Blog 最新記事
- あなたの「リーダー観」、アップデートされていますか?-『リーダーシップの理論』を俯瞰する-2025-04-26
- 『選ばれるプロフェッショナル』になるために、あなたは何を磨いていますか?2025-04-22
- あなたは「冒険」していますか?─『冒険の書-AI時代のアンラーニング』から学ぶ実践知2025-04-22
- 『ミライの授業』に学ぶ、これからの仕事と生き方2025-04-21
- 「動かす」のではなく「動き出す」を支える力―『ソーシャル・ファシリテーション』という視点-2025-04-19
カテゴリ
「働く幸せ」とは何か?-『職場に活かす心理学』から学ぶ実践知-
あなたは最近、仕事をしていて「幸せだな」と感じたことはありますか?
それは、昇給や昇進といった成果のときだったでしょうか。それとも、仲間と協力して達成したプロジェクトの充実感でしょうか。あるいは、自分らしさを発揮できた瞬間だったかもしれません。
現代の働き方は大きく変わりつつあります。リモートワークの定着、組織のフラット化、多様性の重視――。こうした変化のなかで、仕事に求められる価値観もまた、従来の「安定」や「出世」から、自己実現や心理的充足感へとシフトしています。
今城志保氏の『職場に活かす心理学』第1章では、こうした変化を捉えるうえで重要な視点として、主観的ウェルビーイング(幸福感)とユニークネス(自分らしさ)、所属欲求といった心理メカニズムが紹介されています。本稿ではその内容をもとに、これからの組織と個人がどう向き合っていくべきかを考えてみたいと思います。
目次
幸福感は「行動」でつくられる
「幸せ」と聞くと、環境や条件――たとえば収入や職場環境、福利厚生などが影響すると思いがちです。しかし、心理学の研究によれば、幸福感を構成する要素は次の3つだといいます。
- 遺伝的要因:50%
- 意図的な活動:40%
- 環境要因:10%
つまり、職場の椅子が新しくなっても、給料が上がっても、幸福感への影響は限定的であり、やがて人はその状態に慣れてしまうのです。
一方で、自分の意思で選んだ活動――たとえば「学び直し」「ボランティア活動」「健康的な生活習慣」「誰かへの感謝」などは、長期的に幸福感を高める効果があることがわかっています。
これは、私たちが「意味ある行動」に価値を見出す性質をもっているからです。自らの存在意義や価値を感じられる活動に取り組むことで、人は自分の人生に納得感を持ち、精神的にも安定するというわけです。
幸福感は、待つものではなく、つくるもの。
この考え方は、マネジメントにとっても示唆に富みます。社員の幸福感を高めるためには、給与や制度だけでなく、社員自身が「意味ある行動」を選び取りやすい環境づくりが必要なのです。
フィードバックが「意味」をつくる
では、仕事の中で人はどうすれば意味を感じられるのでしょうか?
そのひとつが、フィードバックです。
人は、自分の仕事が何に貢献しているのか、誰の役に立っているのかが見えると、自然と意義を感じやすくなります。
だからこそ、上司やチームが定期的に、行動の価値を言語化して伝えることが重要です。
また、逆説的ですが、「自分たちが仕事を怠った場合に何が起きるか」という“負のフィードバック”も、意義づけには有効です。
自分の役割の大切さを実感することで、行動の継続がしやすくなるからです。
「あなたの仕事がなければ、チームはこうなる」――この言葉が、行動の意味を可視化する。
自分らしさを発揮するために働く
近年、特に若手層から強く聞かれるようになったのが、「自分らしく働きたい」という言葉です。
この心理は、ユニークネス欲求(自分らしさを発揮したい欲求)と呼ばれ、人間に共通する動機のひとつです。
この“自分らしさ”の表し方は文化によって違います。
- 欧米では、「能力や価値観、性格」など内面の違いで他者と差別化する
- 東アジアでは、「社会的地位や役職」など外面の関係性によって差別化する傾向
しかし日本企業では、組織のフラット化が進み、「肩書き」では差別化しづらくなってきています。
その結果、ますます「内面の価値」――個人の信念、専門性、ライフスタイル――によって差別化しようとする動きが高まっているのです。
「肩書き」ではなく「あり方」で目立つ時代。
企業に求められるのは、社員がこうした“内なる個性”を発揮できる土壌を整えることです。
所属欲求との両立が組織を強くする
ここで一見矛盾するもう一つの欲求が登場します。それは、所属欲求です。
人は、自分らしさを大切にしながらも、「集団の一員でありたい」という感情も同時に持っています。
この二つの欲求――「自分らしくありたい」と「集団に属したい」――は、一見すると相反するようですが、実は両立可能です。
そのカギは、ユニークな組織に所属すること。
たとえば、社会的なミッションを掲げているNPOや、革新的な事業を展開するスタートアップに所属する人たちは、「この会社で働いている自分が誇らしい」と感じる傾向があります。
つまり、「他とは違う組織」にいることで、個人の差別化欲求と所属欲求を同時に満たすことができるのです。
「ユニークな集団」が、個人の自律性と帰属感の交差点になる。
終わりに:これからの「働き方」は「生き方」の一部になる
これからの時代、働くことは単に収入を得る手段ではなく、生き方の表現そのものになっていきます。
その中で、心理学的視点から見えるキーワードは次の3つです。
- 意図的な行動が幸福感を生む
- 自分らしさを発揮する場が求められている
- 所属と差別化が両立できる組織が人を引きつける
組織にとっては、こうした価値観の変化に応えることで、優秀な人材の定着や創造性の発揮が期待できます。
個人にとっては、自分の幸せとキャリアを重ね合わせながら、自律的に生きるためのヒントになるはずです。
あなたにとって、「仕事に意味を感じられる瞬間」は、どんなときですか?
それは、あなたが幸福に働くためのヒントでもあるのです。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。
私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。
経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
2024年12月、本を出版いたしました。
新作著書『弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル』を出版いたしました。
経営者が自分の判断に自信をもち、納得して前に進んでいくためには、
経営者に伴走する弁護士が、本音で対話できるパートナーであってほしいです。
本書では、経営者に寄り添う弁護士が身につけるべきコミュニケーションのヒントを数多く解説しています。
経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
東京都港区赤坂3-9-18赤坂見附KITAYAMAビル3階
TEL 03-5570-5671 FAX 03-5570-5674