弁護士とことば・その5「グタイテキにいうと?」

弁護士の仕事

経営者「ある社員に困ってます。遅刻が多い、命令を守らない、勤務態度が悪いんです」
弁護士「具体的にいうと?」
経営者「遅れてばかりで、言っても聞かないし、やる気がないんです」
弁護士「具体的にいうと?」
経営者「いや、だから、とにかく困ってるんです…」

具体的に説明しているつもりなのに、弁護士はなぜまだ聞いてくるのか。

この言葉だけで相手と交渉を始めると、きっとこうなるでしょう。(①)
経営者「あなたは遅刻が多く、命令を守らず、勤務態度が悪いです」
従業員「遅刻は多くないです。命令は守ってます。私はまじめに勤務してます」
経営者「そんなことないでしょう」
従業員「そんなことあります」
経営者「…もぅ」

でも「具体的な事実」を指摘したら、きっとこうなるでしょう。(②)
経営者「当社は9時が始業時間ですが、今月、あなたが9時過ぎに出社した日は10回ありました。
A部長が金曜日までと指示した報告書を、あなたは翌月曜日に提出しました。
デスクであなたが眠っている姿を、今月5回、同僚が見ています。事実と違うところはありますか」
従業員「…ありません」

②は「事実」なので、事実が間違っていなければ相手は争えません(10回、翌月曜日、5回)。
①は「評価」なので、同じ事実でも見方によって何とでも言えます(多い少ない、守る守らない、良い悪い)。

相手と交渉するためには、相手が言い訳できない「事実」をぶつける必要があります。
それさえできれば、「評価」は言わなくても浮かび上がります。
だから弁護士は具体的な事実を聞きたがるのですね。

でも、いきなり「具体的に」と言われても、わかるようなわからないような感じです。
だから、弁護士は(私は!)、「どんなことがあったのですか」などと、自分が使う言葉を「具体的にかみ砕いで」使わなければなりませんね(^^)

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。

私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。

経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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