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「すべてのリスクには対応できない?」から始まるリスクマネジメント入門
ビジネスでは、あらゆるところにリスクが潜んでいます。自然災害、情報漏えい、労務トラブル、為替変動… 挙げればきりがありません。
でも、まず覚えておきたいのは、「すべてのリスクに完璧に対応するのは不可能」ということです。限られた資源のなかで、どのリスクに優先的に対応すべきかを選ぶ。それがリスクマネジメントの第一歩です。
「発生頻度」と「影響度」でリスクを見える化する
このような判断ミスを防ぐには、リスクを「発生頻度」と「影響度」で分類・数値化して客観的に見える化することが大切です。
– 発生頻度:どれくらいの確率で起こりそうか
– 影響度:起こったとき、どれほどのダメージを与えるか(人・物・金・信用・環境など)
見える化されたリスク一覧があれば、経営判断にも説得力が生まれます。
【事例1】情報漏えい対策に追われて、本当に守るべきことを見落とす
ある中堅の製造業では、近年のサイバー攻撃増加を受けて、情報漏えい対策に社内のリソースを集中させていました。社員教育からセキュリティ機器の導入まで、かなりの予算と労力を投じていたのです。
ところが実際に起きたのは、老朽化した工場設備による火災事故。主要ラインが停止し、1か月近く納品ができず、取引先との信頼関係にも大きなダメージを受けました。
後からリスク評価をしてみると、「設備火災」は「影響度:5(会社の存続に関わる)」×「発生頻度:4(数年に1回は起きる)」という非常に高いリスクでした。
一方、「情報漏えい」は「影響度:3」×「発生頻度:2」程度。実際に守るべきだったのは“工場”だったのです。
【事例2】“昔からの経験則”だけでは、リスクを読み違える
とある食品会社では、長年の経験から「水害リスクは低い」と判断していました。過去30年、社屋周辺で浸水被害は一度も起きていなかったためです。
しかし、その2年の夏、局地的な豪雨により地下倉庫が浸水。保管していた在庫の8割を廃棄せざるを得なくなり、大きな損失が出ました。
過去の統計を盲信せず、最近の気象の変化(気候変動)を考慮していれば、地下倉庫の改修や移転を検討していたかもしれません。
このように、「現場の情報や感覚」も数字と並んで重要な情報源になるのです。
リスクマトリックスとリスクマップで可視化しよう
「発生頻度」と「影響度」で分析したリスクを、マトリックスやマップに落とし込むと、優先度が視覚的に見えてきます。特にリスクマップでは、「このゾーンのリスクには即対応が必要」といったラインを引いて、判断の助けにできます。
【事例3】“コアリスク”を軽視し、致命的な事故に
ある地方の宿泊業では、経費削減のために厨房の点検業務を外部委託から内製化しました。管理も簡略化され、半年以上、排水設備の確認が行われていなかったのです。
ある日、厨房の排水から悪臭が発生し、保健所の立ち入り検査が入り、数日間の営業停止処分に。
この会社にとって、飲食サービスは宿泊と並ぶ柱。食中毒や衛生管理は、まさに“コアリスク”だったのです。
どのリスクが「経営の中核」に最も関わるのか。数字だけではなく、自社のビジネスモデルとの距離感でも判断する視点が重要です。
最後に
リスクマネジメントで大事なのは、「正解を見つけること」ではありません。
むしろ、判断材料をしっかり用意し、納得のいく意思決定を下せるようにすることです。
リスクを数値化しても、図表を作っても、最後に決めるのは人間です。
リスク対策とは、未来の不確実性に誠実に向き合う姿勢でもあるのです。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
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