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「集中しろ!」と言う前に、『あなたの職場に世界の経営学を』取り入れてみませんか
「なんであの人はすぐに話がそれるんだ」「なぜ現場に専門家の意見が届かないのか」などと感じたことはありませんか?
そのような「もどかしさ」の裏には、経営の現場でしばしば見落とされがちな“人の認知”や“行動のクセ”が潜んでいます。
本書『あなたの職場に世界の経営学を』(宍戸拓人)は、経営学の研究成果をもとに、職場で起こる“あるある”な出来事を読み解き、現場での行動変容へつなげていく一冊です。
今回はその中から、創造性、ビジョン形成、専門家の意見活用という3つの視点を中心に、私たちが職場でどうふるまうべきかを掘り下げてみましょう。
目次
「注意散漫」が生むイノベーション:集中力神話からの脱却
一般的に「集中していない=だめ」と捉えられがちですが、本書では真逆の視点が提示されます。
たとえば、ジェームズ・ダイソンが掃除機の仕組みにヒントを得たのは、製材所の“木くず”から。(本書での紹介ではありませんが)回転ずしの着想も、別業界との偶然の接点から生まれました。
つまり、創造的なアイデアとは、既存の枠を越えて、異なる情報が“つながる”瞬間に生まれるものなのです。
注意散漫な状態は、外部からの刺激に敏感な状態とも言えます。もちろん、単なる“ぼーっとしている”状態とは違います。そこには2つの前提条件があります。
- ①現在の課題と何らかの形で結びついていること
- ②その仕事に意味や面白さを感じていること(=プロ意識)
ですので、たとえば、会議中に急に考え事をしている部下がいたら、「集中して!」と怒るのではなく、「何か思い浮かぶことがあった?」と声をかけてみてください。そこから意外なアイデアが生まれるかもしれません。
言葉ではなく「映像」を語る:ビジョンは“未来の写真”で描け
「未来を創ろう」「常識を覆せ」──こうしたキャッチーな言葉に触れたことは誰もがあると思いますが、その“未来”を具体的にイメージできた経験は、案外少ないのではないでしょうか?
人は「革新的なアイデア」や「変革のビジョン」に惹かれますが、言葉だけでは人の心は動きません。
脳科学的に言えば、言葉は左脳、映像は右脳が処理します。左脳が意味を理解しても、右脳でイメージが伴わなければ、“未来の世界”はリアリティをもたないのです。
ここで重要なのが、「曖昧ビジョン・バイアス」と「近視眼的ビジョン・バイアス」という2つの落とし穴です。
- 曖昧ビジョン・バイアス:「革新的」など抽象的すぎてイメージできない
- 近視眼的ビジョン・バイアス:「目先の目標」が未来像にすり替わってしまう
ではどうすればよいのか? 著者は「メンタル・タイム・トラベル」という考え方を紹介しています。
これは、ビジョンが実現した未来の世界に自分が旅したつもりになり、その社会で“どんな写真を撮りたいか”をイメージするというものです。
たとえば、ケネディが「月に人類を送る」と語ったアポロ計画や、キング牧師の「I Have a Dream」のスピーチが人々の心を打ったのは、ビジョンが“見える映像”として語られたからでした。
あなたのチームでも、「その未来、写真に撮れる?」という問いかけをしてみてください。
なぜ専門家の意見が活かされないのか:「3つの壁」を越えるヒント
経営の現場で「外部専門家のアドバイスがうまく浸透しない」という課題に直面したことはないでしょうか?
本書では、専門家の知見が現場に届かない背景として、「3つの壁」が紹介されています。
第1の壁:意思決定の“見せ札”になってしまう
提言は重宝されても、いざ実行段階では「お飾り」として扱われてしまう。専門家が“戦略的アピール”の道具にされて終わるケースです。
→ だからこそ、専門家は“小さなこと”から着手するべきだと著者は説きます。言い換えれば、一発逆転より、継続的な貢献を積み重ねるべきということです。
● 第2の壁:机上の空論と思われてしまう
専門家ほど、現場との距離感を持たれがちです。複雑な現実を踏まえない提案は、「それ、現場では無理なんです」と切り捨てられてしまう。
→ 信頼を築くには「短期決戦」しかない。現場の肌感を素早くつかみ、限られた接点で信頼を得る必要があります。
第3の壁:専門性の“押し付け”になってしまう
「こうあるべき」と理論を押しつけてしまうと、かえって影響力を失います。
→ 専門家こそ、現場感を共有する努力が求められる。一緒に汗をかき、一緒に悩む姿勢が信頼を生むのです。
経営にこそ“人間くささ”を:使える知識は、行動に結びつくもの
本書に共通して流れるメッセージは明快です。
「人は合理的に動かない。でも、人らしさを理解すれば、職場は変えられる」
注意散漫にこそ創造の芽があり、イメージが人を突き動かし、専門性が活きるのは信頼という土壌の上にある――。
経営学の理論は、机の上にしまっておくものではありません。あなたのチームの中で、小さく実験しながら使っていくものです。
まずは今日、誰かに「何か思いついた?」と声をかけてみる。あるいは、自分の未来を写真にしてみる。そんな一歩から、“世界の経営学”は職場で生き始めるのです。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
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また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
2024年12月、本を出版いたしました。
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弁護士 波戸岡光太
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