中への「普及」の掛け合わせで測ることができると述べています。既存の発明の模倣や結合を繰り返しながら、新しさは常に更新されていますが、新しさに加えて世の中にどれだけ普及し変化をもたらしたかを鑑みることで、高いイノベーションであるかどうかが分かるのです。
そして、イノベーションにおいて、後者の「普及」(実用化)の役割を担うのはアントプレナー(起業家)です。オンライン銀行の送金サービス「PayPal」やテスラ社の電気自動車を世界に普及させたイーロン・マスクはイノベーションを起こしたアントレプレナーの好例と言えるでしょう。

新しさを世の中に普及させられるかどうかを予測することは難しいです。しかしそれを成功させる秘訣は、高い不確実性の中で「やってやるぞ」と意思決定をし、世の中に普及させる目的に向かって行動しつづけられる能力(=アニマルスピリッツ)があるかにかかっていると言われています。

世界中にイノベーション旋風が巻き起こった100年

今もAI開発などによるイノベーションは怒涛の如く進んでいますが、実は今よりも数倍のイノベーションによって世界が変貌をとげた時代(特別な世紀)がありました。それが1870年から1970年の100年間です。日本では明治初期から戦後の時代にあたるこの100年の間に、現代の私たちの生活の土台となっているイノベーションが次々と起こったのです。一例を見ていきましょう。

① 蒸気機関車…熱を運動に変換する万能エンジン。これにより輸送、農業、製造業が飛躍的に発展しました。
② 電池…大量の電流を持続的に取り出すことが可能に。電動機、伝統、電信機、ラジオ、乾電池などにつながりました。
③ 電灯…太陽への依存から人類を開放。暗い時間にも作業が可能になり、電球、照明、送配電システム、無数の電気製品の普及へとつながりました。
④ 電信…飛脚がいなくても、遠く離れた場所にメッセージを迅速に送信できるようになり、情報化時代の基盤が完成しました。
⑤ 科学肥料…大気中に無尽蔵に存在する窒素を固定化し、食物生産性を飛躍的に向上させ、地球上の人口を支えられるようになりました。
⑥ ワクチン…様々な病気による死亡率が大幅に減少しました。
⑦ 抗生物質…ペニシリンを筆頭に、人類の平均寿命が劇的に減少しました。

そのほかにも、半導体、コンピューター、インターネットといった発明がなされ、それらは世界中に普及していきました。それぞれのイノベーションを担ったのは、エジソン(電灯)、フォード(自動車)、JPモルガン(投資)、ロックフェラー(石油)、ベル(電信)、コダック(写真)、デュポン(繊維、肥料)など、だれもがその名を知る人物たちです。

この時代を生きた人たちは、社会がまるごと変化している様子をありありと実感していたのではないでしょうか。
近年の技術の進歩は目を見張るものがありますが、これほどまでに大きなイノベーションはこの先起こらないのではないか、そう思わされるほどのイノベーション時代だったのです。

日本を支えるイノベーション企業の誕生

また日本においても、明治維新(1868)~第2次世界大戦前(1938)までの約70年間には、今では誰もが知る大手企業が次々と創業しています。

レンゴー   1890年
カゴメ    1899年
関西ペイント 1918年
グリコ    1980年
コマツ    1917年
セメダイン  1913年
三菱鉛筆   1925年
ダイキン   1924年
アサヒビール 1889年
日立製作所  1910年

など、名だたる企業の創業が相次いで起こりました。「貧しい日本をどうにかしていこう」「自分の会社だけでなく、みんなで大きくなるんだ」という志の下、日本の良質な資源や高い技術力というポテンシャルを活かすことで、日本企業は海外に追いつくことができたのです。
黒船来航後、わずか50年の間に鉄道が全国に敷かれ、電力会社が乱立。海外から技術や知識を輸入し、日本有数な財閥が惜しまずに投資をすることで、さまざまな建設、運営を実現させていきました。民間が主導し、日本において疾風の如くイノベーションが起こった時代がそこにあったのです。

この先、どんなイノベーションが起こるでしょうか。今のそしてこれからのイノベーションによって、創造をはるかに超えた未来を見ることができるかもしれません。先人たちのイノベーションから学ぶべきことが大いにありそうですね。

【良書からこの視点】
先人たちのアニマルスピリットから学ぶべきものは数限りなくある

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。

私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。

経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。

ご相談中の様子

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

経歴・実績 詳細はこちら
波戸岡への法律相談のご依頼はこちら

経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
東京都港区赤坂3-9-18赤坂見附KITAYAMAビル3階
TEL 03-5570-5671 FAX 03-5570-5674