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競業取引・利益相反取引に対する監査役の役割
取締役の競業取引や利益相反取引は、会社の利益が損なわれる可能性があるため、会社法により厳格に規制されています。競業取引とは、取締役が自己や第三者の利益のために、会社と同じ分野の事業を行うことであり、利益相反取引とは、取締役が会社との間で自己や第三者の利益が絡む取引を行うことです。これらの取引は、会社の利益が十分に守られない可能性があり、監査役は特に以下の点を注視する必要があります。
目次
手続きが正しく実行されているか
監査役の基本的な役割は、競業取引や利益相反取引に関する規制内容を正しく理解し、実際の取引でその規制が適用される場面を把握することです。会社法356条では、取締役が競業取引や利益相反取引を行う場合、取締役会で事前の承認を得ることが義務づけられていますが、この手続きが適切に実行されているかを確認するのが監査役の責務です。
監査役が果たすべき役割と留意点
監査役は、取締役が会社の利益を優先するために次のような役割を果たし、適切な判断がなされるよう努めます。
1. 取締役会での承認手続の確認
競業取引や利益相反取引が行われる場合、取締役は取引に関する重要な情報を取締役会で開示し、承認を得る必要があります。監査役としては、次のような具体的な情報が開示されているかを確認することが求められます。
➤取引内容と相手方:取引の内容や取引相手が明確に示され、会社の利益にどのような影響を与えるかを把握する。
➤価格と数量:取引の規模や価格が適正かどうかを評価し、会社の利益を損なわない水準かどうかを確認する。
➤期間や返済能力:取引の履行期間や相手方の返済能力など、取引の安全性に関する情報も重要です。
監査役は、これらの情報が欠けている場合や不十分な場合には、取締役会での承認が無効となる可能性があるため、慎重な確認が求められます。
2. 定期的な報告と包括承認の管理
取締役が包括的な承認を得た取引については、監査役は定期的に報告を受け、取引が適正に行われているかを確認します。特に、取引内容が当初の承認事項から変更された場合や、予測外のリスクが発生した場合には、個別に再承認を受ける必要があるため、状況の変化に敏感であることが求められます。また、包括承認に対する定期的な報告が行われているかを確認することは、監査役としての重要な役割です。
違反があった場合の影響
取締役が承認を得ずに競業取引や利益相反取引を行った場合、その取引の有効性や取締役の責任に関して重大な影響があります。監査役は、違反が発生した場合のリスクを理解し、会社の利益が損なわれないように予防措置を講じる役割を担っています。
競業取引の場合、承認の有無にかかわらず取引は有効ですが、利益相反取引では承認がなければ無効となる可能性があります。監査役は、こうしたリスクを理解し、会社の利益が損なわれないように取締役会での承認手続が徹底されるよう確認することが求められます。
監査役が注視すべき具体的な場面
監査役としては、特に以下のような取引において、競業取引や利益相反取引の規制が適切に適用されているか確認する必要があります。
1. 取締役の他社役職兼任
取締役が他の会社の取締役や代表取締役を兼任している場合、競業取引や利益相反取引のリスクが高まります。例えば、親会社や関連会社での役職を兼任している場合、その取引が会社の利益を害さないかどうかを確認し、必要であれば取締役会で承認を受けるよう促すことが重要です。
2. 親子会社間の取引
親子会社間では、一方の会社が他方の利益のために不利な取引を行う可能性があるため、注意が必要です。たとえば、親会社が子会社から有利な条件で資産を購入する場合、子会社の少数株主に不利益が生じる可能性があります。監査役は、取引が公正であることを確認し、グループ全体の利益を考慮した上で中長期的な視点から判断を行います。
3. 少額取引への注意
監査役は、取引金額が少額である場合にも注意を払う必要があります。少額だからといって、競業取引や利益相反取引の規制が適用されないわけではありません。特に、少額取引では取締役会の承認が得られず、決裁書類などを確認することで、承認漏れがないかを監査することが重要です。
まとめ
監査役の役割は、単に取引をチェックするだけでなく、会社全体の利益を保護し、取締役会が健全に運営されることを確保することです。監査役が適切に競業取引や利益相反取引のリスクを管理することで、会社の透明性が向上し、ステークホルダーの信頼も得ることができます。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
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私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
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弁護士 波戸岡光太
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