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『選ばれるプロフェッショナル』になるために、あなたは何を磨いていますか?
あなたの周囲に、「なぜかいつも信頼されている人」はいませんか?
あるいは、「この人にだけは相談したくなる」と感じさせるプロフェッショナル。
専門性や実績以上に、人が人を選ぶときには“目に見えない何か”が働いています。では、その“何か”とは何か──それを体系的に解き明かしてくれるのが、ジャグディシュ・N・シースとアンドルー・ソーベルによる著書『選ばれるプロフェッショナル』です。
本書は、コンサルタント、弁護士、会計士、コーチ、研究者など、いわゆる「プロフェッショナル」と呼ばれる職業の人だけでなく、あらゆるビジネスパーソンが「選ばれる存在」になるための条件を、実践的かつ深く掘り下げていきます。
以下では、特にビジネスの現場で求められる「7つの特質」を中心に、本書の内容を解説していきます。
目次
1. 無私と自立:クライアントを中心に据える力
プロフェッショナルとは、自分のために働く人ではありません。「クライアントの利益に集中しながら、個として揺るがない」──この両立こそが無私と自立の真髄です。
自立には3つの柱があります。
- 知的自立:周囲の意見に迎合せず、自分の考えを持つ
- 精神的自立:批判やプレッシャーに左右されない軸を持つ
- 経済的自立:報酬のために判断を曲げない余裕を持つ
依頼者の顔色を伺いすぎても、専門性に閉じこもっても、「選ばれる」存在にはなれません。
2. 共感力:語られない声を聴くスキル
優れたプロフェッショナルは、話を「聞く」のではなく「聴く」人です。
相手の言葉の背後にある感情や状況を読み取るには、以下の3つの側面からの共感力が必要です。
- 感情への理解:不安、怒り、期待など
- 思考への理解:何をどう考えているのか
- 状況への理解:相手が置かれている文脈
そしてそれを支える「自己認識」「傾聴力」「謙虚さ」。
このような態度を身につけた人は、言葉にならないニーズに気づき、相手の信頼を自然と集めていきます。
3. ディープ・ジェネラリスト:深く、広く、独自の知を編む
単なる専門家で終わらず、自分の専門を軸にしながら、周辺領域や異分野にも関心を持ち、知識をブレンドできる人──これが「ディープ・ジェネラリスト」です。
マッキンゼーの「T型人材」にも通じますが、本書が強調するのは以下の点です。
- 核となる知識を磨き続ける
- 周辺の知識を吸収する(業界、経営、文化)
- クライアント自身について学ぶ(個人や組織、価値観)
このような姿勢は、「ただの提案」ではなく、「クライアントの全体像を踏まえた洞察」へと昇華します。
4. 統合力:木を見て森を見る。森を見て木に気づく。
現場の情報に精通する一方で、本質的な課題や全体像を常に意識する力が、統合力です。
プロフェッショナルが取り組むべきは、単なる分析ではなく「統合」。つまり、
- クライアントの目的を深く理解する
- 複数の情報や視点をつなぎ合わせる
- 重要な問いを立てて、方向性を示す
ときに「答えを出す」のではなく、「答えが出る構造を一緒に見出す」ことが、信頼される助言者の役割です。
5. 判断力:迷いのなかで軸を持ち、決める力
正しい判断を下すには、単に知識や経験だけでは足りません。
- 不十分な前提
- 確証バイアス
- 自信過剰
- 集団思考
といった「意思決定の罠」に注意しつつ、
判断力 = 事実 × 経験 × 自分の価値観
という構造で、健全な意思決定を行う力が求められます。
優れたプロフェッショナルは、「どの判断にも価値観が含まれている」ことを理解しています。
6. 信念:自分の価値を信じる覚悟
クライアントの言うことが絶対だと思っていませんか?
本書ははっきり言います。「信念のないプロフェッショナルは選ばれない」と。
- 自分の考えに自信が持てない
- もっと経験を積んでから…と思っている
- 相手の方が立場が強い…と思い込む
これらはすべて、信念を損なう要因です。自分の価値観を持ち、それを言語化し、実践する。これが信念です。
7. 誠実さ:信頼は、毎日の小さな言動の積み重ね
信頼を築く方程式はこうです。
信頼 = 誠実さ × 能力 ÷ リスク
つまり、「誠実さ」こそが掛け算のベース。
優れた判断と一貫性を持ち、約束を守ること、期待をコントロールすること、ミスを認めることなど、誠実なふるまいを重ねることで、長期的な関係性が築かれます。
信頼を失うとき、クライアントは何も言ってくれません。
だからこそ、日常の小さな行動が重要なのです。
選ばれる人は、常に「自分を再構築している」
最後に、本書が伝える大切なメッセージをひとつ。
「選ばれるプロフェッショナル」は、自らの安心領域を抜け出し、新しい学びと経験へと踏み出していく。
それは、リベラルアーツ的な好奇心であり、内なる使命感であり、逆境を糧にする強さでもあります。
どんなに実績があっても、信頼されていたとしても、「自分を磨き続けること」をやめた瞬間に、選ばれなくなってしまう。
だからこそ、私たちは毎日、問い直さなければなりません。
あなたは、誰かにとって「選ばれる」存在であるだろうか?
そしてそのために、今日、どんな行動を取るだろうか?
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
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弁護士 波戸岡光太
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