上司も部下もリスペクトを-新聞連載vol.8-

「ハラスメント防止とコミュニケーション」もいよいよ最終回となりました。これまで、7回にわたって「パワハラ」についてお話してきました。

なぜパワハラが起きてしまうのか、起こさないためにどうしたらよいのか、わかりやすくお伝えしてきたつもりです。最後にもう一度、ポイントをお伝えして筆をおきたいと思います。

パワハラかどうかの判断基準を持つ

厚生労働省は明らかにパワハラに当たる言動として、6つの代表的な類型を定めています。ですが、パワハラははっきり線引きできるセクハラなどと異なり、グレーゾーンが存在します。相手や状況によって、同じ言動でもパワハラになることもあれば、ならないこともあります。また、認識の違いから「良かれと思って」「相手のためを思って」の言動がパワハラととられてしまうこともあります。
あいまいだからこそ、常に自分の中に判断基準を持ち、部下の指導に当たることが重要です。

あなたの指導は「業務上必要かつ相当な範囲」ですか?組織のためを思った指導ですか?そして、その指導は第三者が見ても適切ですか?迷ったときは、これらを基準に考えてみて下さい。どの質問にも、自信を持って「YES」と答えられるような指導を心がけましょう。

アンコンシャス・バイアスがパワハラを引き起こす

パワハラを引き起こす要因の一つに、「アンコンシャス・バイアス(自覚のない思い込み)」があります。これは、自身のこれまでの知識や経験、価値観などがベースになって無意識レベルで起きる認知の歪みです。「こうあるべき」という自分の価値観による言動は相手にとっては押し付けになりかねません。また、ありがちなのは「俺の時代は…」「昔は…」といった、過去の経験による指導です。時代は変化しています。かつての常識は今の常識とは異なることを忘れないようにしましょう。

アンコンシャス・バイアスは自覚がないので、自分で気づくのはなかなか難しいものです。ニュートラルな視点で指導できているか、思い込みはないか、今一度、自身の言動を振り返ってみましょう。

パワハラを防ぐにはコミュニケーションスキルが重要

上司は部下を指導する義務と責任があります。そして、それは常に「業務上必要かつ相当な範囲」でなければなりません。行き過ぎた指導にならないためには、適切なコミュニケーションを取ることが求められます。
最後まで話を聞く、I(アイ)メッセージで伝える、ヒトではなくコトにフォーカスする、いい質問を投げかける、相手の不満は提案に変えさせる、このようなコミュニケーションを取ることが、パワハラにならず部下を指導するポイントです。

関係の質の向上がパワハラ防止につながる

「ハラスメント防止とコミュニケーション」を通してお伝えしたかったのは、良好な人間関係を築き、関係の質を上げることで、パワハラを防ぐことができるということです。良好な関係とは、お互いがお互いを理解しリスペクトする関係のことです。相手をリスペクトしていれば、人格を否定するような発言や行動はとらないはずですし、認識のずれによるパワハラも発生しません。

下表(新聞記事画像の中)にいくつかのありがちな相違の例をまとめました。熱意を込めて指導しているつもりが、部下にとっては押し付けに感じていたり、部下のためを思って何度も同じことを言えば、しつこいと思われていたり…、ということはありませんか?これらは全てコミュニケーション不足から起こる認識の相違と言えます。相手をリスペクトし、相手がどう感じるか、どう伝えれば通じるのかを考えた上で指導に当たることが、パワハラにならず上司としての義務と責任を果たすことにつながります。この機会に日頃の部下や同僚へのアプローチを振り返り、見直してみるのはいかがでしょうか。

また、コミュニケーションにおいて、人は言葉よりも態度や振る舞い方の方に強いインパクトを感じると言われます。ですから、内容だけでなく、話しているときの身振り、手振り、表情、声のトーンや大きさなど、相手にどう見えているか、どう聞こえているかも重要なポイントです。話を聞くときは、正面からしっかり向き合うことが大切です。
そして、この関係の質を高める役割を担うのは、部長や課長など組織長です。ぜひ、円滑なコミュニケーションでパワハラのない組織を目指してください。

「生産性新聞」(2023年9月25日号・連載第8回)

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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