リスクに向き合う4つの方法~経営に必要な“もしも”の備え方~

日々の経営のなかで、思わぬアクシデントやトラブルに直面したり、直面しそうになったことはことはありませんか?
それが軽微なトラブルで済むか、致命的な損失につながるかは、「備え」にかかっています。
今回は、リスクマネジメントの基本的な考え方、とくに4つの対応方法について、身近な例を使って解説します。

 「リスクに備える」とは、どういうことか?

リスクマネジメントと聞くと、保険の話や法律の話を連想する方も多いかもしれません。でも実は、もっとシンプルで日常的なことでもあります。

たとえば、
– 傘を持って出かける(雨のリスクに備える)
– 定期的にバックアップをとる(データ紛失のリスクに備える)

これらも立派なリスクマネジメントです。
これについて、ビジネスにおけるリスクマネジメントでは、「リスクにどう対応するか」で4つに分類します。

1.リスクの「回避」:やらないという選択

まず一番わかりやすいのが、リスク自体を避ける方法です。たとえば──
例)新規事業に参入しようとしたとき、その業界の法規制が複雑で訴訟リスクが高いと判明。
→ 調査の結果、想定される利益よりもリスクの方が大きければ、事業を見送るいいう判断もありえます。これが「回避」です。
ただし、すべてのリスクを回避していては、ビジネスは前に進みません。だからこそ、多くの場合は次の「低減」や「移転」といった選択肢が出てきます。

2.リスクの「低減」:できるだけダメージを小さく

完全には避けられないリスクであっても、その発生確率を減らす、あるいは発生しても被害を小さくするという発想です。
例)火災リスクへの対応
→ 喫煙所を屋外に設置。スプリンクラーや消火器を設置。壁紙やカーテンを不燃素材に変更
これらはすべて「低減策」です。火災を完全に防げなくても、被害を最小限にとどめる努力ができます。

3.リスクの「移転」:他者に任せる

自社だけで対処しきれないリスクは、保険やアウトソーシングを通じて外部に“移す”ことができます。
例)交通事故への備え
→業務で車を使う場合、いくら注意しても事故リスクはゼロにできません。
そんなとき、損害保険に入っておけば、万一の損害賠償リスクを保険会社に移転できます。
あるいは、自社の物流を専門業者に委託することで、物流に伴うリスク管理そのものを外部に委ねるという方法もあります。

4.リスクの「保有」:何もしない

意外に思われるかもしれませんが、「あえて何もしない」ことも、リスクへの一つの対応です。
これは、発生頻度も影響も小さく、対策コストの方が高いようなリスクが該当します。
例)軽微な表示エラー
顧客に大きな影響を与えず、発生してもすぐ修正できるようなミスについては、許容して様子を見るという判断が妥当なケースもあります。
ただし、「何もしない=見落としていい」ではありません。あくまで、認識したうえでの判断であることが大切です。

応用編:「縮小」と「取込」という考え方

最近では、「縮小」や「取込」といった柔軟な考え方も登場しています。

縮小:リスクを完全に除去できないが、対象範囲や規模を減らすことで負担を軽くする
取込:明らかに大きなリスクだが、今すぐは対処できないため、将来的な対応を前提に保留する

これらは、特に事業規模が大きい企業や中長期計画が必要なプロジェクトで活用されます。

まとめ

リスクマネジメントとは、リスクをゼロにすることではありません。
リスクに気づき、どう向き合うかを選ぶことです。

経営は、挑戦の連続です。だからこそ、「いざというときの備え」が、意思決定の安心感とスピードにつながります。
明日のチャンスをつかむためにも、ぜひ今日からリスクとの付き合い方を見直してみてください。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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