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なぜ、買いたくなるのか。購買に潜む心理学 from『買い物の科学』(良書から学ぶ経営のヒント)
「話題の本を読んでみたい」「インプットの時間を取りたい」と思いつつも、忙しくて時間が取れない経営者の方に向けて、経営に役立つエッセンスと視点をお伝えする『良書から学ぶ、経営のヒント』第8回、ご紹介するのは『買い物の科学』(越智啓太)です。
私たちはものを買うとき、何に影響され、何を決め手として購入するのでしょうか。
消費者の心をつかむヒット商品を世に生み出すべく、「売る」側は心理を巧みに刺激する戦略で、購買意欲を駆り立てます。買い物にどのような心理が働くのか、どのような心理を刺激されて私たちはものを買うのか。『買い物の科学』より、5つの心理学でひも解いてみましょう。
経営者としては、自社の商品やサービスを提供するにあたっても大いに参考になる内容です。
1.商品認知の心理学
私たちは買い物をする際、2つのルートのどちらかをたどります。
ひとつは「中心ルート」。商品の機能、特性、必要性を吟味して決める方法です。この方法は時間と労力をかける買い物の仕方で、不動産など一生に一度あるかなど大きな買い物のときには、私たちは中心ルートで買い物をします。
もうひとつは「周辺ルート」。印象、雰囲気、評判などで決める方法です。現代のように、どれを選んでも一定の品質は保たれている過剰品質時代は、時間と労力をかけずとも、こちらの心理的要因で買い物をする方が多くなっています。
2.価格の心理学
「この商品はいくらである」と“消費者が認知している価格”があります。これは外的価格や実売価格と違い、その人個人の基準で決まってくる価格(内的参照価格)です。
例えば、ハンバーガーひとつ100円のキャンペーン期間に買った人は「ハンバーガー=100円」という価値観ができあがります。すると、キャンペーン期間が終了して200円に戻ったときには高いという印象を持ってしまいます。本来の価格は200円であるにも関わらず、その人にとっては100円がハンバーガーを買う際の基準になってしまうのです。
安い価格に惹かれて購入した顧客は、値上げされると去っていきます。安売りは一時的には利益を上げるものの、安さにつられて購入を決めた顧客の客離れを引き起こすため、その後の売上を落とすことにもつながります。安易な値下げは要注意ですね。
他方、顧客は必ずしも価格だけで購入を決めているわけではなく、高くてもおいしいから買うという人にとっては価格の変動は影響を及ぼしません。トータルの売上を見ると、お試し価格を試さなかった人の売り上げの方が高いことが多いのです。
3.ブランドの心理学
ブランドにとって、ファンになってもらうことほど嬉しいことはありません。ブランドのファンにとって値段は二の次。値段よりも「欲しいという気持ち」や「購入体験そのもの」が重要になってきます。
たとえ何かしらの要因で企業がネット炎上することがあっても、寛容でいてくれるのがファンの存在。応援消費をしてくれるのもまた、ファンたちです。自分の購買によって「推し(ブランド)」が成長していくという効力感をファンに感じさせることができれば、より高い購買意欲につながります。
4.広告の心理学
コーラVSペプシなど、互に批判し合う比較広告は人の心理を引き付けるため、注目が上がる戦略ですが、反感度もまた上がると言われています。反感度を下げるには、批判にユーモアを交えるといいようです。
また、あえて自虐的なメッセージを打ち出す自虐広告も効果的です。ガツンとみかんを製造する赤城乳業は20周年キャンペーン時、「ガリガリ君より売れてません」というコピーを打ち出しました。この自虐的な文句が笑いを誘い、売上もアップした そうです。“負け犬効果”があると応援したくなるものなのですね。
パーソナライズ広告も購買意欲を促進させる手法です。「あなたのために」と言われると自分個人に向けたメッセージだと感じられて、私たちはつい惹かれてしまいます。個人の属性、趣味趣向に合わせ「あなたのために」感を前面に押し出し、購買意欲を駆り立てるのがパーソナライズ広告です。
自分の趣向に合わせた情報があなたのために用意しましたと並べられると、ついクリックしてしまうことありますよね。イニシャルネックレスや名前キーホルダーなど、自分だけのための商品にも非常に弱いものです。
5.消費行動の個人差の心理学
この30年で消費行動に世代や性別、職業や年収による差異が急激に減少してきました。20代の娘と50代の母親がアイドルや服、映画と同じものを楽しんだり、10代の子と40代の大人が同じカードゲームに夢中になったりと年齢差は顕著に減少しており、“デモグラフィック属性”(性別、年齢、職業、年収)の差異を打ち出すことに効力がなくなってきています。
消費行動は「エコ志向」など、ライフスタイルやパーソナリティの違いに注目する“サイコグラフィック特性”にシフトしているのです。
本書では、ものを買ったときの幸福感についてもふれています。これが欲しい、これを買おうと自分の意思がはっきりしている人は、それを手にしたときの喜びも大きく幸福感が高そうですが、実は必ずしもそうではないと述べられています。
「最高の空間で過ごしたい」「大学は○○でないと」「ご飯を食べるならここ」など、こだわりの強い「マキシマイザー(最上級を求める人)」は自分の最高の状態を手に入れたら、さぞ大満足を味わっていると思いきや、意外と「やっぱりこっちにしておけばよかったかな」と後悔が多いというのです。その結果、幸福感も低くなる傾向にあるとのこと。
それよりも、「とりあえず、ラーメンでいい」「とりあえず、食べられたらいい」など、ほどよい「サティスファイザー」の方が、満足度が高く、人生を屈託なくエンジョイして次に進んでいけるのです。
無料特典を求めずに、よいものをひとつ買う“ミニマリスト傾向”が高い人の方が幸福度が高いというのも納得の内容でした。
「買う」の裏にある心理学から、自分にとって幸福感の高い買い物とは何か、大いに参考になりますね。
そして「売る」側に立つ企業としては、自社の商品やサービスは顧客のどんな心に訴えかけるものなのか、立ち止まって考える機会になりますね。
【良書からこの視点】
自社の商品やサービスは、顧客のどんな心に訴えかけているのかを考えてみよう。
そして、自分がその顧客だったら、なぜそれを買いたいのか考えてみよう。
自分は何に幸福感を感じているのかが見えてくる。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
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また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
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弁護士 波戸岡光太
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