なぜ、やる気が出ないのか?モチベーションの正体に迫る『図解モチベーション大百科』

「なんだか最近、やる気が出ないんです」
部下から、あるいは自分自身の中から、そんな声が聞こえてくることはありませんか?

やる気――つまりモチベーションとは、そもそもどこから生まれるのか。そして、どうすれば高めることができるのか。その答えを、心理学や行動科学の視点から丁寧に紐解いたのが、池田貴将さんの『図解モチベーション大百科』です。

この本は、日常の「ちょっとした工夫」で人のやる気がどう変わるのかを、豊富な事例とともに紹介してくれます。今回はその中から、特にビジネスシーンに役立つエッセンスを厳選して、実践例や応用ポイントを加えてお届けします。

 

1. 目標勾配──ゴールが見えれば、人は走れる

「あと3件で今月の目標達成だよ」と言われると、急にラストスパートがかかる。これは「目標勾配」の力です。
人は、ゴールが視覚化され、近づいている実感があると、加速的にやる気が湧いてくるのです。

例えば営業チームであれば、「KPIの達成率をメーターで見せる」「案件ごとに進捗ボードを用意する」といった工夫が効果的です。途中経過を見える化することで、チーム全体の熱量が変わります。

2. キャンディ効果──まず「いい気分」をつくる

朝の空気が重いオフィス。そんなとき、「おはよう!今日もよろしくね」という笑顔の一声で、空気は一変します。
「いい気分」をつくってから仕事に取りかかると、脳がポジティブに働き、作業効率も上がることが研究でも示されています。

小さな「ごきげんづくり」が、チームの雰囲気を左右するのです。関西の商店で配られる「アメちゃん」は、実は理にかなったマネジメントツールなのかもしれません。

3. 消費ゴール──ご褒美は、計画したときが一番効く

「来月の温泉旅行が楽しみだな…」というワクワク感が、日々の原動力になる。
ご褒美の本当の効力は、“楽しみにしている間”に発揮されるというのが「消費ゴール」の考え方です。

そのため、仕事のご褒美も“後払い”だけでなく、“前払いのモチベーション”として機能するように設計すべきです。
たとえば、「このプロジェクトが終わったら、〇〇をする予定」と先に周囲に宣言することで、効果が最大化されます。

4. 自問式セルフトーク──「やれるかな?」と聞いてみる

「私はやる」と宣言するよりも、「私はやれるかな?」と疑問の形で自分に問うことで、人は自然に行動を始めやすくなります。

これは行動心理学でも知られる効果で、強制されるよりも、内発的な動機づけが働くからです。
たとえば、部下に「この提案、できそう?」と投げかけると、本人が“自分の意志でやる”と感じやすくなります。

5. マインドセット──価値観に立ち返ると、人は強くなる

忙しさに追われると、自分が「なぜこの仕事をしているのか」を見失いがちです。
そんなときこそ、自分の価値観や大切にしたい信念に立ち返ることが、自信と共感力を取り戻すカギになります。

例えば、ある経営者は毎週1回「自分の価値観に即した行動を振り返る時間」をチームで設けています。
この習慣が、行動の軸をぶらさない組織文化を生み出しています。

6. 同調状態──動きを合わせてから始めよう

組織やチームがバラバラに動いていては、個の力も発揮されません。
まずは、皆で一緒にストレッチをする、朝礼で声をそろえる、といった「共通の動作」が、心理的な協調を生み出します。

たとえば、ライブ前にミュージシャンが一緒にリズムをとるように、行動のハーモニーが心のハーモニーを呼ぶのです。リモートワークでも、「一斉スタートの合図」を工夫することで再現可能です。

7. 証明型と習得型──「自分の成長」を見つめる

人は他人と比べられると緊張し、評価を気にして守りに入ってしまいます。
一方で「前の自分より成長している」と実感できると、モチベーションが持続しやすい。これが習得型の評価です。

部下の評価も、「前と比べてどう変化したか」「どう工夫したか」に着目してフィードバックするだけで、チャレンジ精神が育まれます。

8. 焦点の移動──過去ではなく、未来に向けて問う

「なんで失敗したの?」という問いは、自己正当化を生み、反発心を引き出します。
一方で、「この経験をどう活かせるかな?」と問えば、建設的な行動が始まる。

これは質問の“焦点”を未来に移すテクニック。面談や1on1の場面でも、感情的な対立を避けながら相手の行動を促す質問法として有効です。

9. 役割の力──任せるだけで、人は変わる

「調整役」「報告係」「ナビゲーター」――たとえ小さな役割でも、人はそのポジションに合わせて行動を変えます。
これは心理学でも「役割期待」による行動変容として知られています。

職場でのモチベーション低下が見えたとき、新たな役割を渡すことで、本人も驚くようなパフォーマンスが引き出されることがあります。

10. 道徳的行動──存在そのものを認める

「〇〇さんって、ほんとうに頼りになるよね」
そんな一言が、行動以上にその人の“人格”を刺激し、より良い振る舞いを促すことがあります。

人の行動を正すときは厳しく指摘しつつも、存在そのものには肯定のメッセージを送る。
「あなたがいるから助かっている」という言葉は、安心感と自発性を育てます。

11. 同族嫌悪──似ている者同士ほど距離をとる

職場で、「なんとなく気に食わない」と感じる相手が、自分と似たタイプであることはありませんか?
実はこれ、心理学でいう「同族嫌悪」という現象。
自分が抑えている面を相手が堂々と出していると、不快感を覚えやすいのです。

特に価値観が近い同士は、「小さな違い」がやけに気になることがあります。
そんなときは、物理的にも心理的にも意図的に距離をとることで、摩擦を回避できます。

12. 社会貢献──「この仕事が誰を助けているか」を描く

目の前の作業が、誰のどんな未来に役立っているのか――。
そこが見えると、仕事への意義ややりがいは格段に変わります。

たとえば、単なるデータ入力でも、「このデータが分析に使われ、顧客の課題を解決する」ことが見えれば、行動の質も変わってきます。
マネジメントにおいては、「仕事の向こう側にある社会的意味」を共有することが、内発的動機づけに繋がるのです。

13. 無意識の適応──「できる人」として扱えば、できるようになる

「君ならできると思っていたよ」と言われると、妙に背筋が伸びる――それはラベリング効果
人は「こう見られている」と感じた通りに行動する傾向があります

つまり、リーダーや上司が「この人はできる」と本気で思って接すると、その期待に応えようとする力が働くのです。
日頃の呼びかけ、言葉の選び方が、部下の未来を左右する場面も少なくありません。

14. ピリオダイゼーション──締切は細かく、こまめに刻む

「来月までに提出して」と言われても、いつまでたっても手がつかない。
それは人が、「見えない期限」には反応しづらい生き物だから。

この“見えなさ”を解消するのがピリオダイゼーション
たとえば、月末納品の資料なら、「第1案を〇日、第2案を〇日」と締切を細かく刻むことで、モチベーションの波をコントロールできます。

15. 自分事と他人事──“他人として”自分を眺めてみる

「転職すべきか悩んでいる」とき、自分のことだと迷いがちですが、友人から相談されたらスッと答えられたりしませんか?
これは、人は他人のことのほうが合理的に判断できるという心理作用。

そこで、自分の悩みも「他人に助言するような目線」で考えると、不思議と決断しやすくなります。
この視点切り替えは、重要な場面での自己コーチングに活用できます。

16. ゴールと持久力──“ちょっと多め”が、継続のコツ

人は、「ギリギリ頑張れるライン」を少しだけ超えるところに挑戦することで、持久力と達成感を高めることができます。

たとえば、「20件アポを取るつもりだったけど、25件いってみよう」と少し多めの目標を設定すると、自分の限界を意識しながらも、自然と力が出るのです。
筋トレと同じで、負荷のかけ方が重要です。

17. 導かれる服従──「どう思う?」と問い返す勇気

部下から「どうしたらいいでしょう?」と相談されたとき、すぐに答えるのは簡単です。
しかしそこで、「あなたはどう思う?」と問い返すことが、相手の成長を促すのです。

これは「導かれる服従」を防ぐための対話術。
決断の場面においても、自分の頭で考えた経験が、後の自信につながります。

18. グロウスマインド──「今日からでも遅くない」という信念

「もう手遅れだ」と思った瞬間に、成長は止まります。
でも、「今日からでも変われる」と信じるマインドがあれば、人はどこまでも伸びていける。

この「グロウスマインド(成長志向)」をリーダー自身が持っているかどうかが、チームの学習力・創造力を左右するのです。
遅くない。変えるなら、今日から。

最後に:やる気は“設計”できる

これら18の技法は、どれも「自分でやる気をつくるための仕組み」です。
特別な才能や劇的な変化を求めるのではなく、日常の中の“ちょっとした工夫”を重ねることが、継続力と行動力を育ててくれます。

忙しい毎日の中でも、1つずつ試してみてください。
きっと、気づかぬうちに前向きな風があなたの中に吹き始めるはずです。

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
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私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

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