「真面目に生きているか」と、自分に問い直してみる-『夏目漱石の人生を切り拓く言葉』-

あなたは最近、自分の仕事や人生に「真剣勝負」で臨めていると胸を張って言えるでしょうか?

この問いは、明治を代表する文豪・夏目漱石が遺した数々の言葉を現代人の生き方に照らし合わせながら再解釈した書籍、『夏目漱石の人生を切り拓く言葉』(齋藤孝 著)の中で、私たちに鋭く投げかけられるテーマのひとつです。

本書は、漱石の名文の中から厳選された珠玉の言葉を取り上げ、それぞれが持つ人生を前向きに生きるためのヒントを、教育学者でありコミュニケーションの達人でもある齋藤孝氏が丁寧に解きほぐしてくれる一冊です。漱石がどのような思考で困難を乗り越え、時代に抗い、自分の道を切り拓いていったのか──その足跡は、現代を生きる私たちにとっても極めて示唆に富むものです。

中でも、本書の冒頭に紹介されるのが、漱石の問いかける「真面目とは何か」というテーマです。

漱石はこう言います。「真面目とはね、君、真剣勝負の意味だよ」。単なる誠実さや堅実さとは違い、自分の考えを世の中にぶつけて試す。行動の中でしか見えてこない本気こそが“真面目”なのだと説いています。

 

漱石のこの視点は、現代の仕事においても深い示唆を与えてくれます。「安心して進める」ほどの自信は、牛のように図々しく進む姿勢から生まれる──スピード優先の時代においても、目の前の仕事にじっくり向き合う“腰の据え方”が求められています。

自分の「本領」を発揮できる場所で生きているか

漱石が強く大切にしたのは「自己本位」という考え方です。これは自己中心的に生きることではなく、「自分という個を信じて突き進む」という、芯の強さに根ざした姿勢です。

彼は、自身が文学者として道を切り拓いていく中で、「ようやく掘り当てた!」という感動を味わったと言います。本当に打ち込めるものと出会えたとき、人は初めて心の底から安心できるのです。

また、こんな言葉も印象的です。「冷ややかで新しいことを口にするよりも、熱した舌で平凡な説を述べる方が生きている」。目新しさよりも、血の通った本音こそが人の心を動かすと、漱石は伝えています。これはプレゼンテーションやリーダーシップにおいても同じことが言えるでしょう。

「生き切る」覚悟はあるか

漱石は、生きること自体を真正面から見つめ、「満身の力を込めて現在に働け」と語ります。未来のために今を犠牲にするのではなく、「今ここ」に全力を尽くす──この姿勢は、結果主義に陥りがちな現代人にこそ響きます。

また、彼は「則天去私」(天に則り、私を去る)という考え方を紹介します。これは、自我にとらわれすぎず、自然や大きな流れに身を委ねて生きていくこと。個人の欲望や不安で右往左往するのではなく、大きな視野で人生をとらえることの大切さを教えてくれます。

「世の中」とどう向き合うか

現代社会は決してやさしい世界ではありません。漱石も、「社会は不正で人情のある敵」と述べています。それでも私たちは、この住みにくい世の中を、どれほどか“くつろげる場所”にして生きねばならないというのです。

「書斎で一人で力んでいるより、大天下に屁のような気焔をふきだす方が面白い」──これは、安全圏にこもって批評ばかりしていないで、リスクを取って世の中に関わっていけという呼びかけにも聞こえます。

ビジネスの世界でも同じです。批判ばかりする人よりも、不格好でも前に出て行動できる人が信頼されます。世間と闘いながらも、その中で「互殺の平和」を見出すのが、現代のビジネスパーソンの課題なのです。

「人のために泣ける」仕事をしているか

漱石は、「職業というものは要するに人のためにするものだと断言します。そして、「人のためになる仕事を余計するほど、それだけ己のためになる」とも。

近年、利他的な姿勢が経営においても評価されるようになりましたが、それは一時の流行ではありません。本質的な信頼や価値は、「人のために尽くす」中からしか生まれないのです。

加えて漱石は、「気に入らないこと、憤慨すべきことは山ほどある。でも、それを許す修養を積みたい」と語ります。衝突よりも寛容、怒りよりも共感──これは、チームマネジメントにおける成熟した態度とも言えます。

覚悟をもって、自分の道を進んでいるか

最後に漱石は、私たちに「覚悟」を問います。文学に命を懸けた彼は、「命のやり取りをするような烈しい精神でやりたい」と語ります。それが本職と思えるなら、いつまでかかっても構わない気がする──この強い情熱と粘りが、漱石という存在を後世に残したのです。

また、「自説が変わらないのは発達しない証拠だ」とも。これは、アップデートし続ける自己を目指せというメッセージです。変化に恐れず、時に方向を変えることも、覚悟の一部だといえるでしょう。


おわりに:漱石の言葉は、現代を生きる私たちの武器になる

漱石の言葉は、単なる文学的名句ではありません。生き方や仕事の本質に向き合い、自分自身を問い直すための武器です。

「あなたは本当に真面目ですか?」「あなたは本領を発揮していますか?」──この問いを、今日から自分の中に持ち続けてみてください。漱石がくれた“言葉”が、きっとあなたの人生に力を与えてくれるはずです。

 

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