NGな態度、オススメな態度-新聞連載vol.5-

前回は、パワハラになりがちなNGワードをお伝えしました。メッセージは言葉以外からも発せられます。それが、態度です。今回は、パワハラととられがちなNG態度とおススメな態度についてお伝えします。

言葉より印象が強い「視覚」や「聴覚」

皆さんは「メラビアンの法則」をご存じですか?これは、コミュニケーションにおいて人が言語・聴覚・視覚から受け取る情報の量を示した法則です。それぞれ、視覚(表情、しぐさなど)から55%、聴覚(話し方)から38%、言語(話の内容)から7%の情報を受け取っていると言われています。
つまり、態度や振る舞い方のほうが言葉そのものよりも強いインパクトを与えている、ということです。ですから、話の内容よりも、話しているときの身振り、手振り、表情、声のトーンや大きさなど、相手にどう見えているか、どう聞こえているかが重要なポイントになります。

例えば、話をしているときの態度として、しかめっ面をしての腕組みは威圧感を、ベタッと背もたれに寄りかかる態度は無関心な印象を与えます。怒っているわけではないのに、それだけで部下は「怒られた」と感じたり、「ちゃんと聴いてもらえていない」と精神的なダメージを受けたりするかもしれません。
また、パソコンに向いたまま返事をする、貧乏ゆすりをする、机をコツコツ叩く、時計やスマホをチラチラ見るなど、忙しかったりイライラしたりしているときに出てしまう態度も、相手に親身に対応していないと思われたり、不快感を与えたりしてパワハラの一要素と言われかねません。

パワハラと思われないオススメな態度

「そんなつもりはないのに」「きついことを言ったわけではないのに」、態度によってパワハラと思われてしまってはやるせないですよね。では、どのような態度をとることが望ましいでしょうか。

それは、相手にしっかり向き合って、話をちゃんと聴いている、という態度を見せることです。
例えば、体ごと相手に向けて話を聴くことで、「ちゃんと聴いているよ」というメッセージになります。椅子にまっすぐ座って、やや前傾になって聴くと、さらに真剣に向き合っていることが伝わるでしょう。また、スマホをカバンにしまうか伏せるなどの配慮も必要です。
他にも、「なるほど、話してくれてありがとう」とか、「そうしてくれるとすごく助かります」、「前より良くなったね」などという言葉を、頭のなかで思うだけでなく、声に出して伝えると、人が本来持っている貢献欲求や成長欲求を満たすことができます。そうすれば、パワハラにならないことはもちろん、コミュニケーションが円滑になり、理想的な指導に近づくことができるでしょう。

人を育てるフィードバック

また、改善点や修正点などを伝える際は、ほめ言葉や感謝の言葉を挟んで伝える「サンドイッチ話法」を活用してみてください。
人は反射的に欠けた部分に目が行く習性があります。それは、物に限ったことではなく、人に対しても「欠けた部分」、つまり、欠点に目が行きやすいのです。そのため、いきなり欠点を指摘することから始めがちです。
ですが、せっかく自分が時間と精力を費やして作成した資料やレポートについて、即座に欠点を指摘されるのは気持ちの良いものではありません。サンドイッチ話法を活用することで、相手の気持ちを害せず、こちらの意見も伝えられます。

具体的には欠点の指摘から入らずに、まずは「なるほど」と相手を肯定することから話を始めましょう。そのためには、自分の中にある当たり前の基準を下げ、相手の良い点を見つけることが必要です。次に本題に入り、「ただ、ここはこうできないだろうか」と、改善点や修正点を指摘します。そして最後は必ず肯定する言葉で締めます。この手法は、かの松下幸之助も実践していたと言われています。
「楽しみにしているよ」などと、期待を込めて会話を終えるのもいいですね。「期待」をもって人に接すると、人を育てる効果があると言われています(ピグマリオン効果)。

小さな火種が大きなトラブルにつながる

腕組みをしたり、背もたれに寄りかかって話を聴くことが、即パワハラになるかというと、もちろんそんなことはありません。裁判になったとしても、そのことだけで会社が負けるわけではありません。

ですが、「塵も積もれば山となる」というように、そうした積み重ねがパワハラの疑惑や火種を生み、トラブルや紛争へと発展していきます。そして火種やトラブルへの対処自体が、時間やパワーを奪うものですので、早めの対処はもちろん、火種を生み出さない心がけや組織づくりが必要です。私自身、そうした観点から、日々紛争解決だけでなく、紛争「予防」にも力を入れています。
皆さまの身の回りにパワハラの火種がないか、改めてチェックしてみてはいかがでしょうか。

「生産性新聞」(2023年6月25日号・連載第5回)

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

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そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。

私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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