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弁護士の仕事・その10「嗅ぎとる力」
裁判官は、判決になるまで、判断内容を教えません。
審理の途中で「君は勝つよ」とか「君は負ける」などとは言いません。
当事者双方が言い分や証拠を出し尽くした後に、初めて最終判断としての判決を書くのだから、中立公正の建前にたつ裁判官としては当然です。
けれど、実際には、裁判官の心の中(心証)は、判決を書くときに突然完成するのではなく、訴状を読み、証拠を眺め、審理が進んでいくなかで徐々に作られていきます。裁判官も人間ですから当然です。
そして、審理途中でも、こちらが一生懸命主張している言い分が通らないときは、裁判官は、はっきりとは言わないものの、そのことを暗に示したりします。
「それはどうなんでしょう(=その主張は通らないですよ)」とか「その点、もう少し証拠はないのでしょうか(=いまの証拠じゃ足りないよ)」などです。
そうすることで、裁判官の心証と離れずに、裁判官が知りたいと思っているテーマをめぐって当事者同士が闘うことができます。
別の例で例えると、弁護士が料理人で、裁判官は料理審査員といったところでしょうか。
弁護士は依頼者からもらった材料で一生懸命料理を作り、裁判官に「美味しいでしょう!」と言って差し出します。
これに対して裁判官は、料理が何点かは最後に点数ボタンを押すまで教えてくれませんが、試食の段階では、ぼそっと「う~ん、少し味が薄いわね~」と言ったりします。
それを聞いた弁護士は、「なんで俺の味が分からないんだ!」という気持ちをぐっとこらえて、「何が足りない? 塩か? 胡椒か? それとも…??」と必死に審査員のメッセージの意味をつかむ努力をします。
なので、弁護士は、「こんなに依頼者は大変なことになってるんだ」と強く訴えかけると同時に、「この書面で裁判官はどんな表情をするか?」「あの時の裁判官の言葉はどういうヒントだ?」と、裁判官のメッセージやヒントを鋭く嗅ぎとる力、鋭敏な嗅覚をもつことが必要になります。
このように、弁護士は(私は!)、依頼者の希望を伝えると同時に、それを最終的にジャッジする裁判官が、今現在どのような心証を持っているのか、その心証を満たすには何が足りないのかを敏感に感じ取り、読み取る力、いわば嗅ぎとる力を持つことが必要なんだというお話でした。
つづく(^^)
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
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また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
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弁護士 波戸岡光太
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