リーダーだけでは組織は動かない ー フォロワーシップの力を見直すとき

「あなたのチームを支えているのは、誰ですか?」

この問いに「リーダーです」と答える方は多いでしょう。もちろん、リーダーの役割は非常に重要です。ビジョンを掲げ、方向性を示し、チームを鼓舞する存在としてのリーダーは、組織における要として注目されがちです。

しかし、本当にリーダーだけで組織が動いているのでしょうか?

現場で目標を実現し、実務を遂行しているのは、他でもない「フォロワー」の存在です。にもかかわらず、ビジネス書や研修では「リーダーシップ」が語られる機会が圧倒的に多く、「フォロワーシップ」はあまり光を当てられていません。本稿では、このフォロワーシップに焦点を当て、組織を支える“もう一つの力”について考察します。

リーダーシップの幻想と見落とされがちな力

「会社の業績が良いのは社長のリーダーシップのおかげだ」「チームがうまくいかないのはマネージャーの力不足だ」

こうした言葉を耳にしたことはないでしょうか。これは、心理学者ジェームズ・マインドルが指摘した「リーダーシップの幻想(Romance of Leadership)」に通じます。組織の成果や失敗の原因を過剰にリーダーに帰属させてしまう認知バイアスです。

実際には、組織を前進させているのは多くの無名の努力―すなわち、フォロワーの存在です。たとえば、ビジョンを共有し、現場でそれを具体化する社員や、リーダーの意図を的確にくみ取り、業務改善の提案を行う中堅スタッフなどがそれにあたります。

ロバート・ケリーの研究によれば、組織のパフォーマンスに与えるリーダーの影響はわずか20%程度であり、残りの80%はフォロワーの貢献にあるとされています。つまり、どれほど優れたリーダーであっても、フォロワーの働きがなければ組織は成果を出すことはできないのです。

フォロワーシップとは何か?

では、フォロワーとは単なる「上司の指示に従う存在」なのでしょうか?

答えは「否」です。フォロワーは受け身ではなく、時には自らの意見や疑問を提示し、リーダーの意思決定に影響を与える主体でもあります。フォロワーシップとは、「リーダーのビジョンを支援しつつも、自らの考えを持ち、集団やリーダーに積極的に関与し影響を及ぼす行動や姿勢」です。

リーダーとフォロワーは単なる主従関係ではなく、相互作用による関係性です。リーダーの働きかけにフォロワーがどう反応するか、その反応を受けてリーダーがどう次の一手を打つかという、双方向のやりとりによってチームが進化していきます。

フォロワーの5タイプ-ケリー・モデルに学ぶ

フォロワーにもタイプがあります。ロバート・ケリーは以下の5つに分類しました。

  1. 模範型フォロワー
    自らの考えを持ち、リーダーとも積極的に関与。建設的な意見も恐れず述べる理想的存在。
  2. 孤立型フォロワー
    自分の意見は持っているが、組織やリーダーには関与せず発言も控えるタイプ。
  3. 順応型フォロワー
    いわゆる「イエスマン」。リーダーに依存し、批判的な視点を持たない。
  4. 消極型フォロワー
    指示待ち型。自発性や意見が乏しく、受動的に日々を過ごす。
  5. 実務型フォロワー
    一定の意見は持ち、業務はそつなくこなすが、組織やリーダーへの関与は最小限。

組織が健全に機能するためには、模範型フォロワーの存在が欠かせません。彼らは、リーダーを支えるだけでなく、時にブレーキをかける役割も担います。これは、リーダーが自分の判断を過信しすぎることを防ぐ大切な役割です。

なぜ「勇敢なフォロワー」が必要なのか?

近年、破壊的リーダーシップ(Destructive Leadership)が組織に与える悪影響が注目されています。これは、リーダーが権力を濫用し、組織の倫理や健全性を損なう行動を取る現象です。

この背景には、リーダーの機嫌を取り、意見を言わずに従う「依存的フォロワー」の存在があります。こうしたフォロワーが多いほど、リーダーは自らの判断に疑問を持たなくなり、組織は独善的な方向に進みかねません。

逆に、勇敢なフォロワーがいる組織は健全です。リーダーが間違った方向に進もうとしたとき、「それは違うのでは」と建設的に意見を述べる存在がいるからです。

まとめ:私たちは、誰かを支え、誰かに支えられている

フォロワーとは、単なる「部下」や「指示を受ける人」ではありません。組織を支え、リーダーを支えるパートナーです。私たち一人ひとりが、リーダーにもフォロワーにもなる時代において、「どのようなフォロワーであるか」を考えることは、実はリーダーシップを考えることと同じくらい重要です。

模範型フォロワーを育て、組織に根付かせることこそ、持続可能でしなやかなチームをつくる鍵なのです。

参考文献:『私たちはなぜ傷つけ合いながら助け合うのか: 心理学ビジュアル百科 社会心理学編

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