キャリアの主導権、握れていますか?-『職場の心理学』から学ぶ実践知-

日々の業務に追われるなかで、ふと立ち止まって思うことはないでしょうか。「この仕事、自分の意思で選んでるのかな?」「目の前の目標、本当に自分の目標だろうか?」と。

今城志保さんの『職場に活かす心理学』第2章では、“自律的なキャリア”を築くために、心理学の知見をどう活用するかが語られています。ただ「頑張れ」ではなく、「どうすれば人が自ら動きたくなるか」「どうすれば目標に向かい続けられるか」を解き明かしてくれる実践的な内容です。

では、その核心をいくつかの切り口から見ていきましょう。

目標を「自分のもの」にする力:目標意図と実行意図

「これを達成したい!」という思い(=目標意図)と、「いつ・どこで・どうやるか」を事前に決めておくこと(=実行意図)。この2つをセットで持つと、行動が格段にスムーズになります。

たとえば、「今期の売上目標を達成する」という目標だけでは行動は変わりません。そこで、「毎週水曜に3件新規訪問する」「朝9時までに必ず前日の数値を確認する」といった具体的な実行意図を添えることで、行動に結びつきやすくなるのです。

さらに重要なのが、自己効力感。これは、「自分にはできる」という感覚です。この感覚があるかどうかで、同じ目標に向かう意欲がまるで変わります。

「自分で決めた」と感じることが、仕事を変える

どれだけ会社からノルマや目標が降りてきても、それを自分なりに意味づけて、「自分の目標」として受け止めることができれば、やる気はぐっと高まります。逆に、与えられた目標をそのまま「やらされ感」で捉えてしまうと、モチベーションは一気に下がります。

自律的に目標を立てる社員は、失敗やネガティブなフィードバックにも強くなります。なぜなら、それが「自分のチャレンジ」だからです。

人は「コントロールできている」と感じると強くなる

心理学ではこれをコントロール感と呼びます。環境に対して「自分の行動が影響を与えている」と思えると、人はストレスに強くなり、幸福感も高まります。たとえ実際には環境を変えるのが難しくても、「自分はやれている」という感覚だけで効果があります。

たとえば、ルーチンワークでも「自分で工夫できる部分がある」「自分なりの改善提案ができる」といった余地があれば、コントロール感が高まり、燃え尽きにくくなるのです。

また、コントロール感を高める工夫として、エンパワメント(権限移譲や情報の共有)が挙げられます。社員に任せ、信じ、参加させることが、結果として意欲と成果を生むのです。

「責任を果たす」か「夢を追う」か:人の動機づけは2タイプ

制御焦点理論では、人の動機づけには2つの方向があるとされます。

  • 促進焦点:理想や夢、達成したい目標に向かうタイプ。「嬉しさ」や「達成感」が原動力。
  • 予防焦点:失敗や責任を避けようとするタイプ。「安心感」や「安堵」が報酬になる。

この2つは優劣ではなく状況によって使い分けるものです。創造的な仕事や新規提案には促進焦点、リスク管理や品質チェックなどには予防焦点が合います。部下を動かすときにも、「夢を描かせる」のか「責任感を刺激する」のか、相手に合わせたアプローチがカギになります。

「成功体験」が次の挑戦を後押しする

過去に難しい課題に挑戦して成功した人は、「またできる」と感じるようになります。これは自己効力感を高めるもっとも自然な方法です。

だからこそ、職場では社員が「小さくても成功できる機会」を持てることが重要です。評価制度やフィードバックの設計にも、こうした心理的メカニズムを取り入れていくと、次の目標にも前向きに取り組む姿勢が育ちます。

終わりに:「自分でキャリアをつくる」ための小さな第一歩

キャリアを会社任せにせず、自分で意味づけ、目標を定め、行動を起こす。これは一見ハードルが高く感じるかもしれません。でも、まずは「実行意図」をひとつ立ててみる。たとえば「明日の会議で、ひとつだけ自分の意見を言う」といった具体的な行動です。

こうした小さな積み重ねが、「自律的キャリア」への第一歩になります。

 

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