「一方のみに有利な契約条項」の限界-契約リスクをどう減らすか-

契約交渉の場では、「できるだけ自社に有利な条項を盛り込みたい」と考えるのは自然なことです。しかし、現実には一方的に有利すぎる契約条項は、いざ裁判になったときに効力を否定される場合があります

「契約書に書いてあるから安心」という発想は危険です。裁判所は契約条項を尊重しつつも、その内容が社会通念や公正さを著しく欠く場合には、無効や制限を認める判断を下すことがあります。経営者としては、この「限界」を理解しておくことがリスク管理に直結します。

契約条項の効力にも“限界”がある

民法や消費者契約法、独占禁止法などの法律は、契約自由の原則を認めながらも、一定の制約を設けています。

・一方に著しく不利である
・消費者や弱い立場の当事者を不当に縛る
・公序良俗に反する

このような場合、契約書に署名していても裁判所が「効力なし」と判断するのです。つまり、一方的に強い立場を利用した契約は、必ずしもあなたを守らないということです。

ケーススタディ:高額な違約金条項

あるフランチャイズ契約で、加盟店が途中解約した場合に「売上の5年分を違約金として支払う」と定められていました。実際に加盟店が経営難で解約を申し入れると、本部は契約条項を根拠に高額な違約金を請求しました。

しかし裁判所は、「違約金額が合理的な範囲を超えており、加盟店の自由を過度に制約している」として、この条項を公序良俗違反により無効と判断しました。結果、本部は違約金を満額では回収できず、かえって信頼関係や評判にも悪影響を及ぼすリスクを負うこととなりました。

この事例が示すのは、契約書に書いてあるからといって必ずしも通用するわけではないという現実です。

一方的な契約条項が招く3つのリスク

1.裁判で無効化されるリスク
→ 条項が効力を持たず、当初想定したリスク分担が崩れる。

2.取引先との関係悪化
→ 相手に「不公平な契約を押し付けられた」と感じさせ、信頼関係を損なう。

3.社会的評価の低下
→ 消費者や取引先から「不当な契約を結ばせる会社」というレッテルを貼られる可能性がある。

経営者が取るべき対応

➤公平性を意識する
条項を設定する際には、「第三者が見てもフェアな取引といえるか」を基準にする。

➤裁判例を学ぶ
自社の契約が過去の裁判例で否定されたパターンに似ていないかを確認する。

➤代替案を用意する
違約金や損害賠償の定めは「上限額を明確にする」「合理的な算定方法を示す」など調整を行う。

まとめ

一方的に有利すぎる契約条項は、裁判で無効とされる可能性があるばかりか、取引関係や企業の評判まで損なうリスクを持ちます。経営者に求められるのは、「書いてあるから安心」ではなく、「合理的で持続可能な契約かどうか」という視点です。

契約リスクを減らすには、短期的な有利さだけにとらわれず、長期的に信頼される条項づくりを重視したいです。

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