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「時代の変化に乗り遅れる!」に騙されない人になる from『逆・タイムマシン経営論』(良書から学ぶ経営のヒント)
「話題の本を読んでみたい」「インプットの時間を取りたい」と思いつつも、忙しくて時間が取れない経営者の方に向けて、経営に役立つエッセンスと視点をお伝えする『良書から学ぶ、経営のヒント』第11回、ご紹介するのは『逆・タイムマシン経営論』(楠木建・杉浦泰)です。
「これからはDXの時だ!」「AIを使いこなす側に!」など叫ばれている現代。
「今こそ激動期」「世界の潮流はこれだ」と聞くと、時代に乗り遅れたらいけないという焦燥感にかられることがあります。AIの時代、DXの時代など、その実体はよくわからないままに、ついていかなくてはという不安から風潮に追随してしまうということが、誰にでもあるのではないでしょうか。
いつの時代にも世間を席巻する流れがあり、60・ 70年代のビジネス誌や新聞を見てみると、当時も「これからはこれだ!」という文句が並んでいます。しかし、現実を見てみるとその頃叫ばれていた未来予想の通りにはなっていなかったり、意外と変化していないということが多々あるのです。
誰もかれもが一斉に飛びついた風潮も、実際にはその通りにはならない現実があるのにも関わらず、相変わらず私たちは「これからは、これが来る!」という言葉に飛びついてしまうのは、なぜなのでしょうか。本書ではタイムマシンで時代をさかのぼって過去と現在を眺めながら、その原因をひもといていきます。
目次
文脈の中で事実をとらえよ
ひとつひとつのファクト(事実)はそれが生れた背景や状況があってこそ、存在しています。
わかりやすくサブスクを例にとって考えてみましょう。よく考えるとサブスク自体は、新聞や雑誌の購読といった形で昔から存在しています。「これからのビジネスはサブスクだ!」と表立って言われ始めたのは、アドビ(Adobe)がサブスクを入れて大成功したことに起因しています。
アドビが提供するフォトショップやイラストレーターなどのソフトは、ひとつずつ購入すると高額となってしまい、若い人には手が出せないサービスでした。しかし、これからの若者にこそ絶対必要なシステムだという企業の思いから、アドビはソフトの使用形態をサブスクにしたのです。サブスクの成功には、若者がツールを使えるようにするためという背景があったのです。
誰に対して何をするという「文脈」を無視して、サブスクの時代だからと飛びついても、上手くいきません。ひとつのファクトが生れた背景や状況「豊かな文脈」を読み取ること(文脈思考)が大切です。
意思決定を狂わせる3つのトラップ
いつの時代も、その時代特有のステレオタイプ的な見方に偏った思考やバイアス(同時代性の罠)が存在します。
「ものごとの本質は簡単には変わらないから、大きく変化していく波の中でも普遍的な本質をとらえていくことが大切だ」と分かっていても、つい同時代性の罠にはまってしまうのが私たちです。同時代性の罠の力は強く、偏った思考に陥ることで、意思決定が狂ってしまうことがあるのです。
私たちが飛びついてしまう罠は「飛び道具トラップ」、「激動期トラップ」、「遠近湾曲トラップ」の3つです。3つのトラップと、トラップに陥らないためのヒントを見ていきましょう。
1.飛び道具トラップ 「これからはこれだ!」
旬のツールや手法をとりいれれば、たちどころに問題が解決して、上手くいくと思い込んでしまう思考。AI、ItoT、DX、サブスク、オープンイノベーションなど、最先端のベストプラクティスやビジネスモデルがもてはやされます。
同時代の人は、成功事例に埋め込まれた文脈を無視して、対象を万物の飛び道具のように過大評価しがちです。「これからはこれだ!」の飛び道具トラップは「AIなんて分からない、乗り遅れたらどうしよう」と不安や焦燥感をうながしてしまうのです。トラップにはまらないためには、なぜうまくいったのか、その背景や文脈を見る文脈思考を身に着けることが必要です。
2.激動期トラップ 「今こそ激動期!」
新しい技術や商品・サービス、環境変化を過度に受け止めて、一気にすべてが変わると考える思考です。「メタバースですべてが変わる」「オープンイノベーション2.0」「経済3.0」などがこれにあたります。
新しい技術が過去を破壊し代替することはあっても、それを利用する人間は常に過去から今という連続性の中に生きているため、今日から全てが変わるというような変化を遂げることはできません。トラップにかからないためには、革新的な技術が急に現れたとしても、それを使う人間が同じように一気に変わることはできないことをおさえておきましょう。
3.遠近湾曲トラップ 「世界の潮流はこれ!」
昔から隣の芝生は青く見えるというように、人間には遠いものほど、よくみえるという認知のバイアスがあります。
たとえばシリコンバレーがIT企業・スタートアップの聖地だと言われて久しいですが、すべてのIT企業・スタートアップ企業が成功しているわけではなく、細かく見てみると弱肉強食が厳しい現実があることがわかります。○○の拠点と言われる場所が、果たして今もそうなのかというと実際には違うということもあるのです。トラップに陥らないためには、自分の目で確かめて判断する視点が大切です。
押し寄せるひと波ごとに、過剰に反応していては本質を見誤りかねません。そうかといって、簡単には変わらないよねとゆったり構えていると、気が付けば沖に流されていたということにもなることも。
大波小波、ひとつひとつに一喜一憂することはないけれど、時代という潮の流れは確実にあるはずだと自覚して、どう流れているのか、自分はちゃんと泳げているのだろうかと考えながら、物事を見ていく必要があるのではないでしょうか。本書には同時代性の罠にはまらずに、時代の流れの本筋を掴むためのヒントがつまっています。
【良書からこの視点】
変化の波に一喜一憂することなく、大きな時代の流れを読んで、乗るべき流れにのっていこう。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
2024年12月、本を出版いたしました。
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本書では、経営者に寄り添う弁護士が身につけるべきコミュニケーションのヒントを数多く解説しています。
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弁護士 波戸岡光太
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