経営戦略で幸せな人生をプロデュースする―『人生の経営戦略―自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』から学ぶ実践知―

「話題の本を読んでみたい」「インプットの時間を取りたい」と思いつつも、忙しくて時間が取れない経営者の方に向けて、経営に役立つエッセンスと視点をお伝えする『良書から学ぶ、経営のヒント』第15回、ご紹介するのは『人生の経営戦略―自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』(山口周)です。

20年以上コンサルティング業界に従事した山口周氏が、コンサル業で培った経営戦略を人生に応用し、より幸せにいきるための戦略として紹介している本書。人生をひとつのプロジェクトと見たとき、最も大切なのはウェルビーイングを根源的な目標に定めることだと山口氏は言います。いつ余命宣告をされても「自分らしい、いい人生だった」と思えるためのヒントを見ていきましょう。

ウェルビーイングを人生の目的にして、筋のよい自己投資をする

ウェルビーイングは、自己効力感(これでいいのだという感覚)があり、社会的つながりや経済的安定を有しているときに感じることができます。私たちは「いつか幸せになりたい」と考えがちですが、本心は「いつか」ではなく「いつも」幸せでいたいですよね

「いつも幸せ」と感じられることこそウェルビーイングな状態ですが、そこにはどようにたどり着けばよいのでしょうか。ウェルビーイングにつながる4つの要素(資本)を見てみましょう。

【ウェルビーイングを導く4つの資本】

「時間資本」

「人的資本(スキル、知識、経験)」

「社会資本(信用・評判、ネットワーク、友人・家族)」

「金融資本(現金、有価証券、不動産)」

この4つの資本を満たしていくことで、人はウェルビーイングを感じます。そして、私たちは、この中の「時間資本」の配分を正しく行うことで、そのほかの資本を充実させていくことができます。

つまり、人は、知識やスキル(人的資本)を習得していく中で、人とのつながりが生まれ、信用や評判(社会資本)を得られるようになります。そして、社会資本を充実させていくことが、金融資本を得ることにつながります。

自分のスキルアップを飛ばして「人脈を作らなければ」と異業種交流会に時間を割いてもうまくいきませんし、人脈や信頼といった社会資本の裏打ちなくして金融資本を増やすことはできません。闇雲に時間を投資せず、順を経た筋のよい自己投資が大切です。

人生のライフサイクルカーブを意識する

商品や企業は「導入→成長→成熟→衰退」という春夏秋冬のサイクルを描くと言われています。このライフサイクルカーブを人生に当てはめて人生の春夏秋冬をとらえ、長期的かつ合理的に眺めてみることはウェルビーイングを掴むひとつの方法です。

【人生の春夏秋冬】

・春(~20代)「試す」時期:夢中になれるものを見つける。自分の得意不得意を知る

・夏(30~40代)「築く」時期:密度の高い仕事でスキルを磨く、人脈を築く

・秋(50~60代)「拡げる」仕事のポートフォリオを持ち、機会を譲り、人を育てていく

・冬(70代~)「与える」更新の活動を支援する。人と人をつなぐ。

自分は今どこのステージにいるのだろうと考えることで「合理的なふるまい」を見つめることができます

すでに人を育てる秋のステージにいるのに、自分のことだけに集中するなど、まだ夏のステージの行動をとり続けていたと気付いたら、今の役割にふさわしい行動に切り替えることができるでしょう。

逆に自分はまだ「築く」時期だったとわかることで、慌てて拡大するよりも着実なスキルアップをはかればいいと落ち着くことができるかもしれません。人生のステージと共に変遷する役割を俯瞰してみるとウェルビーイングな人生への道のりが見えてくるのではないでしょうか。

自分のリソースに合った仕事を決める

幸せな人生を考えたとき「仕事の選択」も外すことはできない要素です。そこで大切なことの一つは「ポジショニング」を考えること。レッドオーシャンの勝てない市場でいくら頑張っても芽がでることはありませんし、どんなに能力や知識を磨いても、そこに需要がなければ発揮することができません。しかるべき時に、しかるべき場所にいること(ポジショニング)は、価値ある仕事を見つけるための大切な考え方です。

さらに、ウェルビーイングな選択のヒントとなるのが「リソース・ベースド・ビュー」と呼ばれる経営理論です。企業の競争力は、独自の資源や能力で決まるという「リソース・ベースド・ビュー」理論を人生にあてはめ、自分だけの強み」に着目します。

強みと言われても思いつかないというときには、「長く続けてきたことは何だろう」と問いかけてみてください。「暇さえあれば本を読んでいる」「武道歴20年以上」「部屋はいつでも整理整頓された状態に保てる」など、長く続けられてきたことは他の人間には真似できないあなただけのリソースです。自分のリソースを明確にした職業選択は自分らしい生き方につながるでしょう。

学び、そして成長をとめるな

自分らしい仕事を見つけられた後も、学び続け成長し続けることが大切です。

「学ぶ」とはそれまでの「当たり前」に新たな変化が起こること。予測しなかった出来事に遭遇した際、これまでしたことのない乗り切り方を習得するなど、新しい経験の中にこそ学びと成長があるのです。

実は「うまくいってる」と思うときは、予測可能な状況にいるだけで、学びが停滞しているという場合もあるので注意が必要です。予期せぬ事態でヒヤヒヤするのはしんどいものですが、コンフォートゾーンを抜けた経験には、たくさんの学びと成長がつまっていることは確かです。

「無理かもしれない」と思うことを乗り越えられたときには高い充足感に満たされますよね。それこそがウェルビーイングな状態です。良質な学びを得られる機会を積極的に作っていきましょう。

【良書からこの視点】

人生の目的をウェルビーイングに置いて、時間を人的資本に配分することから始めよう

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
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