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未来は予測ではなく「創る」もの—『エフェクチュエーション』思考のすすめ
「このままのやり方で、新しい事業は立ち上がるのだろうか?」
「予測不能な時代に、どこまで計画を信じて動くべきなのか?」
そんな問いを感じたことのあるビジネスパーソンに、ぜひ手に取っていただきたいのが、『エフェクチュエーション-優れた起業家が実践する「5つの原則」』(吉田満梨・中村龍太)です。
この本で紹介されている「エフェクチュエーション(effectuation)」とは、不確実性の高い状況において優れた起業家たちが自然に実践している共通の思考と行動の型です。特徴的なのは、目標から逆算するのではなく、「今持っている手段」を出発点にするというアプローチ。そこからできることを考え、現実的な可能性を柔軟に広げていくのです。
この考え方は、従来の「コーゼーション(Causation)」──つまり「目的を定めて、最適な手段を選ぶ」という合理的な逆算型の戦略とは異なります。コーゼーションが有効なのは、情報が多く、予測可能な市場環境において。一方、流動的で変化の激しい現代のビジネスシーンでは、むしろエフェクチュエーション的な柔軟性と即応力が問われているのです。
たとえば、既存市場に向けて新商品を投入するならコーゼーション的な思考が合っていますが、「新商品とともに市場そのものを創造する」ようなケースでは、まさにエフェクチュエーションが活きる場面です。
以下では、エフェクチュエーションの中核となる5つの原則を、現代ビジネスの現場に即して読み解いていきます。
目次
1.手中の鳥の原則──「いまあるもので」始める
「完璧な条件が整うまで動かない」のではなく、今この手の中にあるものをどう活かすかが起点になるのが、エフェクチュエーションの出発点です。
- 自分は何者か(Who I am)
- 自分は何を知っているか(What I know)
- 自分は誰を知っているか(Who I know)
これらを棚卸し、手持ちの資源で実験的に一歩を踏み出す。この思考法は、起業だけでなく、新規プロジェクト、社内改革、転職、キャリア転換などあらゆる意思決定に応用できます。
完璧を待たず、「やってみてから考える」姿勢こそが、変化の時代に適した実践力です。
2.許容可能な損失の原則──リスクは「賭ける」ものではない
多くの人が、「成功するならリスクを取らなければ」と思いがちですが、エフェクチュエーションでは損失の上限を決めておくという考え方を取ります。
重要なのは、「どこまでなら失敗しても大丈夫か?」を先に考え、その範囲で行動すること。これは無謀な挑戦ではなく、小さなリスクで大きな学びを得るための合理的な戦略です。
大きな成果は、小さな試行錯誤の積み重ねから生まれる。これを理解することで、「失敗が怖い」という心理的ハードルも下がります。
3.レモネードの原則──トラブルをチャンスに変える
「人生が酸っぱいレモンをくれたなら、レモネードを作れ」──これは米国の有名なことわざですが、エフェクチュエーションではまさにこのマインドが重視されます。
失敗やアクシデントが起きたとき、それを単に損失として終わらせるのではなく、そこから新たな価値を生み出せないか?と捉えるのです。いわば「リフレーミングの技術」です。
不具合から新商品が生まれることもある。予定外の人脈が新しい市場を拓くこともある。予期せぬ事態こそが、創造の起点になるのです。
4.クレイジーキルトの原則──多様な仲間を縫い合わせる
未来を予測するよりも、信頼できる仲間を巻き込むことの方が重要。これが「クレイジーキルト(継ぎ接ぎのパッチワーク)」の発想です。
起業家にとっての仲間は、顧客、競合、従業員、投資家…時にライバルでさえ未来を一緒に創るパートナーになり得ます。
誰が味方か、誰が敵かは後にならなければ分からない。だからこそ、共に動いてくれる「自発的な参加者」を見つけて対話を重ねていくことがカギとなります。
この原則は、企業内のプロジェクトでもまったく同じです。異なる立場の人たちを結びつける“つぎはぎの知恵”が、新たな展開を生むのです。
5.パイロットの原則──舵を握るのは「自分」
航空機の操縦士(パイロット)は、常に現状を確認しながら、目的地に応じて柔軟に進路を変えます。これが最後の原則「パイロットの原則」です。
未来は予測通りには進まない。でも、自分の舵取り次第で方向を変えられるという発想を持つことで、希望は生まれます。
エフェクチュエーションでは、「未来は予測するものではなく、創り出すもの」と考えます。自分がコントロール可能な範囲で、小さな行動を起こし続ける。するとやがて、大きな成果に結びつくのです。
まとめ:「決める前に、まず始める」思考法
エフェクチュエーションの5原則は、どれも「すべてが不確実な時代」における強力な行動指針です。
- 完璧な材料を待たずに始める(手中の鳥)
- 損失の上限を決めて行動する(許容可能な損失)
- トラブルは創造のタネになる(レモネード)
- 多様な人と手を組んで未来を創る(クレイジーキルト)
- 自らハンドルを握って舵を切る(パイロット)
「大きく構想して、小さく動く」──そんな柔らかくも芯のある思考法が、今まさに求められているのではないでしょうか。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
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弁護士 波戸岡光太
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