ビジネスパーソンが学ぶべき、江戸の成長戦略とは?-『広重の浮世絵と地形』から読み解けること-

現代のビジネスに必要な発想力や戦略思考は、案外「歴史」や「風景」に宿っているかもしれません。
例えば、江戸という都市がいかにして発展したのか。その背後には、ただの運や偶然ではない、緻密な空間設計と情報インフラ、そして水を制した戦略的な視点がありました。

本書『広重の浮世絵と地形で読み解く江戸の秘密』(竹村公太郎)は、単なる歴史書ではありません。浮世絵というビジュアルと、日本列島の地形的特性という地理学を融合させ、「なぜ江戸が巨大都市になれたのか」をロジカルに解き明かしていく一冊です。

そして驚くべきことに、そこには現代の企業経営にも通じる「成功のヒント」が、いくつも詰まっています。

「縮み志向」が生んだ、日本的イノベーション

江戸の中心、日本橋から旅は始まります。浮世絵に描かれたこの風景は、単なる美しさではなく、日本人の「地形対応力」と「縮小美学」の象徴でもあります。

山が多く、湿地帯も多い日本列島では、大規模で直線的な構造物を築くのは困難でした。そこで日本人は、「より薄く」「より小さく」、しかし「より精密に」ものを作る発想にたどり着いたのです。

これはまさに、限られた資源や制約の中から独自性を育てる“日本型イノベーション”
現代でいえば、狭い空間で高性能を実現するモバイル機器や、省スペースで美しい建築の発想にも通じます。

制約があるからこそ、独創性が生まれる。
江戸時代の景観が、私たちにそれを教えてくれます。

水上ネットワークと共通言語の育成

地形が複雑で、山と海と川に囲まれていた日本において、陸路よりも水路こそが情報と人を運ぶメイン回線でした。

江戸時代260年間にわたって、日本中の大名が参勤交代を通じて江戸に通い、その家族、とくに跡継ぎは江戸で育ちました。地方ごとに異なる文化や言葉を持っていた人々が、江戸という都市を通じて“日本人”になっていったわけです。

つまり、水運ネットワークは情報ネットワークでもあり、日本人としてのアイデンティティーをつくる舞台でもありました。

ビジネスでいえば、これは「本社機能」「社内イントラネット」「社員研修」といった、企業文化の統一・育成の仕組みに似ています。

地理的に分断されていても、共通の場を持つことで、組織はまとまる。
江戸時代の仕組みは、そのまま現代の企業運営にも応用できそうです。

水を制する者が都市を制す

もっとも衝撃的だったのが、徳川家康の「水戦略」です。
家康は、当時江戸湾に流れ込んでいた利根川の流れを、なんと銚子方面に変えてしまったのです。広大な湿地だった関東平野を、豊かな農地へと転換するための一大土木プロジェクトでした。

これによって、江戸の都市インフラと食料供給の両面が整い、都市としての自立性が飛躍的に向上したのです。

さらに、徳川幕府は全国の大名たちを河川の流域ごとに配置し、水系ごとの統治と流通を効率化しました。結果として、地方の河口部が穀倉地帯になり、日本全体の食料ネットワークが機能したのです。

これは今で言えば、サプライチェーンマネジメントやロジスティクス拠点の戦略配置に相当します。

「資源」と「輸送路」を一体的に考える。
江戸の都市づくりに学ぶべきは、まさにこの点にあります。

結びに─江戸の知恵を未来につなぐ

私たちは、都市の成り立ちを「自然な成長」ととらえがちですが、江戸の繁栄は戦略の積み重ねによってつくられたものだったことが、本書を読むとよくわかります。

制約から美を生み出す「縮み志向」、水運による統合と情報流通、そして自然地形を味方につけたインフラ戦略。
こうした江戸の知恵には、経営者やビジネスリーダーが明日から使える視点が、たくさん詰まっています。

歴史を眺めることは、未来を構想すること。
広重の浮世絵に描かれた江戸の景観から、現代の都市や組織の「あり方」を考えてみるのはいかがでしょうか。

 

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