あなたのビジネスに、「推してくれる人」はいますか?-『推し活経済』のすすめ-

突然ですが、あなたの提供する商品やサービスには、「推してくれる人」がいますか?

「顧客」や「ユーザー」ではなく、「推し」として応援し、熱狂し、広めてくれる存在。そんな“推される”ビジネスを築いていくためのヒントを、瀬町奈々美さんの著書『推し活経済』は教えてくれます。

この本は、エンタメの枠を超えて、“推し活”という熱狂的で能動的なファンの関係性が、経済活動にどのようなインパクトを与えているかを紐解いた一冊です。そしてそれは、あらゆる業種にとって無関係ではありません。むしろ、成熟したマーケットの中で差別化や継続的な収益確保を求める企業にとって、非常に大きな示唆を与えてくれます。

「推し活」は消費ではなく、能動的な共創行為である

従来の「ファン」は、コンテンツを消費する立場に過ぎませんでした。しかし「推し」は違います。

推しとは、「この人(このブランド)のために何かしたい」と思わせる存在
そこにあるのは、感情的な価値と、行動を起こすエネルギーです。

たとえば、あるYouTuberがクラウドファンディングを立ち上げたとき、単なるファンは結果を見て楽しむかもしれません。しかし「推し」にとっては、自分の支援がその人の夢を後押しする実感があり、自発的に拡散し、応援の輪を広げていきます。
つまり、推し活とは、もはや消費者ではなく、運営側としての役割を引き受ける行為なのです。

この能動的な応援行動は、ビジネスにとって極めて重要な意味をもちます。商品やサービスに熱量を持った“共犯者”が増えることで、事業の成長スピードは加速し、外部環境に左右されにくい強い基盤が形成されるのです。

「応援される存在」には、3つの条件がある

それでは、どのような人や商品、ブランドが「推される」のでしょうか。著者は次のような条件を挙げています。

① 一生懸命で誠実であること

一見当たり前のようですが、これができている企業や個人は意外と少ないのではないでしょうか。
日々の姿勢や言葉づかい、トラブル対応にまで、“全力さ”や“丁寧さ”がにじみ出ているか。この蓄積が、ユーザーとの信頼関係を築きます。

ある中小企業の代表は、問い合わせへの返信メールに自ら目を通し、できるだけ手書きの手紙を添えて商品を発送していました。結果、SNSでは「この会社を応援したい」という声が自然に広がっていったのです。

② ブレない芯や世界観を持っていること

たとえば「うちは高級路線」と言いながら、急に値下げセールを打つと、世界観が揺らぎます。何を大切にしているのか、どんなストーリーを語っているのか、それが一貫しているかどうかが問われるのです。

ブランドは“意味の経済”です。感情的なつながりを構築するには、商品やサービスの背景に共感できる物語が必要です。苦労のエピソード、創業時の信念、未来へのビジョンなどは、ユーザーにとって“語りたくなるストーリー”になります。

③ 完璧ではないこと

意外に思われるかもしれませんが、「弱さ」を見せることは強さにもなります。
不器用でも一生懸命。時には失敗もある。だからこそ、人は「支えてあげたい」「関わりたい」と思うのです。

あるアーティストが、体調不良で活動を一時休止した際、ファンは離れるどころか「自分たちでこの人の居場所を守ろう」と団結しました。“支えたい”という気持ちが、自分事化の第一歩になるのです。

「推されるビジネス」はLTV(顧客生涯価値)が高い

LTV(Life Time Value)は、ひとりの顧客がもたらす長期的な価値を指します。推し活経済では、このLTVの構成要素である「継続率」と「収益性」において、非常に強い効果を発揮します。

  • 継続率が高いのは、飽きられない工夫と感情的つながりがあるから。
  • 収益性が高いのは、「支援したい」「この人の成長が見たい」という思いから、価格以上の価値を感じてもらえるから。

定期的なリピーター、サブスクの継続率、SNSでの能動的な拡散……。これらを支えるのは、“推し”としてのつながりです。

あなたの事業に「推し活」の視点を

『推し活経済』が伝えているのは、単なるファンダムではなく、経済行動の根幹にある「共感」「能動性」「感情価値」が、これからのビジネスにとってカギになるということです。

今、顧客に向けて何を語っていますか?
あなたのブランドは、誰かにとって「語りたくなる物語」になっているでしょうか?

“買ってくれる人”ではなく、“支えてくれる人”を増やすために、
まずはあなた自身が、誠実で、情熱を持ち、ストーリーのある存在であること。

それが、次の経済をつくる力になるのだと、本書は教えてくれます。

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