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私の悩みを開放する文豪小説の読み方―『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分らん。あの名作小説を面白く読む方法』から学ぶ実践知―
「話題の本を読んでみたい」「インプットの時間を取りたい」と思いつつも、忙しくて時間が取れない経営者の方に向けて、経営に役立つエッセンスと視点をお伝えする『良書から学ぶ、経営のヒント』。
今回ご紹介するのは『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分らん。あの名作小説を面白く読む方法』(三宅香帆)です。
みなさんは、日頃小説を読む機会があるでしょうか。そういえば、学生の時は読んでいたけど、最近小説はめっきり読まなくなったな、という方は多いかもしれません。今回、ご紹介するのは読書好きが高じて、書籍の楽しむ方法を伝授されている著者が、名作を気軽に楽しむ方法を書いた一冊です。
夏目漱石、芥川龍之介、川端康成など文豪が著した小説を一度は読んだことがあるけれど、正直なところ内容はよくわからないということありますよね。言い回しも言葉も現代と違うため読みにくく、数行でギブアップしたという声も聞こえてきそうです。社会人になってから読む本は仕事に役立つビジネス書ばかりという方が、けっこういらっしゃるのではないでしょうか。
「成功には秘訣がある」「賢い人が話す前に考えていること」など、ビジネス書はタイトルを見ればそこには何が書かれているか、何を得ることができる本なのかがわかるように作られています。読む前の段階で、書いてあることがわかるようになっているため、手にとりやすいでしょう。
対して、小説はタイトルに『舞姫』とあってもダンサーの話ではありませんし『ノルウェイの森』はノルウェイについて書かれている本でもありません。ビジネス書と異なり、タイトルから内容を推測することはできません。読み終えてはじめて、タイトルの意味を知るというのは小説の味わいのひとつなのですが、私たちは大人になるにつれ味わって読む時間がない、タイムパフォーマンスよく役に立つ情報を得たいなど、さまざまな理由から小説から離れる傾向にあります。
小説を読むことにハードルを感じるようになった方、そもそも小説を読んだことがない、読み方がわからないという方まで、本書から小説を楽しむ方法を見出していきませんか。
目次
小説は悩んだときに読むもの。悩まなければ積ん読してもいい
タイトルのつけ方ひとつとっても全く違うように思えるビジネス書と小説ですが、実は人生の「悩み」を扱っているという点で大きな共通点があります。
悩みの答えを明確に出すのがビジネス書、答えは出さずに読者に解釈を委ねるのが小説です。さらに、小説は答えどころか、悩みそれ自体も明確には言語化しません。同じ小説を読んでも、受け取り方は人によって様々。そのため小説はあえて悩みを明確にしすぎないことで、悩みに対して誠実であろうとしているのだと著者は述べています。
今の自分の悩みとリンクしない場合には、無理に読み進めないでOK。積読してもよいと自分に許可することがおすすめの小説の読み方だそう。小説は描かれている内容が、今の自分の悩みと一致したときに、読めばよいのです。
あらすじを先に読んでいい
小説を気軽に楽しむ読み方の技は「あらすじを先に読む」ことです。
悩みに対して誠実に向き合うのが小説であって、あらすじを追うことに必死にならなくてよいと著者は言います。小説が叫ぼうとしているものやセリフに込められた感情を味わうためには、あらかじめ内容の大筋を知っておき、ゆとりを持って読むことをすすめています。
好きな翻訳者や文体をみつけて楽しむ
海外の小説の場合、小説が読者に与える印象は翻訳者によって大きく異なります。理解し難いと感じる海外小説であっても、翻訳者を変えて読んでみたら楽しめたということがあるのです。自分に合う翻訳者を探すのは、小説を楽しむ技のひとつです。よくわからない小説だと読了を諦めてしまう前に、翻訳を変えてトライしてみましょう。
前提をわかったうえで楽しむ
解説本を読むのもおすすめです。『吾輩は猫である』であれば、漱石の生きた時代、漱石の経歴も含めた小説の背景を先に理解することで、理解力が一気に高まり、とっつきにくさが軽減されるでしょう。背景を知ることで、漱石は当時どういう心境だったのか想像し「教師を辞めて精神的にまいっていただろうから、ここは苦労して書いているな」「『自分ではない語り手(猫)』に話させることで筆が乗っているな」と、作者の心情とリンクさせて読むことができるかもしれません。
小説はまだるっこしいもの
「お姉ちゃんはあざみ色のドレスをきて、髪に白いバラの花を飾っていた。きれいだったけど、でもそんなの、うそっぽいと私は思った。コーンスープとか、エビとか、ほたて貝とか、ごちそうがいっぱいならんでいたけどおいしくなかったのとおんなじ(江国香織『綿菓子』より抜粋)」
例えばこんなふうに、小説は情景や心情を細やかに表現します。繊細に表現を重ねながら展開するスピードにもどかしさを感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、小説とはもどかしいものなのです。次々と展開するジェットコースター的享楽を求めるのではなく、観覧車に乗るようにゆっくりと楽しんでもらいたいと思います。
多重人格になれる楽しみ
本来、私たちの中にはいくつもの人格が存在しています。しかし、日常の中では「家庭人」「仕事人」など限られた人格しか用いられておらず、出番のない自分の中の様々な人格を開放できる場所が小説の世界なのだと著者は述べています。
例えば、思春期の青年や、裕福な老人、貧しい若者など、小説の登場人物の気持ちに共感するとき、私たちの中で普段とは違う人格が出現し、共鳴しています。小説を読むことで、現実には出番のない人格が引き出されるのです。眠っている人格を呼び覚まし、呼吸させてあげることは、自分の枠を開放する癒しであり、小説の大きな楽しみ方と言えるでしょう。
「時間がない」「まだるっこしい」「実用的でない」大人になった私たちが小説を読む際に生じるいくつもの障壁の超え方を教えてくれる本書。小説は私たちの人生の課題に誠実に向き合ってくれているものだとわかると、今の自分の悩みに一致する小説を手に取ってみたくなりませんか。
【良書からこの視点】
自分の悩みを投影している小説を見つけて、共感しつくそう
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。
私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。
経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
2024年12月、本を出版いたしました。
新作著書『弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル』を出版いたしました。
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経営者に伴走する弁護士が、本音で対話できるパートナーであってほしいです。
本書では、経営者に寄り添う弁護士が身につけるべきコミュニケーションのヒントを数多く解説しています。
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弁護士 波戸岡光太
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