「インテグリティ」という考え方-コンプライアンスの次に来る言葉

 

企業研修や顧問先との打ち合わせの中で、最近よく出てくる言葉があります。

それが「インテグリティ(Integrity)」です。

コンプライアンスという言葉は、すでに多くの企業で浸透してきています。
しかし最近は、コンプライアンスだけでは不祥事を防げないという認識が広がり、もう一歩踏み込んだ概念として「インテグリティ」が注目されています。
今回は、この「インテグリティ」という言葉について、実務の視点から考えてみたいと思います。

コンプライアンスとインテグリティの違い

まず整理しておきたいのは、コンプライアンスとインテグリティは似ているようで少し違う概念だということです。
一般的には、次のように説明されます。

コンプライアンス
・法律や社内ルールを守る
・外部から決められた規範
・「悪いことをしない」

インテグリティ
・誠実さに基づいて行動する
・自分の価値観に基づく規範
・「正しいことをする」

つまり、
コンプライアンスは「ルール」
インテグリティは「姿勢」

と言い換えることもできます。
コンプライアンスが「外側から与えられる規範」であるのに対し、インテグリティは「内側から生まれる規範」と言われています。

コンプライアンスだけでは防げない問題

企業不祥事のニュースを見ると、次のような言葉がよく出てきます。

不正データの改ざん、品質検査の形骸化、内部通報の無視、パワハラ隠蔽…

こうした問題の多くは、実は「法律を知らなかった」ことが原因ではありません。
むしろ、ノルマが厳しい、上司に言いづらい、組織の空気に逆らえない、という組織の空気の中で起きます。
つまり、ルールを作るだけでは防げない問題が存在するのです。

この点について、コンプライアンスが「知識(頭)」に働きかけるものだとすれば、
インテグリティは「意識(心)」に働きかけるものだとも言われています。

「ギリギリセーフですか?」という質問

企業研修でよく出てくる質問があります。
それは「これって、ギリギリセーフですか?」というものです。
この質問には、実は二つの発想が隠れています。

コンプライアンス思考
・違法かどうか
・ルール違反かどうか

インテグリティ思考
・それは誠実か
・顧客に胸を張れるか

この二つは、似ているようで実は大きく違います。
企業不祥事の多くは、「違法ではない」から始まることが多いのです。

ドラッカーが語った「経営者の資質」

経営学者ピーター・ドラッカーは、経営者の資質について、能力や知識よりも、
真摯さ(インテグリティ)が最も重要な資質だと述べています。

とくに、インテグリティのない人の特徴として、
・有能な部下を恐れる
・人格より頭脳を重視する
・「何が正しいか」より「誰が正しいか」に関心を持つ
といった例を挙げています。
これは、現代の組織にもそのまま当てはまる話といえるでしょう。

インテグリティは「制度」ではなく「文化」

コンプライアンスは制度である程度整備することができます。
規程、通報制度、研修、監査などです。

しかしインテグリティは、制度ではなく文化です。
・上司が間違いを認める
・部下が違和感を言える
・不正を見逃さない空気がある

こうした組織では、コンプライアンス違反は起きにくくなります。
つまり、インテグリティはコンプライアンスの土台とも言えるのです。

インテグリティは「経営テーマ」でもある

ここまで読んでいただくと、インテグリティは倫理の話だけではなく、経営の話だということが分かると思います。

例えば企業研修でよく扱うテーマは、
・上司が不正を止められるか
・組織のプレッシャー
・沈黙の文化
・内部通報の心理

こうした問題は、法律だけでは解決できません。
だからこそ、法律 × 組織心理 × マネジメントの視点が重要になります。

インテグリティは、会社の未来をつくる

企業不祥事の多くは、ある日突然起きるわけではありません。

小さな違和感、小さな妥協、小さな沈黙、、、
それらが積み重なって起きます。

インテグリティとは、その「最初の違和感」に気づける組織をつくることです。
そしてそれは、経営者と管理職の姿勢から始まります。

企業のコンプライアンス・インテグリティに悩んだら

企業の現場では、不正の芽をどう防ぐか、内部通報の扱い、組織文化の問題、管理職の判断など、法律だけでは答えが出ない場面が多くあります。

私は弁護士として、
・コンプライアンス体制
・インテグリティ研修
・組織トラブルの相談
など、法律とコミュニケーションの両面から企業をサポートしています。

もし、
・コンプライアンス研修を見直したい
・インテグリティ研修を検討している
・社内の問題に悩んでいる
という場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
企業の現場に合わせた形で、具体的な支援を行っています。

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。

私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。

経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。

ご相談中の様子

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

経歴・実績 詳細はこちら
波戸岡への法律相談のご依頼はこちら

著書紹介

『論破されずに話をうまくまとめる技術』

『論破されずに話をうまくまとめる技術』

”論破”という言葉をよく聞く昨今。
相手を言い負かしたり、言い負かされたり、、、
でも本当に大切なことは、自分も相手も納得する結論にたどりつくこと。
そんな思いから、先人たちの知見や現場で培ったノウハウをふんだんに盛り込み、分かりやすい言葉で解説しました。

本の詳細はこちら

『なぜコンプライアンス違反はなくならないのか?』

『なぜコンプライアンス違反はなくならないのか?』

コンプライアンス違反を防ぐためには、法やルールを知ることにとどまらず、「これくらいならいいでしょう」「言い出せない空気だったので」といった心理のメカニズムから考えることが有益です。
その観点から、本書では、法律という「守るべきルール」と、社会心理学が明らかにする「心の動き」を、身近な例を用いながら、わかりやすく解説しました。

本の詳細はこちら

『ハラスメント防止と社内コミュニケーション』

『ハラスメント防止と社内コミュニケーション』

ハラスメントが起きてしまう背景には、多くの場合、「コミュニケーションの問題」があります。
本書は、企業の顧問弁護士として数多くのハラスメントの問題に向き合う著者が、ハラスメントを防ぐための考え方や具体的なコミュニケーション技術、実際の職場での対応方法について、紹介しています。

本の詳細はこちら

『弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル』

『弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル』

経営者が自分の判断に自信をもち、納得して前に進んでいくためには、経営者に伴走する弁護士が、本音で対話できるパートナーであってほしいです。
本書では、経営者に寄り添う弁護士が身につけるべきコミュニケーションのヒントを数多く解説しています。

本の詳細はこちら

経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
東京都港区赤坂3-9-18赤坂見附KITAYAMAビル3階
TEL 03-5570-5671 FAX 03-5570-5674