昔話法廷「舌切りすずめ」裁判-動機ってなんだ-

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

中小企業をもりたてるパートナーとして、企業理念や経営者の想い、事業を理解した上で法的アドバイス、対外交渉、リーガルチェックを行うことをポリシーとしております。これまでの法律相談は1000件以上。ビジネスコーチングスキルを取り入れ、顧問先企業の経営課題・悩みをヒアリングし解消するトリガーミーティングも毎月行っています。

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NHKテレビ番組「昔話法廷」(Eテレ)、第5回は「舌切りすずめ」。
これまた愛憎飛び交う人間(どうぶつ)ドラマです。

おばあさんに舌を切られ、歌手デビューの途を絶たれた舌切りすずめ。
いつも愛情を注いでやまなかった、親切なおじいさん。
渡されたつづらから毒蛇がでてきて、大けがをしたというおばあさん。
はたして、無罪を主張する舌切りすずめに殺人未遂罪は成立するのでしょうか。

放火や殺人など重大な犯罪が起きると、よく「動機は何か」が問題になります。
重大な犯罪を犯したのであれば、よほどの動機があったのだろう、そうでなければそんなことしないよね、という一般的な通念があるものと思われます。

たしかに、「恋愛感情がこじれて恨んだ」とか「人生に絶望して世間に復讐したかった」という動機が分かると、だからそんな犯罪をしたのか、と納得できたりします。
「動機→行動」が、「原因→結果」の関係のように理解できるのでしょう。

けれど、だからといって、「動機があれば必ず行動するか?」という点は慎重に考えたいところです。
殺人や放火をした犯人が、「恨み」という動機を持っていたとしても、
「恨み」をもっていた人が、皆、殺人や放火をするわけではありません。(そりゃそうだ)

犯罪を犯したことを前提に、動機を考えることは自由ですけれど、
動機があることを前提に、だからあなたは犯罪を犯しただろう、とはならないはずです。

今回の裁判員は、
舌切りすずめは、おばあさんに恨みを持っていたのだから殺人の動機があったのでないかと考える一方、
おばあさんと一緒に住んでいるおじいさんには怪我をさせたくないはずだから、毒蛇をつづらに入れる動機はないのではないかと悩みます。

でも、動機が分かったところで、「だからやったでしょ」という結論には結びつかないはず。

そうすると、一体、何で判断するのか。

それは、「動かない事実(客観的事実)」と「動かない証拠(客観的証拠)」です。
今回で言えば、おばあさんの傷跡と、つづらに入っていた紙の帯。
これらの事実と証拠が何を物語るのかを判断しなければなりません。

さて、舌切りすずめの運命やいかに?
http://www.nhk.or.jp/sougou/houtei/

…あれ、おばあさんが雀の舌を切ったことは法廷で裁かれないのかな?(^^)

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