さまざまなハラスメント-新聞連載vol.6-

これまで、パワハラについてお話をしてきましたが、ハラスメントの種類は実に多様です。今回はパワハラ以外のハラスメントについてお伝えします。

「相手を不快に思わせる」のがハラスメント

そもそもハラスメントという言葉の意味は、「相手の嫌がることをして不快に思わせたり、心を傷つける行為」を広く指します。たとえ嫌がらせのつもりはなかったとしても、あなたの言動で相手が不快感を覚えたり心が傷ついたら、それはハラスメントに当たります。
パワハラは上司と部下という立場の違いで起こることが多いですが、ハラスメントは同僚同士、家族間でも起こり得ますし、離れた場所にいても起こる可能性があるものです。

現代社会のさまざまなハラスメント

今、ハラスメントの種類はどんどん増えています。どのようなハラスメントがあるのか、具体的に紹介します。思い当たる節がないか、少し振り返ってみてください。

①逆パワハラ
部下が上司に対して行うパワハラ。「上司は部下の要望に応える義務がある」といって無茶な要求をしたり、「部長って昔の人間ですよね」などと軽蔑的な言葉を投げたり、率先して上司の悪口を言って周りと結託するなどの言動がこれに当たります。

②セクハラ
性的な嫌がらせ。「まだ結婚しないの?」「スリーサイズは?」といった発言や、ボディタッチ、しつこくデートに誘うなどの言動はNGです。職場内に限らず、飲み会の席などでも発生しやすいので要注意です。

③モラハラ
モラルのないいやみや嫌がらせ。言葉や態度で人を傷つけたり、絶対に自分の非を認めない、これみよがしな態度や冷笑、馬鹿にしたような視線がこれに当たります。

④マタハラ
女性に対する妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益な取扱いや嫌がらせ。
妊娠の報告を受けて嫌な顔をしたり、「また子どもが熱を出して休むの?」といった発言や、育児で時短勤務をしている人に対して、「業務が楽でいいね」と言うことなどがこれにあたります。

⑤パタハラ
男性に対する育児休業等を理由とする不利益な取扱いや嫌がらせ。「そんなに休まれると迷惑だな」「男が育休などありえないでしょう」と言うことなどがあたります。育休を取る男性社員が増えてくる一方で、パタハラも増えています。ちなみに「パタ」とは「パタニティ」で「父性」という意味です。

⑥ケアハラ
介護を理由とする不利益取り扱いや嫌がらせ。「それって親族にやってもらえないの?」などと言うのがこれにあたります。超高齢化社会になり、働きながら親の介護をする人も増えてきているなかで現れたハラスメントです。

⑦セカハラ
ハラスメントを受けた人への攻撃で、二次被害を与えるもの。「自分だっていい目見てたくせに」「セクハラされる方も問題あるよね」などと攻撃する行為です。世の中は因果応報だと思いたがる人間の「バイアス」がセカハラを生み出します。

⑧リモハラ
リモートワーク(テレワーク)を通じての嫌がらせ。「周りちらかってんじゃないの」「彼はウェブ会議から外していいんじゃない」などと言うのがこれにあたります。ハラスメントは場所や距離を問わずに起きることを示す典型例です。

⑨ジェンハラ
男らしさや女らしさを強要する言動。「女の子らしく、おしとやかにしててね」「男なんだから、酒ぐらい飲めるようになれ」といった言動がこれにあたります。「(男や女は)こうあるべき」という意識下にある価値観やバイアスがここでも働いています。

⑩テクハラ
SNSやPCなどITスキルが劣っていることに対する嫌がらせ。スキルのない人に対して「え、そこからっすか。パソコンスクールじゃないんで。」など小ばかにしたような言動がこれにあたります。

いかがですか?これまで耳にしたことがないハラスメントもあったかもしれません。ここに挙げたのは一部であり、他にもさまざまなハラスメントが存在します。今後もさらに増えていくかもしれません。

相手を尊重すること、大切に思うことが大事

何を言ったらNGなのか、何をしたらいけないのか、それをひとつひとつ覚えていくのは困難ですし、実はあまり意味がありません。それよりもっと本質的な部分で考えてみましょう。

どのハラスメントにも共通していること。それは、「相手への尊重が欠けていること」、そして「相手よりも自分の価値観を優先していること」です。今回列挙した言動もそのようなものばかりです。

日頃私たちは、どれだけ相手のことを大切に思い、相手の価値観を理解しようとしているでしょうか。忙しい毎日の中で、つい相手よりも自分を優先して相手を軽くみてしまいがちです。

この連載の初回で「関係の質」の大切さをお伝えしました。関係の質が崩れたら、思考も行動も結果も崩れていきます。よい関係を作り、良質のコミュニケーションを生み出すために必要なもの、それは相手への尊重であり、相手をリスペクトするマインドにほかなりません。当たり前のことなに軽視しがちになっていないでしょうか。
近時、いろんなハラスメントが増えていることは、そのことに警鐘を鳴らしているのかもしれません。そんな観点から、ハラスメントのない職場づくりをしていきたいですね。

「生産性新聞」(2023年7月25日号・連載第6回)

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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