個人情報の「漏えい」対応の重要性〔個人情報保護法を理解しよう〕

個人情報保護

 

現代のビジネス環境では、個人情報の適切な管理が企業にとって避けて通れない課題となっています。一度漏えいが発生すると、顧客の信頼が損なわれるだけでなく、法的なペナルティや社会的評価の低下といった深刻な影響が生じます。では、実際に漏えいが発生した場合、企業はどのような対応を取るべきなのでしょうか?今回は、その基本的な流れを解説します。

個人情報漏えいの「具体例」から考える

個人情報の漏えいには様々なパターンがあります。例えば以下のようなケースです。

書類の誤送付
大事な顧客データが記載された書類を、誤って第三者に送ってしまうこと。
メールの誤送信
メール本文や添付ファイルに個人データを含んだまま、誤った宛先へ送信すること。
不正アクセス
サイバー攻撃によってシステムが侵害され、個人データが盗まれること。

これらはあくまで一例であり、漏えいのリスクは日々の業務に潜んでいます。このような事態を「漏えい等事案」と呼び、企業は迅速かつ適切に対応する必要があります。

漏えいが発生した際の初動対応

漏えいが発覚したら、まずは被害の拡大防止を最優先に行います。社内での報告を徹底し、関係するシステムや情報の流出経路を即座に遮断することが重要です。

次に、事実関係の調査と原因の究明を進めます。これには、漏えいの規模や影響範囲を特定する作業も含まれます。具体的には、どのデータがどれだけ流出したのか、そしてそのデータがどのように利用される可能性があるのかを明らかにします。

再発防止策を具体化する

漏えいが発生した原因が分かれば、それを基に再発防止策を検討します。これは単なる「対策」ではなく、より強固な情報管理体制を構築するための大事なプロセスです。

たとえば、システムの設定ミスで漏えいが起きた場合は、再度の設定確認を徹底するだけでなく、定期的な外部監査を導入するなどの仕組みづくりが求められます。また、従業員による誤送信を防ぐためには、トレーニングや業務プロセスの見直しが効果的です。

個人情報保護委員会への報告

日本の個人情報保護法では、重大な漏えい事案においては個人情報保護委員会への報告が義務付けられています。報告対象となるのは以下のようなケースです。

病院などで診療情報を含むデータが漏えいした場合
クレジットカード情報が不正利用された場合
1000件以上の個人データが漏えいした場合

これらの報告は、漏えいが発覚した時点で速報として行い、その後、詳細が判明次第確報を提出します。法的義務を果たすことはもちろんですが、それ以上に、顧客や取引先に対して誠意をもって対応する姿勢が求められます。

本人通知の実施

漏えいが発生した際は、影響を受けた本人に対し、速やかに通知を行う必要があります。この通知には、漏えいの概要や二次被害の可能性、再発防止策などを含めるべきです。

通知の方法は、郵便やメールなど合理的で適切な手段を用います。ただし、本人の連絡先が不明な場合には、代替措置としてウェブサイトでの公表や問い合わせ窓口の設置を行うことも認められます。

まとめ

個人情報漏えいへの対応は、単なる法的義務ではありません。それは顧客や社会との信頼関係を守るための最善の行動です。漏えいのリスクをゼロにすることは難しいかもしれませんが、発生時に迅速で適切な対応を取ることで、被害を最小限に抑え、信頼を回復することが可能です。

ビジネスの現場では、「もしも」に備えた万全の準備と、発生時の冷静な対応が成功の鍵となります。企業としての責任を果たし、社会的信頼を築き続けるための基盤を、今一度見直してみてはいかがでしょうか?
波戸岡は、企業向け、とくに個人情報を扱う役員や従業員向けの研修を行っています。企業ごとの特性に応じ、カスタマイズした内容をご提供しておりますので、お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。


ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。

私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。

経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。

ご相談中の様子

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

経歴・実績 詳細はこちら
波戸岡への法律相談のご依頼はこちら

2024年12月、本を出版いたしました。

新作著書『弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル』

新作著書『弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル』を出版いたしました。
経営者が自分の判断に自信をもち、納得して前に進んでいくためには、
経営者に伴走する弁護士が、本音で対話できるパートナーであってほしいです。
本書では、経営者に寄り添う弁護士が身につけるべきコミュニケーションのヒントを数多く解説しています。

本の詳細はこちら

経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
東京都港区赤坂3-9-18赤坂見附KITAYAMAビル3階
TEL 03-5570-5671 FAX 03-5570-5674