あなたは「冒険」していますか?─『冒険の書-AI時代のアンラーニング』から学ぶ実践知

私たちは、いつの間にか「学ぶこと」を誤解していたのかもしれません。

成長し、社会人になり、職業人として知識やスキルを身につける過程で、「学び=義務」あるいは「学び=役に立つもの」と捉えてはいないでしょうか? しかし、その前提をいったん横に置き、“アンラーニング”という新たな冒険に出ることが、これからのAI時代を生き抜く鍵になるとしたら?

本書『冒険の書-AI時代のアンラーニング-』は、起業家・孫泰蔵氏が「学び」と「自由」、そして「自立」について投げかける挑戦状です。固定観念に満ちた「学び方」をいったん手放し、自ら問い、試し、遊びながら知を育む―そんな「野生の学び直し」を、現代のすべてのビジネスパーソンに呼びかける一冊です。

「教育」は誰のためにあるのか?

孫氏はまず、私たちが「教育サービスのお客さん」になってしまった現状を問題視します。教育とは本来、「生きること」そのものと一体のはず。それなのに、学校や塾、資格講座などが「知識の提供者」で、私たちが「受け取る側」になってしまった。

その背景には、教育制度そのものの構造があります。クラス、学年、科目、単元……こうした「システム」が、人と人の学び合いを断絶させ、子どもと大人が一緒に学ぶという本来の姿を遠ざけてしまったのです。

「基礎から学べばよい」は、本当か?

「何事も基礎が大事」。この言葉を疑ったことはあるでしょうか?

たしかに、基礎の積み重ねによって複雑な問題に対応できるという考えは、合理的に見えます。しかし孫氏は、そこに落とし穴があると言います。「基礎」というのは、そぎ落とされたエッセンスにすぎず、初心者にとっては抽象的で退屈。むしろ、「遊んでいるうちに、いつの間にかできるようになっていた」という感覚こそが、学びの本質ではないかと説きます。

私たちは、大人になってからも「とりあえず基礎本から読まなきゃ」と考えがちですが、実はそれがモチベーションを下げる原因になっているのかもしれません。

「過去に意味を持たせる」という心理

「あの時、あれをやっていてよかった」と言いたくなることがあります。

それは悪いことではありませんが、孫氏はここにもひとつの“トリック”があると指摘します。私たちは「過去の自分の行動に意味を見出したい」心理に駆られて、後付けで正当化してしまうことがある。過去の努力を肯定したいがために、「あれをやったから今がある」と信じ込みたくなるのです。

しかし、過去の自己肯定に引きずられすぎると、新しい可能性に対して柔軟に動けなくなる。この姿勢こそ、アンラーニングの最大の障壁だとも言えるでしょう。

「能力」は幻想? 統計に縛られない生き方

本書は「能力」という概念にすら疑問を投げかけます。

偏差値、IQ、TOEICスコア…。これらは「統計上の数字」に過ぎず、それがまるで絶対的な“実力”であるかのように信じ込むこと自体が、ひとつの「信仰」ではないかというのです。

AI時代において、本当に求められる力は、「枠組みを飛び越える力」や「問いを立てる力」かもしれません。計測できない創造性や行動力が、今こそ必要とされているのです。

「遊び」と「学び」は、本来ひとつだった

近代以降、学びと遊びは切り離され、「学ぶ=真面目」「遊ぶ=無駄」とされるようになりました。しかし孫氏は、遊びこそが最高の学びの場であると主張します。

そもそも、子どもたちは遊びながら自然と世界を知っていきます。大人も、心から没頭できることに出会ったとき、言われなくても自ら学び始めるはずです。ビジネスの現場でも、「遊び心のある仕事」が圧倒的に成果を出すことは珍しくありません。

学び-遊び=(つまらない)勉強
働き-遊び=(つまらない)仕事

この数式は、私たちの「やる気のなさ」の正体を、見事に言い当てています。

「依存しながら自立する」という逆説

そして最後に語られるのが、「自立とは依存先を増やすこと」という逆説的な考え方です。

一見矛盾しているように聞こえますが、実はこれは非常に本質的なメッセージ。特定の環境や人物、組織に依存するほど、そこから抜け出せなくなり、「不自由」になります。しかし、依存先を複数持てば、ひとつに縛られずに自分の足で立てるようになる。

これは、現代のビジネスパーソンにも重要な視点です。会社、上司、スキル、肩書――そういった「唯一の依存」に頼らずに、多様な選択肢を持ち、複数のつながりを築いておくことが、真の意味での自由をもたらします。

「アンラーニング」は、知のリセットではなく、再接続である

この本が提案する「アンラーニング」とは、単に「忘れる」ことではありません。これまでの知識をいったん解体し、新たな文脈で再び接続し直すこと。そして、そのプロセスは「遊び」と「冒険」に満ちた行為であるべきだ、という強いメッセージが込められています。

職場でも、学びの場でも、家庭でも。私たちが再び「冒険者」になることが、AI時代における最大の強みになるのかもしれません。

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