モンスター社員への対応に悩む経営者の方へ-感情論でも放置でもない、現実的な向き合い方

「モンスター社員への対応をどうすればよいか分からない」

この相談は、労務管理に関するご相談の中でも、ここ数年、特に増えています。
しかも多くの場合、単なる労務トラブルというより、経営者自身が疲弊している状態でご相談に来られます。

・注意するとトラブルになる。
・何も言わないと、現場の空気が悪くなる。
・法律論を持ち出すのも、どこか違う気がする。

こうした葛藤を抱えながら、日々判断を迫られている経営者は少なくありません。

 モンスター社員の背景を整理する

まず確認しておきたいのは、「モンスター社員」という言葉は法律上の概念ではないという点です。
実務では、次のような特徴を持つ社員を指して使われることが多い印象です。

・指示や注意に対して、過剰に反発する
・会社の対応をすぐに「違法」「ハラスメント」と主張する
・被害者意識が非常に強く、話し合いが成立しにくい
・周囲の社員のモチベーションを下げる言動を繰り返す

ここでポイントとなるのは、「問題のある言動」と「対応が難しい性格」は必ずしも一致しないという点です。

対応が難しく感じる背景には、過去の対応が曖昧だったり、役職者ごとに言っていることが違ったり、会社としての基準が言語化されていないなど、組織側の要因が影響しているケースも少なくありません。

モンスター社員対応で、いきなり弁護士に相談される理由

モンスター社員対応のご相談では、

「もう限界なので、解雇できますか」「懲戒処分にしたいのですが」

といった質問から始まることも多いです。

その背景には、「これ以上、感情的に関わりたくない」という切実な思いがあります。

ただし、法的対応を検討するにしても、これまで、どんな指導をしてきたのか、どんな記録が残っているのか、他の社員とのバランスは取れているかといった前提が整理されていないと、会社側の対応そのものがリスクになることもあります。

モンスター社員対応では、「何ができるか」以前に、「何が起きているのか」を整理することが非常に重要です。

モンスター社員対応で欠かせない3つの視点

1.事実ベースで語れる状態をつくる

「態度が悪い」「協調性がない」という表現は、経営者の感覚としては正しくても、対応の根拠にはなりにくいものです。

重要なのは、いつ、どこで、何を言ったか、何をしなかったかという具体的な事実に落とし込めているかです。これは、懲戒や指導のためだけでなく、冷静なコミュニケーションを取り戻すためにも欠かせません。

感情が先に立つほど、事実の整理が後回しになります。逆に、事実が整理されると、経営者自身の気持ちも落ち着いていくことが多いです。

2.「分かってもらう」ことを目的にしすぎない

モンスター社員対応で、経営者が最も消耗するのが、「何とか理解してもらおう」とし続けることです。
もちろん、対話は大切です。ただし、相手が常に被害者意識を強めるタイプの場合、話し合いが逆効果になることもあります。
このようなケースでは、会社として伝えること、これ以上対応しないこと、を明確に分け、境界線を引くことが重要になります。

コーチングの視点で言えば、「相手を変える」よりも、「自分たちの関わり方を変える」ことに注力する発想です。

3.社内全体への影響を見る

モンスター社員対応は、一人の社員との問題に見えて、実は組織全体の問題でもあります。
・周囲の社員が我慢を強いられていないか
・上司が板挟みになっていないか
・不公平感が広がっていないか

特定の社員への対応が長期化すると、「声を上げた者勝ち」という空気が生まれることもあります。
経営者としては、個別対応と組織の健全性を同時に考える視点が欠かせません。

モンスター社員対応における、弁護士×コーチングの役割

モンスター社員対応では、法律論だけで押し切ったり、 気持ちに寄り添うだけで終わるのでは、どちらも十分とは言えません。

私が意識しているのは、
・法的に許される範囲を明確にし
・経営者が冷静に判断できる状態を整え
・それをどのように伝え、どこで線を引くかを一緒に考える
という関わり方です。

経営者自身の思考が整理されると、対応が一貫し、結果としてトラブルが拡大しにくくなります。

モンスター社員対応は経営判断の積み重ね

モンスター社員対応は、単なる労務管理の問題ではなく、経営判断の連続でもあります。

どこまで向き合うのか、 何を守り、何を譲らないのか、会社としてどんなメッセージを出すのか

これらは、法律だけでは答えが出ません。だからこそ、法と対話、両方の視点から整理することが、経営者が消耗しすぎないための現実的な対応につながります。
モンスター社員にお困りの経営者の方は、ぜひいちどお問い合わせください。
また、Q&A集も作りましたので、ご参考になれば幸いです。

モンスター社員対応 Q&A-経営者が知っておきたい15の視点

Q1.「モンスター社員」とは、法律上の概念ですか?

A.いいえ、法律用語ではありません。
「モンスター社員」という言葉は、実務上の通称にすぎません。
重要なのは呼び名ではなく、具体的にどのような言動が問題なのかを整理することです。
法的対応を考える際も、「性格」ではなく「行動」が判断対象になります。

 

Q2.注意すると「パワハラだ」と言われます。どう対応すべきですか?

A.まず、指導内容と伝え方を切り分けて考える必要があります。
業務上必要な指導であっても、人格否定や感情的な言葉が混ざると、トラブルになりやすくなります。
事実・業務・期待水準に絞って伝えているかを一度整理することが重要です。

 

Q3.モンスター社員には、できるだけ関わらない方がよいのでしょうか?

A.「放置」はおすすめできません。
一時的に楽になることはありますが、放置が続くと、周囲の社員の不満や
不公平感が蓄積し、別の問題を生むことが多いです。
関わり方を減らすことと、対応しないことは別と考える必要があります。

 

Q4.話し合いをしても、まったく話が噛み合いません。

A.「分かり合う」ことをゴールにしすぎない方がよい場合もあります。
相手が強い被害者意識を持っている場合、話し合いが逆に感情を刺激することもあります。このような場合は、会社として伝える事項を限定し、線引きを明確にする対応が有効です。

 

Q5.モンスター社員でも、能力が高ければ我慢すべきでしょうか?

A.短期的には得でも、長期的にはリスクになることがあります。
一人の社員を特別扱いすると、周囲の士気低下や管理職の疲弊につながりやすくなります。組織全体への影響を含めて判断する視点が欠かせません。

 

Q6.感情的にならずに対応するコツはありますか?

A.「事実ベース」に徹することです。
「困っている」「腹が立つ」という感情は自然ですが、
対応の場面では、日時、発言内容、業務への影響といった事実に落とし込むことで、冷静さを保ちやすくなります。

 

Q7.注意や指導は、口頭だけで問題ありませんか?

A.継続的な問題がある場合は、記録を残すことが重要です。
口頭指導だけだと、「言った・言わない」の争いになりやすくなります。
メールや面談記録など、後から振り返れる形を意識しておくと、対応の選択肢が広がります。

 

Q8.モンスター社員への対応で、やってはいけないことは何ですか?

A.一貫性のない対応です。
あるときは厳しく、あるときは黙認という対応が続くと、トラブルが拡大しやすくなります。
誰が対応しても同じスタンスになるよう整理することが大切です。

 

Q9.管理職が疲弊しています。どう考えるべきでしょうか?

A.重要なサインです。モンスター社員対応では、表に出ないところで管理職が消耗しているケースが少なくありません。
これは個人の問題ではなく、組織の問題として捉える必要があります。

 

Q10.懲戒処分は、どのタイミングで検討すべきですか?

A.問題行動が繰り返され、改善が見られない場合です。
ただし、指導や注意の記録がない状態での懲戒は、リスクが高くなります。
段階を踏んだ対応が基本になります。

 

Q11.解雇は最終的に可能なのでしょうか?

A.可能性はありますが、慎重な判断が必要です。
モンスター社員だから解雇できる、というわけではありません。
行為の内容・経緯・会社の対応履歴を踏まえた検討が不可欠です。

 

Q12.他の社員が「なぜあの人だけ許されるのか」と不満を持っています。

A.組織の信頼が揺らいでいるサインです。
説明責任をどこまで果たすかは難しい問題ですが、会社としての基準が見えない状態は、さらなる不満を生みます。
内部の納得感も、重要な経営課題です。

 

Q13.弁護士に相談するタイミングは、いつがよいですか?

A.トラブルが深刻化する前が理想です。
感情が限界に近づいてからだと、選択肢が狭まっていることも少なくありません。
「まだ大丈夫なうち」の相談が、結果的に負担を減らします。

 

Q14.弁護士に相談すると、すぐ法的対応になりますか?

A.必ずしもそうではありません。多くの場合、まず行うのは、状況整理と対応方針の検討
です。
法的手段は、あくまで選択肢の一つにすぎません。

 

Q15.モンスター社員対応で、経営者が一番大切にすべきことは何ですか?

A.一人で抱え込まないことです。
モンスター社員対応は、労務問題であると同時に、経営判断の問題でもあります。
法と対話の両面から整理することで、経営者自身が消耗しすぎない対応が見えてきます。

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
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私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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弁護士 波戸岡光太
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