共同経営を解消することになったとき、経営者が外してはいけない判断 -「終わり方」が、その後の経営を左右する

 

共同経営は、必ずしも同じ形のまま続いていくとは限りません。

事業が順調であっても、あるいは順調だからこそ、経営の方向性が変わったり、関与の度合いに差が生まれたり、人生の優先順位そのものが変化することがあります。そうした流れの中で、共同経営の解消という局面を迎えることは決して珍しいことではありません。

この段階に差しかかると、多くの経営者が「できれば揉めずに終わらせたい」「ここまで一緒にやってきたので、きれいに整理したい」と語ります。その感覚は極めて健全なものです。むしろ、会社の将来を真剣に考えているからこそ出てくる言葉でしょう。

ただ、実務を見ていると強く感じるのは、解消の場面ほど経営者の判断力が問われる局面はないということです。ここでの判断は単に関係を終わらせるだけにとどまらず、会社の未来そのものに影響を及ぼします。

解消は「失敗」ではない

共同経営の解消という言葉には、どこか後ろ向きな響きがあります。しかし実際には、必ずしもそうとは限りません。

経営に求める成長スピードが変わることもあれば、関与の仕方が変化することもあります。あるいは、新しい挑戦に向かいたいという思いが芽生えることもあるでしょう。こうした変化は、経営の過程ではむしろ自然なものです

無理に関係を続けた結果、対立が深まり会社の運営に支障をきたすのであれば、適切なタイミングで整理する方が会社を守ることにつながります。重要なのは感情的に「別れるべきか」を考えることではなく、経営として合理的かどうかを見極める姿勢です。

「早く終わらせたい」という焦りに流されない

解消の話し合いは、想像以上に精神的な負担を伴います。対話そのものが重く感じられたり、社内への影響が気になったり、先行きに不安を覚えることもあるでしょう。

そのような状況では、「多少条件が悪くても早く終わらせたい」という心理が働きやすくなります。しかし、この焦りこそが最も注意すべきポイントです。

拙速な合意は、不利な価格での株式譲渡や曖昧な条件設定につながり、将来の火種を残しかねません。解消はゴールではなく、その後の経営のスタートラインです。だからこそ、スピードよりも納得できる整理を優先する必要があります。

感情と経営判断を切り分ける

どれほど冷静な経営者であっても、共同経営の解消局面では感情が動きます。裏切られたと感じることもあれば、正当に評価されていないと思うこともあるでしょう。これまでの努力が否定されたように感じることもあるかもしれません。

こうした感情は自然なものですが、その延長線上で判断してしまうと、会社にとって合理的とは言えない結論に近づくことがあります。関わりたくない一心で過度に譲歩してしまう場合もあれば、納得できない思いから対立を深めてしまう場合もあります。

ここで求められるのは、関係に対する感情的評価と、会社にとっての最適解を分けて考える視点です。簡単なことではありませんが、まさに経営者としての力量が表れる部分だと言えるでしょう。

株式の扱いを曖昧にしない

共同経営の解消において、極めて重要なのが株式の整理です。ここが曖昧なまま進むと、その影響は長く残ります。

誰が株式を取得するのか、価格をどのように算定するのか、支払い方法をどうするのか。これらは避けて通れない論点です。特に価格は対立が生まれやすく、安すぎれば不満が残り、高すぎれば会社の財務を圧迫します。

だからこそ、第三者評価など客観的な基準を取り入れることが有効です。株式は単なる財産ではなく、経営権そのものです。この点を丁寧に扱えるかどうかが、その後の会社の安定を大きく左右します。

「きれいに終わること」だけを優先しない

円満解消を目指す姿勢は非常に大切です。しかし、表面的な穏便さだけを優先すると、本来必要な取り決めが抜け落ちることがあります。

解消後の競業をどう考えるのか、顧客との関係をどう整理するのか、情報の取り扱いをどのように管理するのか。こうした点が曖昧なままだと、新たなトラブルが生じる可能性があります。

本当の意味で「きれいに終わる」とは、将来の不確実性を減らしておくことにほかなりません。

社内への影響を軽視しない

共同経営者の解消は、社内にも少なからず影響を及ぼします。社員は想像以上に敏感です。経営は安定しているのか、会社の方向性は変わるのか、自分たちの立場は大丈夫なのか…。そうした不安が広がれば、組織の動揺につながります。

だからこそ、可能な範囲でメッセージを整理し、一貫した説明を行い、今後の方針を示すことが重要です。解消そのもの以上に、解消後にどのように舵取りをするかが経営者の役割です。

一人で抱え込まない

共同経営の解消は、意思決定の重さが際立つテーマです。当事者同士だけで進めようとすると、視野が狭くなり、判断が感情に引きずられやすくなります。

法的視点を含めた第三者が関与することで、判断は安定します。第三者は対立を深める存在ではなく、むしろ冷静な着地点を見つけるための支点となります。

波戸岡にご相談を頂いた場合、私はいきなり結論を出すことはせず、何が起きているのか、本当の論点はどこにあるのか、どのような選択肢が考えられるのかといった点をひとつひとつ言語化しながら、経営者が冷静に判断できる状態を整えていきます。

共同経営の問題は、感情が動きやすいテーマです。
だからこそ、法的な視点だけで押し切るのではなく、対話を通じて着地点を探るプロセスを大切にしています。

早い段階で整理することで、不要な対立を避けられるケースも少なくありません。
また、すでに関係が緊張している場合でも、進め方を整えることで、会社への影響を最小限に抑えられる可能性があります。

もし今、共同経営を続けるべきか迷っている、解消の進め方が分からない、話し合いが難しくなってきているといった状況にある場合は、一人で抱え込まず、気軽にご相談ください。

「終わり方」を整えることは、会社を守ること

共同経営は始め方以上に、終わり方が重要です。丁寧に整理された解消は、経営の混乱を防ぎ、組織の安心感を保ち、次の成長への土台となります

もし今、共同経営の解消が頭をよぎっているのであれば、それは決して後ろ向きな兆候ではありません。むしろ、経営を次の段階へ進めるための重要な判断のタイミングである可能性があります。

法的な視点と対話の視点を行き来しながら整えていくことで、会社はより安定した形へと進んでいくでしょう。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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