個人情報の「利用目的」の制限・変更〔個人情報保護法を理解しよう〕

個人情報保護

現代のビジネス環境において、個人情報の取り扱いは、企業にとって重要な責任の一つです。顧客の信頼を得るためには、法令を遵守し、適切に情報を管理することが不可欠です。しかし、どこまでが適切な利用で、どこからが不適切になるのか、明確に把握していない企業も少なくありません。

そこで今回は、個人情報の利用目的とその制限、例外規定、さらには利用目的の変更に関するポイントを整理し、企業としての対応方針について考えます。

個人情報の適正利用が求められる理由

企業が個人情報を利用する際には、その方法が違法または不当な行為を助長・誘発するリスクがないか慎重に確認する必要があります。具体例として、以下のケースが挙げられます。

違法行為を行う可能性がある業者に個人情報を提供する。
官報に掲載される破産者情報をデータベース化し、インターネット上で公開する。
広告配信事業者が、違法薬物の広告で利用する可能性が予見される個人情報を提供する。

これらの行為は社会的信頼を大きく損ねるだけでなく、企業の法的リスクを高めます。適正利用の基準は、単なる法令遵守ではなく、社会通念上の妥当性にも基づいて判断される点を忘れてはなりません。

利用目的とその制限

個人情報を収集する際、企業はその利用目的を明確にしなければならず、あらかじめ本人の同意を得ないで、その目的の達成に必要な範囲を超えて利用することは禁止されています。

たとえば、以下の行為は目的を超えた利用に該当します。

求職者の履歴書をもとに、商品のダイレクトメールを送る。
顧客の購入履歴を、事前の同意なく第三者に提供する。

同意を得る方法にも注意が必要です。曖昧な同意ではなく、書面やクリックなど明確な意思表示を確認しなければなりません。また、未成年者や判断能力に制限がある人の場合には、法定代理人の同意を求めることが求められます。これにより、企業は顧客との信頼関係を維持しつつ、法的リスクを回避できます。

例外規定への理解

緊急時や特定の状況下では、本人の同意がなくても個人情報を利用できる例外規定があります。企業としてこれを正確に理解し、適切に対応することが求められます。

法令に基づく場合:警察や税務署からの法的要請に対応する。
生命や財産の保護:災害時に被災者情報を家族や行政機関と共有する。
公衆衛生の向上:児童相談所が関係機関と情報を共有する。

これらの例外は、個人情報の保護と公共の利益を両立させるためのものであり、濫用を避けるために透明性が求められます。

利用目的の変更時の注意点

ビジネスの進展に伴い、個人情報の利用目的を変更することが必要になる場合があります。しかし、変更前の目的と関連性がある範囲内で行わなければなりません。

適切な例としては、次のようなケースがあります。

既存の顧客に新商品やサービスを案内する。
自社の提携先の商品情報を顧客に提供する。

一方で、不適切な変更例として以下が挙げられます。

第三者への情報提供を新たに目的として追加する。
「盗難・不正利用発覚時の連絡」のための情報を、マーケティングに利用する。

利用目的を変更する場合は、顧客への通知または公表が必須です。このプロセスを経ることで、企業は顧客からの信頼を損なわずに、新たな利用目的を実現できます。

企業としての責任

個人情報の取り扱いは、単なる法令遵守ではなく、顧客の信頼を築く重要な要素です。情報漏洩が発生すれば、企業の評判や経済的損失につながるリスクが高まります。企業として、次のような取り組みが求められます。

社内規定の整備:個人情報保護に関する方針を明文化し、社員全員が理解する。
研修の実施:社員に対し、個人情報の取り扱いに関する教育を定期的に行う。
監査の実施:第三者による監査を導入し、運用状況をチェックする。

顧客から預かる情報は、企業の資産であると同時に、顧客との信頼関係を象徴するものです。その重要性を再認識し、適切な管理を行うことが、持続可能なビジネスの基盤となります。
波戸岡は、企業向け、とくに個人情報を扱う役員や従業員向けの研修を行っています。企業ごとの特性に応じ、カスタマイズした内容をご提供しておりますので、お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。


ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。

私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。

経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。

ご相談中の様子

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

経歴・実績 詳細はこちら
波戸岡への法律相談のご依頼はこちら

2024年12月、本を出版いたしました。

新作著書『弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル』

新作著書『弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル』を出版いたしました。
経営者が自分の判断に自信をもち、納得して前に進んでいくためには、
経営者に伴走する弁護士が、本音で対話できるパートナーであってほしいです。
本書では、経営者に寄り添う弁護士が身につけるべきコミュニケーションのヒントを数多く解説しています。

本の詳細はこちら

経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
東京都港区赤坂3-9-18赤坂見附KITAYAMAビル3階
TEL 03-5570-5671 FAX 03-5570-5674