チームワークを発揮するために必要なこと-チームメンタルモデルとは-

ビジネスの現場では、個人の能力だけでなく、チームとして力を発揮することが求められる場面が増えています。特に現代の職場では、一人で完結できる業務は少なく、複数のメンバーが協働しなければ仕事が前に進まないことも多くあります。

では、どうすれば「チームワークがある状態」を実現できるのでしょうか。ただ「仲が良い」だけでは、十分な成果を上げることは難しいかもしれません。

チームワークは感覚ではなく「構造」である

よく「チームワークがいいね」という言葉が使われますが、実はチームワークは明確に構造化されたものとして捉えることができます。チームワークは大きく分けて「行動的側面」と「心理的側面」から成り立っており、両者が有機的にかみ合うことで、成果の出るチームが生まれます。

行動的側面:チームで何を「する」か

まず「行動的側面」とは、チームメンバーが実際にとる行動ややり取りを指します。たとえば以下のような活動が含まれます。

  • 業務の準備(目的の確認、計画の策定、情報共有)
  • 実際の協働(役割分担、進捗確認、バックアップ)
  • 問題の察知と適応(トラブルへの対応、改善行動)
  • メンタル面の支援(ストレスケア、対立の調整)

これらは「仕事中」だけの行動に見えますが、実際には業務の前段階の準備や、終了後のふりかえり、関係性の調整なども重要な要素です。仕事が始まる前からすでにチームワークは始まっており、終わった後にも続いています。

心理的側面:チームでどう「感じ」「信じる」か

一方、「心理的側面」は、メンバーが持つ認知や感情、信念の共有に関わります。以下のような概念が中心です。

  • チーム志向性:「自分のため」ではなく、「チームの成功のため」に貢献しようとする姿勢
  • チーム効力感:「自分たちはこの課題をやり遂げられる」というチーム全体の自信
  • チームメンタルモデル:お互いの役割、目標、状況への理解が共通している状態

この心理的側面がしっかりしていないと、いくら行動面で「手を動かして」いても、チームとしての方向性がブレてしまいます。逆に、心理的な土台がしっかりしていれば、少ない指示でも互いの意図をくみ取って協力しやすくなります。いわゆる「あ・うんの呼吸」も、実はこの心理的共有があるからこそ実現するのです。

チームメンタルモデルの力

特に重要なのが、チームメンタルモデルという考え方です。これは、チームの全員が、「どんな目標を目指し、誰がどんな役割を担い、何が今必要か」といった情報を共有している状態を指します。

このモデルがうまく構築されていないと、以下のようなズレが起きます。

  • 「やってくれていると思っていた」けれど、誰も手をつけていなかった
  • 「自分の担当ではない」と思っていたが、実は自分が動くべきだった
  • 相手の支援が遅れて、結果的に連携がうまくいかなかった

これらはすべて、メンバー間での理解の非共有によって引き起こされる問題です。逆に、共通の理解があれば、言葉を交わさずとも、必要なサポートや協力が自然に生まれるようになります。

スポーツのチームを想像すると分かりやすいでしょう。たとえばサッカーでは、選手がいちいち「パスするよ」「走って」と声をかけなくても、相手の動きを読んで瞬時に判断し合います。これは、お互いの動き方や得意なプレースタイルが事前に共有されているからこそ可能になるのです。

異質性があるからこそ「共有」が必要になる

ここで大切な前提として、現代の職場チームは多様性に満ちているということがあります。年齢、経験、価値観、スキル、役職……。チーム内のこうした「違い」が、連携の妨げになることもしばしばです。

だからこそ、あらかじめ心理的な共通理解を形成し、行動のパターンをすり合わせておくことが必要なのです。言い換えれば、「チームワーク」は自然に発生するものではなく、意図的に育て、デザインする必要があるスキルや構造なのです。

まとめ:チームワークは「育てるもの」

チームワークは「気が合う人たちが集まれば自然に発揮できるもの」と思われがちですが、実際はそうではありません。心理的な土台と、具体的な行動の積み重ねがあってはじめて、本当の意味での「協力」が生まれます。

ですから、チームをまとめる立場の人に求められるのは、行動面の整理(目的や役割の明確化、対話の場の設計)と、心理面の育成(信頼関係やチーム効力感の醸成)をバランスよく行うことです。

チームの力が最大化されれば、個人の能力の総和を超えた成果を生み出すことも可能になります。これは、どんなビジネスにも通じる本質的な力ではないでしょうか。

参考文献:『私たちはなぜ傷つけ合いながら助け合うのか: 心理学ビジュアル百科 社会心理学編

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