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経営者が直面する”もめごと”への対処法を弁護士が解説します
目次
《中小企業経営者は社内外のトラブルと常に隣り合わせ》
中小企業の経営者は、日々、数多くの判断を迫られています。
事業の方向性、人の配置や評価、取引先との関係、将来への投資判断…どれも経営にとって欠かせないテーマでありながら、ちょっとした認識のズレや伝え方の違いから、「もめごと」に発展する可能性を常に抱えています。
大企業であれば、制度や組織、複数の部署があるので、そこでの問題にとどめることもできるでしょう。
しかし中小企業はそうはいきません。経営者と従業員、役員同士、取引先との関係が近い分、問題がダイレクトに経営者を直撃し、「人と人」の衝突として表面化しやすいのが実情です。
また、中小企業では経営者自身が現場に関わるため、判断に感情が入りやすくなります。その結果、理屈では整理できるはずの問題が、感情の行き違いによって複雑化し、長期化してしまうことも少なくありません。
「できれば揉めたくない」
多くの経営者がそう感じながらも、気づけば問題がこじれている…。
これは決して特別なことではなく、真剣に経営に向き合っているからこそ起こる、必然の現象とも言えます。
《中小企業経営者が揉めがちな社内外トラブルの典型例》
1.共同創業者との経営方針を巡る対立
創業当初は、同じ理想や情熱を共有していたはずでも、事業が成長するにつれて、立場や見える景色は少しずつ変わっていきます。「どのタイミングで投資をするのか」「どこまでリスクを取るのか」といった判断で、徐々に温度差が生まれることは珍しくありません。
たとえば、成長スピードを最優先したい創業者と、足元の利益や財務の安定を重視したい共同創業者との間で、意思決定のたびに小さな違和感が積み重なっていくケースです。最初は「考え方の違い」程度だったものが、人材採用や資金投下、事業拡大の局面で次第に表面化します。
特に厄介なのは、共同創業者同士の関係では、上下関係が曖昧なまま進みやすい点です。「言いづらい」「関係を壊したくない」という思いから、違和感を言語化しないまま時間が経ち、後から修復が難しくなることも少なくありません。
「そのうち分かってくれるだろう」と放置してしまうと、経営判断のたびに不信が積み重なり、最終的には事業そのものより、人間関係の問題が前面に出てしまうことがあります。
2.管理職との権限を巡る摩擦
幹部や管理職に対して、「期待している成果」と「本人の認識」にズレがあるケースは非常に多く見られます。また、権限の範囲が曖昧なまま仕事を任せていると、判断を巡って衝突が起きやすくなります。
ある小売業では、経営者は「売上を伸ばしてほしい」と考えていた一方、店長は「人手不足の中で現場を回し、離職を防ぐこと」を最優先していました。評価基準が言語化されていなかったため、経営者は「なぜ成果が出ないのか」と不満を募らせ、店長は「なぜそこまで口を出されるのか」と反発するようになっていきました。
このようなケースでは、どちらかが怠けているわけではありません。何をもって“成果”とするのかが共有されていないことが、摩擦の根本原因です。
評価基準や権限の範囲が曖昧なままだと、小さな不満が積み重なり、やがては報告が減る、相談がなくなるといった形で、信頼関係にヒビが入ってしまいます。
3.従業員との処遇に関するトラブル
残業、在宅勤務、柔軟な働き方を巡る問題は、近年とくに増えています。経営者の「もう少し頑張ってほしい」という思いと、従業員の「これ以上は限界」という感覚が、すれ違いやすいテーマです。
たとえば、在宅勤務を制度として認めているつもりでも、在宅勤務を選んだ従業員が「評価や昇進で不利になるのではないか」と感じているケースがあります。
制度上は平等でも、運用や雰囲気によって、従業員が不安を抱いてしまうのです。実際に、そうした不安が社内に広がり、「頑張っても評価されない」という空気が生まれ、退職者が続いた例もあります。
特に、退職や配置転換は、本人のキャリアや生活に直結するため、感情が非常に強く動きやすい場面です。
ここでは、「法的に問題がないか」だけでなく、なぜその判断なのかをどう伝えるか、どのように納得感を作るかが重要になります。
4.取引先との契約条件・追加対応を巡るトラブル
口約束や曖昧な合意が、後から問題になるケースは非常に多く見られます。
「そこまでやらされるとは思っていなかった」「そんな条件は聞いていない」という言葉が出たら、すでに認識のズレが顕在化しているサインです。
特に多いのが、契約書には明記されていないものの、これまでの慣習で無償対応してきた業務について、担当者が変わった途端にトラブルになるケースです。「今まではやってくれていた」という不満から始まり、次第に他の面でも不信感が高まっていきます。
契約書があること自体は重要ですが、書面と実際の運用がズレたまま放置されていることが、後から大きな問題になります。曖昧さを残したまま関係が続くほど、トラブルは大きくなりがちです。
5.価格や支払条件の交渉で起きる対立
原価上昇や経営事情による価格改定は、避けて通れない局面です。
しかし、伝え方を誤ると、一方的な通告だと受け取られ、長年築いてきた関係性が一気に悪化することもあります。
価格改定そのものよりも、「なぜ今なのか」「どこまで理解してほしいのか」が共有されていないことが、対立の原因になることが多いです。合理的な説明をしたつもりでも、相手が「切り捨てられた」と感じてしまえば、感情面で強い反発を招きます。
このテーマは、単なる数字の話ではありません。取引をどう続けたいのか、どのような関係を維持したいのかという、信頼の話でもあります。数字だけを前面に出すと、関係性の修復が難しくなることもあります。
6.クレーム・トラブル対応における判断のズレ
クレーム対応では、現場と経営者の判断が食い違いやすくなります。
現場は「すぐに謝罪して収めたい」と考え、経営者は「前例を作りたくない」「簡単に非を認めたくない」と慎重になります。この判断のズレによって対応が遅れ、相手の感情がエスカレートしてしまうケースは少なくありません。時間が経つほど、事実関係よりも感情が前面に出てしまいます。
「誰が判断するのか」「どこまで現場で対応するのか」を決めていないと、初動対応はどうしても後手に回ります。
クレーム対応では、最初の一手がその後の展開をほぼ決めると言っても過言ではありません。
7.事業承継・後継者問題での社内対立
親族、古参幹部、後継者、それぞれの思惑が交錯しやすいテーマです。
正しさや理屈だけでは整理できず、感情やこれまでの歴史が深く絡み合います。
たとえば、後継者が親族である場合、周囲は表向きは受け入れていても、内心では「なぜあの人なのか」「自分たちの貢献はどう評価されるのか」といった思いがくすぶりやすくなります。
逆に、親族以外の後継者を立てる場合でも、「古参幹部が納得しない」「親族が反発する」など、別の火種が生まれます。
「誰のための承継なのか」という視点を失うと、表立った対立がなくても、社内の分断が静かに進んでしまうことがあります。
だからこそ、承継は“人事”ではなく、“経営の設計”として、役割・権限・将来像を早めに組み立てていくことが重要です。
8.M&A・業務提携の最終局面での認識違い
条件の詰めの段階で、信頼関係が揺らぐことは珍しくありません。
数字や契約条件だけでなく、「本当に大丈夫なのか」「今後の関係性をどう考えているのか」といった、言語化しづらい部分が原因になることもあります。
とくに最終局面では、当事者の意識が「合意」から「防衛」へ切り替わりやすいのが特徴です。譲歩したくないポイントが明確になる一方で、相手の態度や対応のスピードに不審や疑問を感じてしまい、ネガティブな感情が膨らむことがあります。
M&Aや提携は、契約で終わりではなく、そこからが始まりです。
だからこそ、数字の整合性だけでなく、“統合後の現実”を具体的にすり合わせることが欠かせません。
9.顧問弁護士・専門家との期待値のズレ
「もっとやってくれると思っていた」「もっと早く動いてくれると思っていた」
役割やスピード感の認識がズレると、不満につながりやすくなります。
専門家との関係でも、最初の期待値のすり合わせは欠かせません。
このズレは、専門家側の能力の問題というより、“依頼の前提”が共有されていないことで起こることが多いです。たとえば、経営者は「状況を察して先回りしてほしい」と期待している一方で、専門家は「相談が来たテーマに助言する」という立ち位置で動いている、という違いです。よくあるのは、次のような場面です。
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緊急度の認識:経営者は「今日中に方向性がほしい」、専門家は「事実確認に時間が必要」
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役割の認識:経営者は「交渉や実務の段取りまで含めて伴走してほしい」、専門家は「法的判断と文案提示が中心」
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情報提供の認識:経営者は「必要情報は察して聞いてほしい」、専門家は「判断材料が出ないと動けない」
こうしたズレは、放置すると「頼みにくい」「相談しても意味がない」という感覚につながり、結果として本来防げたはずのトラブルが大きくなることもあります。
だからこそ、最初に「何をどこまで」「どのスピード感で」「どの手段で」支えるのかを言葉にしておくことが、関係を良くする近道です。
《トラブルが起きたとき、経営者が取るべき対処法》
1.「誰が正しいか」より「なぜズレたか」を整理する
トラブルが起きると、どうしても「どちらが正しいのか」に意識が向きがちです。
しかし、多くの場合、問題の本質は善悪ではなく、認識のズレにあります。
何を期待していたのか。どこで理解が食い違ったのか。どの情報が共有されていなかったのか。
それを丁寧に言葉にすることが、解決への第一歩です。
「言った/聞いてない」の争いは、結局、勝ち負けでは収まりません。
ズレの原因を見える化し、再発防止まで含めて整理できるかどうかで、もめごとは“前に進む話”になります。
2.感情と理屈を切り分けて考える
感情的な納得感と、法的な正しさは必ずしも一致しません。どちらか一方だけで判断すると、問題は長期化しやすくなります。
特に人間関係のトラブルでは、法律だけで押し切ることが、必ずしも最善とは限りません。法的には正しい対応でも、伝え方を誤れば「不信」や「反発」を生み、結果として関係が壊れ、コストも増えます。
かといって、感情面だけを優先してしまうと、会社として守るべきルールが曖昧になり、同じ問題が繰り返されることもあります。
法律のラインを押さえつつ、感情面にも配慮した着地点を探る。この両輪がそろって初めて、揉めごとは収束に向かいます。
3.早期に第三者を入れることで深刻化を防ぐ
当事者同士では、どうしても視野が狭くなります。
「相手が悪い」「分かってくれない」という思いが強まるほど、話し合いは硬直しがちです。
早い段階で第三者を入れることで、状況を客観的に整理でき、論点のズレや優先順位が見えやすくなります。
また、第三者が入ることで当事者の言葉遣いや態度が落ち着き、感情の暴走を抑えられることもあります。結果として、時間もコストも、そして経営者自身の精神的負担も、最小限で済むケースが多くあります。
第三者を入れるのは“負け”ではなく、経営のスピードを守るための選択肢です。
《「ビジネスコーチング×法律」で支える波戸岡流サポート》
1.戦うためではなく、前に進むための法的サポート
私が企業顧問として大切にしているのは、「勝つこと」よりも、「経営が前に進むこと」です。
法的に勝てるかどうかにとどまらず、その後の関係性や、経営者自身の消耗を考え、本当にそれが最善かを一緒に考えます。
もめごとに直面したとき、強く出れば相手は引くかもしれません。
しかし、その後に残るわだかまりや、社内の空気、採用・定着への影響まで含めて考えると、別の着地点の方が良い場合もあります。
「勝てるか」だけでなく、「何を実現したいか」から逆算して整理する。ここに価値があります。
2.リスクを見える化し、経営判断を支える顧問弁護士
起こりうるリスクを見える化することで、経営者は安心して判断できます。
問題を未然に防ぎ、万が一のときも冷静に対応できる体制づくりを支えます。
もめごとは、突然起きるように見えても、多くは予兆があります。
契約の曖昧さ、権限設計の不足、評価基準の未整理、コミュニケーションのズレ。
こうした“火種”を事前に見える化しておけば、トラブルは小さいうちに収束しやすくなります。
3.経営者に寄り添い、もめごとを「経営の力」に変える
もめごとは、経営者が弱いから起きるのではありません。真剣に会社と向き合っているからこそ起きるものです。
私はビジネスコーチングの視点を活かし、経営者の想いやゴールを整理しながら、柔らかく、納得感のある解決を目指します。
もめごとの渦中では、判断が遅れたり、言葉が荒くなったり、孤独感が強まったりします。しかしその状態のまま意思決定をすると、後から「別のやり方があった」と後悔が残りやすくなります。
だからこそ、状況整理と意思決定の支えをセットで提供することが重要だと考えています。
《“もめごと”に悩む経営者の方へ》
社内外のもめごとを、「まだ大きな問題ではないから」と後回しにしていませんか。
問題が小さいうちに整理することで、経営のスピードと安心感は大きく変わります。
もめごとがこじれると、時間だけでなく、採用・定着、現場の士気、取引先との信頼、そして経営者の集中力まで奪われます。
一方で、早期に整理できれば、同じ問題の再発を防ぎ、組織の土台を強くする機会にもなります。
中小企業に特化した企業顧問として、私はトラブルの予防と初動対応を重視したサポートを行っています。
「今すぐ訴訟を考えているわけではない」
そんな段階からでも、安心してご相談ください。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。
私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。
経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。
波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
著書紹介
『論破されずに話をうまくまとめる技術』
”論破”という言葉をよく聞く昨今。
相手を言い負かしたり、言い負かされたり、、、
でも本当に大切なことは、自分も相手も納得する結論にたどりつくこと。
そんな思いから、先人たちの知見や現場で培ったノウハウをふんだんに盛り込み、分かりやすい言葉で解説しました。
『ハラスメント防止と社内コミュニケーション』
ハラスメントが起きてしまう背景には、多くの場合、「コミュニケーションの問題」があります。
本書は、企業の顧問弁護士として数多くのハラスメントの問題に向き合う著者が、ハラスメントを防ぐための考え方や具体的なコミュニケーション技術、実際の職場での対応方法について、紹介しています。
『弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル』
経営者が自分の判断に自信をもち、納得して前に進んでいくためには、経営者に伴走する弁護士が、本音で対話できるパートナーであってほしいです。
本書では、経営者に寄り添う弁護士が身につけるべきコミュニケーションのヒントを数多く解説しています。
経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
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