脳を熟知するものがよりよき人生を生きられる⁈―『BRAIN一流の頭脳』『最強脳』『スマホ脳』『多動脳』から学ぶ実践知― 

「話題の本を読んでみたい」「インプットの時間を取りたい」と思いつつも、忙しくて時間が取れない経営者の方に向けて、経営に役立つエッセンスと視点をお伝えする『良書から学ぶ、経営のヒント』。今回ご紹介するのは『BRAIN一流の頭脳』『最強脳』『スマホ脳』『多動脳』(アンデシュ・ハンセン)です。

片づけ脳、欲しがる脳、強運脳など、脳の働きについて書かれた書籍をあげ始めると枚挙にいとまがありません。世界で脳ブームが続く中、スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン氏の『BRAIN一流の頭脳』は人口1000万人のスウェーデンで60万部という大ベストセラーとなり、同氏の書籍は日本でも人気を博しています。『スマホ脳』は日本でも2021年ベストセラー新書として話題となりました。

脳のエキスパート、ハンセン氏の書籍から、脳の基本的な働きと現代社会の課題と脳との関連を「ドーパミン」「スマホ」「ADHD」3つの視点から見ていきます。

AI時代も脳は狩猟時代のまま

そもそも人間の脳は、ITやIAなどデジタル機能が目まぐるしく発達した現代でも、いまだに人類が誕生したときのサバンナに生きる「サバンナ脳」のままと言われています。

人類の誕生を0時0分0秒とした時計に、現代にいたるまでの進化の事象を当てはめてみると、狩猟や農耕が始まったのは23時40分、産業革命は23時59分40秒、デジタル化、PC、ネット、スマホ時代に至っては23時59分59秒の出来事にすぎません。

この数世代の社会の変化は、それまでの何百万年もの膨大な時間と比べて、20秒から1秒前に起きた出来事なのです。長い歴史の中のわずか数秒前から始まったデジタル時代に身体は未だ適応できず、脳は数百万年してきたサバンナを生き抜く仕組みから抜け切れていないというわけです。

「サバンナ脳」は何とかして獲物を捕まえて自分の栄養にする、危険を察知したら闘う、そして身を守るといった狩猟的な働きをします。「この獲物を逃したら、数日間食べ物にありつけない」と脳が思うと「何としても今カロリーを摂取したい」という気持ちが高まり、ドーパミンが大量に分泌されます。 

サバンナで生きていた人類はカロリーと、それを得るための脳に必要なドーパミンを渇望していたのですが、現代では簡単に白砂糖によって高カロリーの摂取と、スマホによって多量のドーパミン分泌ができるようになりました。簡単にかつ無尽蔵に手に入るようになっても、なお私たちの脳はよりおいしいもの、より楽しい刺激をと、カロリーとドーパミンを欲しがり続けます。これは「いま得ておかないと」という危機感を感じるサバンナ脳から抜け切れていない証拠なのです。

ドーパミンが衝動性を発動させる

ドーパミンは満足感を感じるために行動を促し、集中すべき行動を選択させる働きがあります。時間をかける価値があると思うと脳の報酬系が活性化し、ドーパミンのレベルが上がります。反対に価値がないと判断するときにもドーパミンが分泌され、何か別のおもしろいものを探したい衝動にかられるのです。

退屈を感じるとついスマホに手を伸ばしてしまうのは「いい情報を得られるのでは」「楽しいことがあるのでは」と脳が報酬を期待するからです。すぐに退屈してしまい、もっともっとと欲しがる人は、「何かいいことがあるから、やり続けてみよう」という脳の報酬系が鈍く、ADHDの人はこの傾向にあると言われています。

人間を進化させたのはADHD脳

ADHDの特徴として「集中力がない」「多動」「衝動が抑えられない」などが挙げられます。しかし、こうした特性はADHDの人たちだけのものではなく、程度は違えど誰もが持っている要素だと言えます。「今日は全然集中できない」「あれもこれもしてみたい」「じっとしてられない」「動衝買いしてしまった」ということ、ありますよね。ADHDというレッテルを貼ることや薬があることで、障害や病気のようにとらえられがちですが、 実は誰しも ADHDが包括する特性ゾーンに入っている可能性があるのです

死が隣り合わせだったサバンナでは、危険が迫ったことに気が付けるよう集中しすぎないことが大切でした。また、じっとしていられない多動性、思い立ったが吉日と動き出す衝動性があったために人類は移動を繰り返し、発展してきたのも事実です。人類はADHD脳だったからこそ生き残り進歩することができたのです。

スマホ脳にストップをかけるのは前頭葉

衝動性こそ人類を発展させた、とはいえ衝動だけで行動していると落ち着きがない人になってしまうため、行き過ぎた衝動を抑制すべく前頭葉が発達してきました。「飽きてきたな」「他に新しい楽しみを見つけたい」とドーパミンが出てきても、そこをぐっとこらえ継続させるのが前頭葉です。そして、前頭葉の発達は人間の中で一番最後と言われています。

中高生がスマホを見て止まらなくなるのは、前頭葉の発達が一番遅く、思春期であってもまだ未発達だからなのです。テクノロジー時代だからと小さな子どもにスマホを与えてしまうのは危険という理由がよくわかりますね。テクノロジーを扱えるかどうかは、前頭葉の発達次第。依存や睡眠障害、やる気の低下などスマホ脳によって起こる様々な障害を防ぐために、前頭葉が発達するまでスマホは与えないというくらいにゆったりと構えることが大切です。

ぼんやり脳はクリエイティブ

ぼーっとしていることを注意された経験がある方は多いかもしれません。無駄な時間を過ごしていると思われて注意を受けるわけですが、実はぼんやりしているときには脳のある部分は非常に活発に活動しているのです。ぼんやりモードのときこそ、脳は非常にクリエイティブな状態にあると言われています。ADHDの人は切り替えが難しく、一度ぼんやりモードに入ると何度促されても能動的な行動に切り替えることができません。しかしながら、ぼんやり状態を抑制しないからこそ、ADHDの人は非常にクリエイティブでいられるのです。

現代の教室や会社の中では生きづらさを抱えることが多いADHD脳ですが、脳の働きから見てみると、 ADHD脳こそが人類を生きながらえさせてきた根源的な脳であり、新しいものを生み出す脳であることがわかります。そして誰もが、その要素をもっているのですね。脳から自分を知ることができる一冊です。

【良書からこの視点】
脳は急には変われない。自分の中のサバンナ脳を感じてみよう。

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